中国共産党が「民族団結進歩促進法」(以下「民族団結法」)を7月1日に施行するのに合わせ、アメリカの超党派の議員14人は連名でマルコ・ルビオ国務長官宛てに書簡を送り、同法を公に非難するよう求めた。
書簡では、この法律について、単なる「強制的同化」の手段にとどまらず、海外にも影響が及ぶ域外適用の性格を持つと指摘している。その上で、中国共産党(中共)の越境的な弾圧を拡大するための法的枠組みになり得ると懸念を示した。
民主党のジム・マクガバン議員、ロ・カンナ議員、共和党のクリス・スミス議員らが主導したこの書簡では、「民族団結法」が掲げる「中華民族共同体意識の強化」という目的について、実際にはチベット人やウイグル人、南モンゴル人などの少数民族に対する同化政策を制度化するものだと指摘している。
また、「民族間の真の平等を促進するものではなく、非漢民族コミュニティに対する同化を体系的に進めるものだ」としている。さらに、この法律は「民族団結」という概念を、国家が主導して実現する行政上の目標へと位置づけ直すものだ。
その上で、言語や宗教、文化などの面で、少数民族に対して漢民族を中心とした単一的なアイデンティティへの適応を求める内容だと分析している 。
書簡では、学校や教科書、博物館、メディア、家庭、行政機関など、幅広い分野を通じて思想的な統一を進める仕組みが組み込まれているとも指摘する。
域外適用と越境弾圧の懸念
一方で、この法律の影響は中国国内にとどまらない可能性があるとして、いわゆる「ロングアーム管轄」と呼ばれる域外適用についても懸念を示した。
書簡では、第10条と第63条を挙げ、中共の民族政策を批判する「外部勢力」や個人に対して責任を問う根拠となると指摘している。
そのうえでこの法律は、中共当局に海外の人権活動家や関係者を対象とする際の法的根拠として用いられるおそれがあるとしている。
また、「中国による越境的な圧力の一形態とみなすべきだ」とし、海外のコミュニティや市民社会団体、立法関係者にとっても影響が及ぶと指摘している。
これについて、シドニー工科大学の准教授、馮崇義氏は、第63条について定義が曖昧で幅広く解釈され得る条文だとしたうえで、適用範囲は中国国内に限らないとの見方を示した。
馮氏は「海外にいる限り拘束されない場合もあるが、中国に入国した場合、過去の発言などを理由に拘束の可能性がある」と述べた。また、中国でビジネスや投資を行う場合、資産に影響が及ぶと言及した。
さらに、台湾の淡江大学の呉瑟致教授は、中共がいわゆる「法律戦」を通じて、自らの立場を国際社会に広げようとしていると指摘した。特に台湾のアイデンティティをめぐる問題が対象になっているとの見方を示している。
呉氏は、中国人と台湾人の違いに言及したり、両岸関係を対等なものと位置づけたり、「中華民族共同体」という概念を受け入れないとした場合、「民族団結を損なう行為」とみなされると分析している。
アメリカの対抗措置と国際連携
こうした中、議員らはアメリカ国務省に対し、具体的な対応を求めている。
書簡では、同法を公に非難することや、国連人権理事会などの場で同盟国と連携すること、少数民族の言語や文化、宗教の保護を進めることなどを挙げている。
また、海外コミュニティの保護を強化し、関係する当局者への制裁を検討することや、「ウイグル強制労働防止法」の執行強化と、同様の取り組みを同盟国にも促すことなど、5つの項目を提示している。
この書簡には14人の議員が署名しており、超党派での対応を求める動きとなっている。
書簡の中で議員らは、アメリカはこれまで抑圧された民族の文化的アイデンティティの保護を支持してきたとしたうえで、この原則を対中政策の中核に据えるよう求めている。
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