匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)による凶悪事件が相次ぐ中、警察庁は8月6日、事件の指示役が使用するスマートフォンを遠隔で分析し、通信内容を把握する新たな捜査手法の導入に向け、有識者検討会を設置すると発表した。
犯行計画を事前に把握し、標的となる住民の保護や事件の未然防止につなげることが狙いで、関連法の整備も視野に制度設計を進める。
検討会の初会合は今月10日に開かれ、通信の秘密や不正アクセス禁止法との整合性、制度の法的・技術的課題について議論する。早ければ今秋にも提言を取りまとめる見通しだ。
トクリュウは「シグナル」や「テレグラム」など秘匿性の高い通信アプリを利用し、メッセージを自動的に消去できる機能などを悪用している。このため、実行役を摘発しても指示役の特定や犯行計画の解明が難しく、次の犯罪を未然に防ぐことが困難な状況が続いている。
警察庁が想定する新たな手法では、捜査の過程で判明した指示役のスマートフォンなどを遠隔で分析し、通信アプリ上のやり取りを把握することで、犯行計画を事前に察知し、標的となる被害者の保護や事件の阻止につなげることを目指す。
一方で、この手法は憲法が保障する「通信の秘密」に関わるほか、不正アクセス禁止法との関係も課題となる。
海外でも進む暗号化犯罪対策
こうした「暗号化通信を利用した犯罪組織」への対応は、日本だけの課題ではない。海外でも、犯罪グループが秘匿性の高い通信サービスを利用し、麻薬密売、武器取引、組織犯罪などを指揮する事例が相次いでおり、各国の捜査機関は通信解析を巡る法制度の見直しを進めている。
ヨーロッパでは、犯罪組織が利用していた暗号化通信サービス「エンクロチャット(EncroChat)」や「スカイECC(Sky ECC)」を巡り、捜査当局が通信基盤への捜査介入などを通じてデータを取得し、大規模な摘発につなげた例がある。
特に2020年にヨーロッパ各国の警察が実施したエンクロチャット捜査では、犯罪組織内部の通信を把握することで、麻薬取引や武器取引に関与した多数の容疑者の摘発につながったとされる。
イギリスでは重大犯罪を対象に通信傍受や通信情報の取得を認める法制度が整備されているほか、アメリカでも裁判所の令状に基づく電子機器の解析などが行われている。ただ、捜査権限の拡大と個人の権利保護のバランスは、各国共通の課題となっている。
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