一帯一路関係国、中国の融資が重し コロナ禍でさらに財政苦

2020/05/12
更新: 2020/05/12

中共ウイルスの世界的な大流行による経済危機は、発展途上国の債務負担を懸念する声が高まっている。米国ワシントン拠点のシンクタンク「グローバル開発センター」は、中国の商業融資が発展途上国の債務リスクをさらに高めていると指摘した。

同センターの最新調査によると、中国の開発途上国向け商業融資は世界銀行の融資よりも返済期間や猶予期間が短いうえ、金利は高いことがわかった。

同センターのシニアフェローで報告書の共著者でもあるスコット・モリス氏は、「新型コロナウイルス(中共ウイルス)の流行が世界経済を直撃するなか、開発途上国の債務の持続可能性はさらに大きな懸念材料となっている」と指摘した。

調査によると、中国は、世界最大の二国間融資国であるため、中国の債権に対する決定は発展途上国の経済に大きな影響を与えるという。

中国は長年、習近平国家主席の「一帯一路」構想をはじめ、融資や援助を通じて世界に影響力を拡大してきた。いっぽう、発展途上国での一部のプロジェクトでは現地政治家を買収し、資源を獲得するために深刻な環境問題を引き起こしたとして批判の声が強まっている。

中国は、発展途上国に対して、しばしば低金利あるいは無利息で融資を行うが、現地の石油やガス、土地など、主権を揺るがしかねない資源を担保としている場合もある。専門家は、こうした中国政府の大規模な対外援助や融資を「詐欺」と批判している。

ウイルス禍で債務超過国に負担大

米ウィリアム&メアリー大学の海外支援調査プログラム「エイド・データ(AidData)」調査担当ブラッド・パークス氏は、中国の援助を受け取った国々は近年、何度も弱い財政が逼迫されたと、米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に述べた。

中共ウイルス流行の前から、多くの発展途上国、低所得国はすでに負債を抱えており、デフォルト(債務不履行)に陥るリスクを抱えていた。中国共産党は対外的に、「一帯一路」は略奪的ではないと主張しているが、実際には多くのプロジェクトは債務負担を増加させている。

エイド・データの調査報告では、15年間157カ国に及ぶ、一帯一路プロジェクトを含む中国の2453件、そして世界銀行が融資した開発プロジェクト4859件を比較し、金利、借り入れ期間などを分析した。

その結果、中国の大半の融資条件は、世界銀行の融資よりも厳しく、最貧国には特に厳しい条件を付けていたことがわかった。途上国の債務の脆弱性は、多くの場合、借入総額に焦点が当てられているが、貸出条件の変化も同様に重視する必要がある。

エイド・データ代表のパークス氏によると、中国は巨額の外貨準備高を抱え、売り手の中国中央銀行が利益の3%を得るとみている。近年、中国は政策銀行や都市銀行に対し、海外投資でも国内同様、高い収益を求めるよう促している。これもまた、融資金利3%を超える多数の海外契約の増加理由となっていると分析する。

パークス氏は「実際、中国ローンの平均金利は4%以上であることが今回の調査で分かった」とVOAに語った。

報告は、中国が発展途上国に対して低金利融資やローンの減額、また無利息ローンを提供する場合もあると付け加えている。しかし、これらは政治的な影響力と密接に関係しており、中国側に利益が傾く契約内容があると指摘した。

中共ウイルスの世界的流行は、発展途上国を危険にさらしている。このため、国際通貨基金(IMF)と世界銀行は大規模な緊急援助を行った。さらに、両組織はG20の債権国に対し、低所得国への貸付金の利息徴収をやめるよう求め、4月15日にはG20加盟国が年内に貸付金の利息徴収を停止することで合意した。

しかし、中国も署名しているが、その公約には「譲歩的融資」は含まれておらず、中国が一帯一路を通じて行っている低所得国への融資は除外される。前出のシンクタンク・グローバル開発センターは、世界最大の債権国の一つである中国は、これからも低所得国に貸付金の利子を請求し続ける可能性があると懸念を示している。

期待の高まる日米豪の一帯一路対抗策

パークス氏は、2019年秋に、米国と日本、オーストラリアが共同で立ち上げた、一帯一路対抗策「ブルー・ドット・ネットワーク」に注目する。これは、主要なインフラプロジェクトに国際的な認証を提供するプログラムがあり、中国の一帯一路への対抗策だとした。

パークス氏は、このブルー・ドット・ネットワークの次の段階として、米国がインフラ分野への投資を拡大し、借入国は最善の融資策の選択ができるよう、政策や制度を強化することを促すことだと述べた。

(翻訳編集・佐渡道世)

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