「最悪、配達員になれば食べていける」
中国では長く、そんな考えが失業者の最後の頼みの綱となってきた。しかし今、その配達の仕事さえ奪い合いになっている。
報酬は1件わずか1元台(約20〜40円台)。かつての受け皿が限界を迎えつつある実態が、本紙の取材で明らかになった。
10年以上配達を続ける男性は、かつての稼ぎを振り返る。
「昔は1日5時間働けば300元(約7000円)以上稼げた。今は8時間走っても150元(約3500円)程度だ」
働く時間は増えたのに、収入は半分以下。昼食時ですら注文が来ず、店の前でスマートフォンを眺めながら待つ配達員も多いという。
別の配達員は「自分がやらなくても、代わりはいくらでもいる。ついに1元時代が来た」と嘆いた。
実は、こうした悲鳴は以前から上がっていた。
今年6月、中国のSNSでは、路上にひざまずいて泣く男性配達員の動画が広まった。
「バッテリーを買い替えるお金もない。家賃も払えない。お願いだから、もうこれ以上この業界に入ってこないでくれ」
仕事を求める人に「来ないでくれ」と頼まなければ、自分が生きていけない。そんなところまで追い詰められていた。
上海などでは、配達員が多すぎて、仕事を始めるためのアプリにすら「順番待ち」と表示される事態も起きている。
それでも、新たな働き手が流れ込む。

子どもを背負って走る母親、臨月まで働く妊婦、そして大学卒業者や修士号取得者までいる。
今回、本紙が取材した修士卒の男性もその一人だ。大企業に勤めていたが、残業代が出ず、仕事の負担も重かったため退職。生活費を稼ぐために配達を始めた。
「配達では日々の食費を賄うのが精いっぱい。より豊かな生活など望めない」
かつての会社員時代ですら、結婚に必要とされる住宅や車を買う余裕はなかったという。
さらに、配達員たちの将来には別の不安も迫る。
中国の大手企業は配送ロボットや無人配送車の導入を進めており、将来的に人間の配達員が不要になるとの見通しまで示している。
一方、中国当局は、配達員らを対象に党組織を通じた管理を強め、一部地域では街の異変を写真や位置情報で報告させる仕組みも導入している。
働く場所は減り、報酬は下がり、それでも管理は強まる。
配達員たちは今日も街を走る。家賃を払い、子どもに食べさせ、明日も生きていくために。
かつては、仕事を失っても配達員になれば何とかなると言われた中国。今は、その「何とかなる」という希望さえ、失われつつある。

ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。