欧州企業買収の背後に「中国政府の介入」=WSJ

2020/10/05
更新: 2020/10/05

オランダのコンサルティング会社「DatennaBV」の新しい調査によると、過去10年間、欧州で相次いだ中国企業による買収ブームの背後にある「中国政府による深い関与」が明らかになった。ウォール・ストリート・ジャーナル紙が9月30日に報じた。

それによると、Datenna社の調査報告では「2010年以降、中国が欧州に投資した650件のうち約40%は、中国の国有企業または国有企業の持株会社が中・高度に関与していた。投資分野では一部の先進技術も含んでいる」と述べたという。

また、中国政府は、複雑な所有権と株式構造および欧州の子会社を通じて取引を行っていた。同調査はヨーロッパでは対米外国投資委員会CFIUS)のような強力な機関が欠如していると警鐘を鳴らした。

CFIUSは国家安全保障上の理由から外国の買収を阻止できる。

中国企業による買収により、欧州企業は望ましくない外国の影響力にさらされ、主要な技術革新の喪失および最先端産業が侵食されている。欧州当局者の中で、こういった懸念の声が高まっている。

欧州連合(EU)では欧州諸国への外国投資の審査制度を10月11日より施行する。中国はこの新制度の主要ターゲットと見なされ、EU当局者は同盟国に対し、中共ウイルス(新型コロナウイルス)の流行で経営不振に陥った企業が安く身売りしないよう圧力をかけている。

10年前の「ユーロ危機」の際に、中国は危機に乗じて企業を安く買い叩いた歴史があるとアナリストは指摘した。

中国の投資は「データのブラックホール」、欧州は警戒強化

現在、中国政府の支援企業はますます強まる国際的な監視に直面している。長年にわたり、欧州企業買収における北京の関与は、ほとんど審査の対象にならなかった。

EUの監視機関である欧州会計監査院(European Court of Auditors)は、9月に発表した報告書の中で、中国の直接投資に関する公式情報が「時期尚早で、断片的で、不完全である」と記された。

分析を担当した同院のアネミー・ターテルボーム(Annemie Turtelboom)氏は、「中国の投資は『データのブラックホール(a black hole for data)』だ」と指摘した。

昨年、EUが発表した外国直接投資に関する報告書によると、2010~17年の間に中国の国有企業による買収が57件あったという。また、Datenna社はこの期間中に、中国政府が深く関わった取引がほかにも160件あり、また中程度関与の取引も100件あったことを発見した。同社広報担当者は、EUは現在分析を更新中だと述べた。

ウォール・ストリート・ジャーナルは、「ドイツ、フランス、イギリスなど欧州諸国は最近、取引を阻止する力を持っている」と伝えた。

仏投資銀行ナティクシス(Natixis)の首席アジア太平洋エコノミストのAlicia Garcia Herrero氏は、「欧州の技術と他の先進国より緩い投資審査制度は、中国にとって魅力的だ」と指摘した。

Datenna社の最高経営責任者(CEO)であるヤープ・ファン・エッテン(Jaap van Etten)氏は、米国との貿易戦で中国企業がチップや他の最先端製品の入手がますます困難になっているという背景の下で、中国は必要な先端技術を対象とした小規模な買収に数多く関与していると指摘した。買収する際は何層にもわたって相互に接続された株主を使用し、その全ての株主たちは実際には中国当局とつながっているという。

2016年にドイツのロボットメーカー「クーカ(Kuka)」が中国の家電メーカー大手「ミデア(Midea・美的集団)」に買収され、クーカの貴重な技術やノウハウが中国に移転するのではないかと懸念された。

ミデアはクーカのCEOであるティル・ロイター(Till Reuter)氏を交代させるなど、買収からわずか2年でクーカの経営層に対する支配力を強化した。ミデアの内部関係者によると、同社は「その影響力をさらに強める意向だ」という。

ミデアは当初、クーカの理事会に2人派遣すると発表していたが、実際は、6人の理事のうちの4人が中国側のメンバーとなり、その戦略の不安定性により、結果的には多くの優秀な人材が失われた。

ミデアの買収ケースは、ドイツやEUに外国の買収に対する精査強化の必要性をますます認識させた。

(大紀元日本ウェブ編集部)

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