【独占】 FBI長官 米国人を狙う詐欺拠点を「壊滅させる」と表明

2026/08/14
更新: 2026/08/14

詐欺の被害に遭っている可能性があると感じた米国人に対し、パテルFBI長官は、「早い段階から、何度でもFBIに連絡してほしい」と呼びかけた。

【ワシントン発】東南アジアのジャングル奥深く、高い壁と有刺鉄線に囲まれた施設で、詐欺グループが米国人から数十億ドルもの金をだまし取っている。

彼らは綿密に作られた手順書に従って行動する。多くの場合、すぐに金を要求するのではなく、数日から数週間をかけて標的との感情的な信頼関係を築き、その後で詐欺を仕掛ける。

こうした「詐欺工場」は大きな成果を上げながら拡大を続けており、米国にも深刻な被害をもたらしている。

2025年だけでも、米国人からFBIのインターネット犯罪苦情センター(IC3)に、暗号資産を利用した投資詐欺が7万2千件報告され、被害総額は75億ドル(約1兆円超)を上回った。

米国は現在、これに対して二つの作戦を柱とする反撃に乗り出している。

一つは、世界各地に存在する犯罪インフラを解体する「オペレーション・ブラックアウト(Operation Blackout)」。

もう一つは、被害者を早期に特定し、被害の拡大を未然に食い止める「オペレーション・レベルアップ(Operation Level Up)」だ。

FBIのカシュ・パテル長官が『大紀元(The Epoch Times)』の取材で明らかにした。

過去14カ月間で、FBIは犯罪に関連する資金152億ドルを押収し、数百人を逮捕、9カ所の詐欺拠点を摘発した。

さらに、9900人を超える被害者に警告を行ったが、そのうち77%は、自分が詐欺の標的になっていることに気づいていなかった。

捜査当局はまた、詐欺グループと外部をつなぐ8千台の通信端末を停止した。

パテル長官は、これによって詐欺グループから「活動に必要な酸素そのものを奪った」と表現した。

「実際、全米各地の人々からFBIに、『私たちの老後の蓄えを守ってくれた』『子どもの大学進学のためのお金を守ってくれた』というメッセージが届きました。中には、このような犯罪の被害者になったことを非常に恥ずかしく感じ、自ら命を絶つことまで考えていた人もいました」とパテル氏は語った。

パテル長官によると、ここでの目標は、「詐欺拠点がどこにあろうと、徹底的に壊滅させること」だ。

「夏の終わりまでには、さらに大きな成果が出ると思います」とパテル氏は語った。

 

数十億ドル規模の「不正利益」

詐欺拠点の背後には、2000年代にカジノやオンラインギャンブルで利益を上げていた中国系犯罪組織が存在する。中国当局が規制を強化すると、これらの組織は規制の緩い東南アジアの国境地帯、特にカンボジア、ラオス、ミャンマーへ活動拠点を移し、腐敗した当局者や軍の一派と協力関係を築いた。

パンデミックによって人の移動が制限され、ギャンブルへの取り締まりが強化されると、犯罪ネットワークは詐欺へと活動の軸足を移した。こうした詐欺拠点は、人身売買によって成り立っている。犯罪組織はTelegramなどのメッセージアプリで、カスタマーサービスやテレマーケティング、カジノ代理店などの高収入の求人を掲載し、魅力的な給与や渡航費、食事の提供をうたって人々を誘い込む。しかし、そのすべてが偽りの約束だ。

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スクリーンショットには、詐欺拠点で働く人員を募集するTelegram上の求人メッセージが写っている。カンボジアやタイの詐欺拠点を運営する犯罪組織は、しばしば高収入の仕事を持ちかけ、事情を知らない人々を誘い込んでいる。 写真:米司法省(DOJ) 

こうした求人広告に応募した人々は、犯罪組織の支配下に置かれ、長時間労働を強いられる。彼らは警察官や恋愛相手、投資家などになりすまし、標的をだまして金を送らせるよう強要される。要求された成果を上げられない者には、厳しい罰が待っている。

裁判資料によると、米国からアジア最大級の国際的なサイバー詐欺ネットワークを運営していたとして告発された中国出身の「詐欺王」陳志(チェン・ジー)は、かつて詐欺拠点で「問題を起こした」労働者を仲間が殴ることを認めていたという。陳志は部下に対し、労働者を「殴り殺さないように」指示していたとされ、暴力の様子を記録した画像も保管していた。裁判資料には、顔を血まみれにした男性の写真や、胸や腕全体に暗赤色の長い傷痕が残った男性の写真があったと記されている。

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裁判資料に掲載された写真には、詐欺拠点で働く人々に加えられた暴力の痕跡が写っている。写真:米司法省(DOJ) 

