米中ロ会談は中共の野望を後押しする

2026/11/02
更新: 2026/11/02

プーチン氏が、自らと習近平、トランプ氏による三者首脳会談の開催を提案した。中国共産党政権はこの三者首脳会談の実現に異論を唱えておらず、11月中旬に中国・深圳で開催するとの案も取り沙汰されている。

米露中、三か国の首脳が一堂に会する会談は、史上かつて例がない。それには相応の理由がある。この構想には、民主主義にとって看過しがたい落とし穴が、少なくとも十は存在すると考える。

権威主義国家を増長させる五つの危うさ

第一に、中国での開催は、そのまま中共政権を利することになる。中国共産党(中共)は、プーチン氏によるウクライナ侵攻や、イランの対米戦争を陰で最も強力に支えてきた当事者でありながら、あたかも平和の仲介者、要石、調停役であるかのように振る舞うことができる。開催国となることで、北京は議題設定の主導権すら手にするのである。

第二に、プーチン氏の勢いを増すことになる。ウクライナ抜きの首脳会談は、交渉においてロシア側に一方的な優位をもたらし、ロシアはこれを足掛かりに、すでに占領した以上のウクライナ領土を要求しかねない。

第三に、習とプーチン氏を、選挙によって選ばれた米国大統領と対等であるかのように扱うことは、米国自らが道義的優位を手放すに等しい。プーチン氏は今なおウクライナの民間人を攻撃し続け、習は台湾やフィリピンに対して同様の挙に出る(相手に影響を及ぼすようなきわだった行為をする)と公然と威嚇している。

第四に、台湾と南シナ海の奪取を狙う習の野望を後押ししかねない。米中政府がプーチン氏によるウクライナ奪取を黙認するならば、習もまた、国際社会からの大きな反発を受けることなくこれらの地域を手中に収める権利を、当然のごとく要求するだろう。それは習にとって格好の見返りとなり、中共軍が進める漸進主義戦略を、さらに一歩前進させることになる。

現に10月20日には、中共海軍指揮下の艦船が南シナ海において、米国および台湾の艦船との間で二件の事案を引き起こしている。中共の発するメッセージは終始一貫している。米軍とその同盟・パートナー諸国の軍は、アジア全域から撤退せよ、というものだ。

第五に、前項とも関わるが、プーチン氏は11月の交渉の一環として、北京に対し「勢力圏」を差し出す公算が大きい。その対象はおそらくアジアとなり、同地域全体からの米軍撤退を伴うことになろう。

米軍がひとたび撤退すれば、その空白を埋めるのは中共軍である。そうなれば中共は、アジアの資源、産業、人材を足掛かりに、中東やロシア極東、さらにはオーストラリア近海の南洋地域にまで、影響力をいっそう拡大させていくだろう。

軍事力学と同盟の結束を揺るがす五つの要因

第六に、非核化をめぐる協議は、ロシア、そしてそれ以上に中共の利益に資する。言論の自由も報道の自由も持たない独裁国家は、民主主義国家に比べて本質的に不透明である。その不透明さゆえに、ロシアと中共には、軍備制限に合意したかのように装う余地がより大きく残される。中ロは自由の欠如を逆手に取り、自国民にも米国にも実態を隠したまま、核開発を継続し得るのである。

第七に、米国もロシアも、人口と産業基盤のいずれにおいて中共に遠く及ばない。中共海軍の艦艇保有数は既に米海軍を凌駕し、その他の通常戦力についても、ロシアや米国の空軍・陸軍を上回る勢いにある。米国の核抑止力なくしては、アジアにおいて拡張主義的、そして最終的には覇権主義的な野望を追求する中共の通常戦力を押しとどめる手立ては、ほとんど残されていないだろう。

第八に、この首脳会談は、イランを支援する二人の独裁者に正統性の箔を付けることになる。イランは現在、米国と断続的な戦争状態にあり、この戦闘で20人を超える米兵の命を奪い、数百名を負傷させてきた。中ロはいずれもイランを支援しており、イランは両国から得た情報を用いて米国人を標的にしてきたとされる。

こうした攻撃の直後に習、プーチンと会談することは、米国の弱腰を露呈させるのみならず、自由の防衛のために中東で命を落とした将兵たちの記憶を冒瀆することにもなりかねない。

第九に、ウクライナ戦争の終結を真に目指すのであれば、米国はまず民主主義の同盟諸国と共に、結束した、それゆえに一層強固な交渉基盤を築くべきである。民主主義国家は、中ロとのいかなる協議に臨む際も、一枚岩となって臨まねばならない。少なくとも日本、欧州、韓国、カナダ、オーストラリアといった米国の同盟国は、交渉の席に着くべきだろう。

米中間で結ばれるいかなる大型合意も、米国の最も緊密な同盟国の利害を十分に考慮したものでなければならない。さもなくば、中国につけ込まれ、同盟の結束に楔を打ち込まれることになりかねない。

第十に、これと関連して、民主主義の同盟諸国を十分に関与させぬまま、米国が習、プーチンとの首脳会談に臨めば、米国が同盟諸国に対して負う約束の信頼性そのものが損なわれる。

米国は、とりわけ独裁者たちの本拠地である中国において、彼らに数で劣後することを、断じて容認すべきではない。中国の地でこのような首脳会談の開催を中共に許せば、選挙による洗礼を一度も受けたことのない権威主義者たちに、さらなる力を与えるだけである。

この点が最も顕著に当てはまるのは中共であり、中共はこの首脳会談を、米ロ双方に対する自らの優位を固める足掛かりとして利用するに違いない。

予見し得る将来において、中共は依然として世界最強の、そして民主主義にとって最大の脅威であり続けるだろう。中共を利するような取引を結ぶのではなく、米国が目指すべき真の目標は、中国の民主化をおいて他にない。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
時事評論家、出版社社長。イェール大学で政治学修士号(2001年)を取得し、ハーバード大学で行政学の博士号(2008年)を取得。現在はジャーナル「Journal of Political Risk」を出版するCorr Analytics Inc.で社長を務める傍ら、北米、ヨーロッパ、アジアで広範な調査活動も行う 。主な著書に『The Concentration of Power: Institutionalization, Hierarchy, and Hegemony』(2021年)や『Great Powers, Grand Strategies: the New Game in the South China Sea』(2018年)など。