1 従来説を覆す衝撃の報道
11月1日の産経新聞は、陛下の靖国神社ご参拝が1975年以来、途絶えている件について衝撃的な事実を指摘した。昭和帝が最後に靖国神社に御親拝なさったのは同年11月21日である。その前々日19日に宮内庁は「21日御親拝」の予定を公表したところ、翌20日に国会でこの件について野党から質問が集中し一気に政治問題化したのだ。
陛下は予定通り御親拝なさったが、それ以後、御親拝を控えられるようになったのは、ここで靖国御親拝が政治問題化したためだとの趣旨である。
今まで、この件についてマスメディアの主流は、「1978年に東条英機らいわゆるA級戦犯が同神社に合祀されたため陛下は参拝しなくなった」という趣旨を主張してきた。今般の産経新聞の報道は、この従来説を覆す重大な事実を指摘しているのである。
2 従来説に固執するNHK
10月11日放送のNHKスペシャル「スクープ『靖国神社』初開示の秘録と音声が明かす戦犯合祀の内幕 A級戦犯めぐり何が? 空白の『歴史』に迫る」は、題名だけ見ると新説を主張しているかに見えるが、その実、従来説をなぞっているに過ぎない。
従来説の根拠となっているのは富田メモである。これは1988年に当時、宮内庁幹部であった富田朝彦が、靖国問題を巡る、ある人物の発言をメモして手帳に貼り付けていたもので、その一部が2006年に日本経済新聞により報道された。
その報道では、その人物は昭和帝とされ、A級戦犯が合祀されたから参拝しなくなったとメモの内容を解釈している。しかし、記事を読む限り発言者が昭和帝であるかは疑問の余地があり、また公開されているのは、メモの一部であって、全部ではなく、富田の手帳や日記も公開されておらず、A級戦犯が合祀されたから参拝しなくなったと断定するには無理がある。
3 昭和帝の真意
第2次大戦における日本の戦争犯罪を戦勝国が一方的に裁いた極東国際軍事裁判いわゆる東京裁判は1946年5月に東京市ヶ谷で開廷、1948年11月に東条英機元首相ら7人のA級戦犯に死刑の判決が下り、12月に死刑が執行された。
昭和帝は、死刑判決の下った日には泣きはらし、死刑執行の日には退位の意向を表明された。これらについては、今年4月6日にNHKが放送した「映像の世紀バタフライエフェクト」でも触れられている事実である。
退位は侍従長の意見により思いとどまられたが、昭和帝が処刑されたA級戦犯に極めて同情的であったことは明らかであり、A級戦犯が合祀されたから、御親拝をやめたというのは論理的にいってあり得ない。
4 靖国神社の叫び
11月1日の産経新聞の報道は、靖国神社の大塚海夫宮司にインタビューしたものだが、大塚宮司は10月のNHKスペシャルでもインタビューに答えている。靖国御親拝が途絶えたのは政治問題化したためとの指摘は大塚宮司によるものだが、NHKスペシャルでは触れられていない。
産経の記者は、「10月11日の『NHKスペシャル』に出演し、次いで本紙の取材に応じました。なぜですか」と問い、また「靖国神社の本来の姿が、過度に政治化されてきたため伝わりにくくなっているのではないでしょうか」と問いかけたのに対して、宮司は次のように答えている。
「神社界には『言挙げせず』という言葉があります。神道には教義がないのでお説教もしないし自己主張もしない。そうすると嘘も百編言えば真実にされる。地に足がついた議論のためには基本的な事実関係を皆さまにお知らせしければならないし、それができるのは靖国神社しかなく、私の義務だと思っています」

大塚氏は海上自衛隊の出身で要職を歴任してきたが、2024年4月に靖国神社の宮司に就任して以後、メディア出演を控えてきた。
本年、意を決してNHKに出演したが意を尽くせず、改めて産経の取材に応じて真相を伝えたのであろう。

ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。