陳志は政府当局者への賄賂を記録した帳簿を保管しており、その中には外国政府の高官1人に贈った数百万ドル相当の高級腕時計も含まれていた。米検察当局によると、2020年、この高官は陳志のためにパスポートを取得し、それによって陳志は2023年に米国へ渡航できるようになった。

陳志とその関係者は、ブルックリンの資金洗浄ネットワークを通じて、米国人250人から1800万ドル以上をだまし取ったとされる。彼らは豪華な生活を送っていた。検察当局によると、ヨットやプライベートジェット、別荘、希少な美術品などに大金を費やし、その中にはニューヨークの競売会社で購入したピカソの絵画も含まれていた。

しかし、その後、犯罪ネットワークの崩壊が始まった。2025年末、米当局は陳志に関連する暗号資産ウォレットから150億ドル相当のビットコインを押収したと発表した。これは米国史上最大規模の押収となった。

疑惑を否定している陳志のプリンス・グループ(Prince Group)に関係する180の個人・団体が、現在、米国の制裁対象となっている。

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2025年10月15日、カンボジア・プノンペンにあるプリンス銀行の支店前を通過する人々。同行は、中国出身の「詐欺王」陳志(チェン・ジー)が創設した多国籍複合企業プリンス・ホールディング・グループの傘下にある。米司法省は同グループについて、「アジア最大級の国際犯罪組織の一つ」の隠れみのとして機能していたとしている。写真:Tang Chhin Sothy/AFP 

パテル長官によると、こうした措置は犯罪組織への資金の流れを断つことを狙ったものだ。詐欺ネットワークを世界の金融システムから切り離すことで、米国は「彼らが不正に得た利益を移動させる能力を大幅に弱体化できる」と述べた。 

「究極の勝利」

ここ数年、米国人は詐欺グループの主要な標的となっており、犯罪組織は米国人から金をだまし取るための手口を発展させてきた。

裁判資料によると、Telegram上の大規模な求人チャンネルでは、カンボジアで働く人員について、「米国人のアクセント」で英語を話せることや、米国では昼間にあたる夜勤ができることを条件とする募集が掲載されていた。FBIが摘発した複数の詐欺拠点でも、英語での詐欺を前提とした台本や人員配置が用意され、一部では従業員に米国の銀行員になりすますよう指示していた。

米検察当局によると、2024年12月には、ある詐欺拠点の従業員が米国人1人から約300万ドルをだまし取った。現在、米連邦当局から訴追されているその従業員のチームリーダーは、報酬としてメルセデス・マイバッハを受け取ったとされる。

その後、犯罪組織は捜査当局の追跡を逃れるため、拠点を何度も移転した。今年1月に逮捕される数週間前、このチームリーダーは、米国人を狙った詐欺を行うために新設された拠点で働かせる人員を、さらに買い入れることについて話し合っていたという。

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地図は、ミャンマー(ビルマ)国内にある詐欺拠点の所在地を示している。中国系犯罪組織は、**民主カレン慈善軍(DKBA)**など現地の武装勢力と協力して詐欺拠点を建設・保護し、組織犯罪を支えるとともに、現地民兵組織の活動資金にもつながっている。資料:米財務省

FBIの作戦によって、人身売買の被害に遭い、奴隷のように働かされていた数千人が解放された。パテル長官は「これは世界にとっての勝利だ」と語った。

犯罪者は、複数の口座や資産、通貨、決済手段を一つにまとめて管理する「統合ウォレット(consolidated wallet)」を利用している。そこでは数百から数千件もの取引が行われることが多く、資金の出所を追跡する作業を困難にしている。しかしパテル長官によると、FBIも対抗策を強化している。

FBIのITインフラを再構築したことで、全米の捜査官が標準化された捜査ツールを利用できるようになったという。さらに、AI(人工知能)や顔認識技術の導入によって情報共有が進み、捜査能力も拡大している。民間企業との連携により、不審な兆候を事前に検知できるようになったほか、新たな手順を導入することで、暗号資産を迅速に押収できる体制も整えている。

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2026年8月4日、ワシントンのFBI本部。写真:Madalina Kilroy/The Epoch Times 

詐欺の可能性を疑っている米国人に対し、パテル長官は「早い段階から、何度でもわれわれに連絡してほしい」と呼びかけている。「こうした事件は、一件だけで完結するものではありません。すべてが海外のどこかにある犯罪ネットワークにつながっています」と述べ、新たな情報の一つ一つがFBIにとって手がかりとなり、さらなる詐欺拠点の摘発や資産の押収につながる可能性があると説明した。

パテル長官によると、情報を提供することで、米国人は新たな被害者を救うことができるだけでなく、自分自身もだまし取られた金を取り戻せる可能性が高まるという。「それこそが究極の勝利です」と語った。

Eva Fu
エポックタイムズのライター。ニューヨークを拠点に、米国政治、米中関係、信教の自由、人権問題について執筆を行う。