中国食糧生産に隠された課題(2)

2010/11/28
更新: 2010/11/28

【大紀元日本11月28日】

耕地面積が減少 質・量ともに下降

工業化や都市化に伴い、中国の耕地面積は大幅に減少した。2006年3月、「国民経済及び社会発展の第11次5カ年計画」で、「18億畝(ムー)の耕地を保つことは今後5年間における法律效力の持つ約束指標であり、下回ってはいけないレッドラインである」と明確に決められている。しかし、中国国土資源部の調查によれば、1997年から2009年の間に中国耕地面積は1.23億畝純減し、2009年の中国食糧播種面積は16.35億畝しかなく、18億畝のレッドラインを大きく下回った。

一方、耕地面積と同樣に重要な課題は耕地の質の問題である。北京大学都市環境学部の傅澤強氏らが2009年9月に発表した「中国食糧安全と耕地資源変化の相関分析」という論文では、「全国土地利用詳查資料によれば,わが国の耕地総面積は1.3億ヘクタール、国土面積の14.2%を占め、人口1人あたりの耕地は0.11ヘクタールしかなく、世界平均水準の半分にも及ばない。また、現有耕地は全体的に質が悪く、比較的いい所と一般的な所は3分の2、各種の問題点を抱える土地は3分の1、塩分土壌・赤土丘陵地・土壌流失地・風砂地・干ばつ地・窪地などはこれに当たる。耕地の肥沃度は下降し続け、全国の耕地の有機質含有量平均はすでに1%に下がっており,欧米の2.5~4.0%という水準から見ると明らかに低い」と述べている。

単位面積の食糧収量によって耕地を高収量田、中収量田と低収量田に区分すると、その食糧収量比は3.68:2.61:1となり、すなわち高収量田や中収量田が1ヘクタール減少するごとに、同数量の食糧を維持するためには、3.68か2.61ヘクタールの低収量田で補う必要がある。

都市部や村の近辺では肥えている高収量田が多いが、最も先に占用されやすい。中国南東部の沿海地区の耕地の食糧生産能力は高く、食糧生産の中心地となるはずだが、まさにこれらの地区でもっとも耕地の流失が多発しており、中国の食糧生産の中心もそれによって北に向かって遷移している。

アメリカやカナダでは、耕地の質を保つために休耕を強制実行させており、休耕期間中の農場は生産時と同程度の手当を受けることができる。中国では耕地の利用はすでに極限に達しており、退化現象も顕著なため、耕地が徐々に減少していることを意味する。

統計によれば、中国の環境汚染による食糧損失は年間1千万トンで、食糧総生産の3%、毎年の総輸入量に匹敵する。中国農業科学院の土壌研究は、耕地面積の5分の1は深刻な汚染を受けており、中低収量耕地が耕地面積の65%、畝あたり収量千キロ以上の耕地はわずか6.09%しか占めていないことを明らかにしている。

水資源の欠乏が食糧生産のネック

中国の水資源量は2.8兆立方メートルで、世界でも高レベルだが、1人当たりにするとその量は2300立方メートルにすぎない。気候専門家は、水資源の欠乏が本世紀における中国農業への最大の脅威であると警告している。2005年の農地干ばつ面積は3882ヘクタール、2007年には4899ヘクタールに増え、2010年には50年に1度と言われる全国規模の干ばつにも襲われた。今年の水利部の発表では、中国では毎年農業用水は300億立方メートル以上不足しており、多くの農業水利施設は老朽化や修繕不足の問題を抱え、現在434カ所ある大型水利施設の完備率は半分以下だという。

今年9月24日、国連食糧農業機関がローマで特別会議を開き、食糧安全問題を討議した。会議で発表された関連研究では、中国の農業用水供給量の急激な減少は食糧減産を引き起こし、世界の食糧安全にとって脅威となる、と指摘した。ジュリアン・クリブ氏の著書『来る飢饉』は、今後50年間人類が直面する最も切実な問題は、気候変化や金融危機ではなく、食糧安全だと警告した。ウォールストリートジャーナルの「田んぼは次なる金鉱となる」という報道のなかで、2020年には世界で資源戦争が勃発すると予測している。CNNはクリブ氏の話を引用し、中国本土での食糧生産が限界に達したため、北京はすでにアフリカで耕地を賃借し食糧生産を繰り広げているという。

(続く)

(編集・張凛音)
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