「小さな池の大きな魚」中国共産党、各国地方政府を懐柔 欧米シンクタンクが警鐘

2021/12/13
更新: 2021/12/13
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欧米の2つのシンクタンクがこのほど、相次ぎ報告書を発表し、中国共産党による各国の地方政府への浸透工作に警鐘を鳴らした。中国政府が、各国の地方政府を籠絡(ろうらく)することによって、国の対中政策の崩しを図っているという。米国営放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)が報じた。

米政権への働きかけを「中国の友人」に要望

米国の超党派シンクタンク「民主主義防衛財団(Foundation for Defense of Democracies)」の報告書によると、中国政府は米国の州・地方政府を戦略的ターゲットに絞っている。連邦政府が中国に対抗する法案を策定する際に、中国政府は米地方政府に圧力をかけ、法案を阻止するよう仕向けているという。

12月はじめに催された中国外交部と米各州・市・経済界の代表者のオンライン交流会で、中国の謝鋒・外交部副部長(次官)は米地方政府の当局者に向けて、「(連邦政府に)立ち上がって声をあげてください」と憚らずに促した。同氏は、対中追徴関税の撤廃、対中国企業の制限・制裁の撤廃、審議中の革新・競争法の廃案などに向けてバイデン政権に働きかけるよう、「中国の友人たち」に要望した。

近年、米中関係が急速に悪化した。ホワイトハウスから議会まで、中国問題でほぼ共通する立場にあるが、州や市のレベルになると、大きく異なっている。

中国の清华大学全球化研究中心(グローバル研究センター)などが19年6月に発表したレポートでは、全米50人の州知事のうち、中国に強硬姿勢を示したのはわずか6人、中国に友好的な態度を示したのは17人と述べられた。

民主主義防衛財団の上級研究員、報告書の著者の一人、ネイサン・ピカシック氏は、中国共産党は米地方政府を取り込むことによって、連邦政府に影響力を行使していると分析した。

今年初め、中国の習近平国家主席は、「米国の州・地域・企業を含め、我々と協力する意思のあるあらゆる国・地域・企業と積極的に協力する」と強調した。

姉妹都市の締結が増加傾向に

民主主義防衛財団の同報告書によると、中国政府は長年、米地方政府を懐柔するための戦略を施行してきた。具体的に、友好都市の締結、インターネットフォーラム、地方政府首長フォーラムなど、米中関係を促進するイベントやフォーラムを催すというやり方をとっている。報告書は、習近平国家主席は2015年のシアトル訪問について、米国における中国の影響力拡大を示す好例であると讃えたことを例に挙げた。

米中両国の外交関係が冷え込んでいる中、中国政府の公式統計によると、両国の「友好都市」の数は逆に増えており、友好省・州、友好都市はそれぞれ50組と231組に上った。

米政界において、近年連邦政府レベルでは、与野党ともに中国政府に厳しい態度で臨んでいる。一方、全米知事協会(NGA)は、中国をポジティブに評価している。

同協会はあるプレスリリースの中で、ケンタッキー州のマット・ベビン知事の次の言葉を引用した。「米国と中国は、一方が勝つと、他方も勝つ。 中国が強くなれば、アメリカにとっても良いことだ」。ウィン・ウインは中国共産党が相手国を説得するときに常用する言葉だ。

前出のピカシック氏はVOAの取材で、「有権者が選んだ知事たちが、中国政府のウィンウィン主張を唱え、米国の地で中国共産党路線を促している」と懸念を示した。

米シンクタンク、フーバー研究所のラリー・ダイアモンド上級研究員は、中国共産党の建国70周年記念式典に先立ち、建国記念日に当たる10月1日を「中国デー」とする決議案を可決した米ニューヨーク州の例を挙げた。 同氏はVOAの取材で、「中国政府にとって、これは対米プロパガンダの成果であり、今後に結びつく土台である」と指摘した。

同氏は、同決議案の文面から、英語を母国語としない人が書いたものだと推測し、「おそらく中国政府当局者または在米中国公館の関係者が起草したのではないか」と問題視した。

米外交誌「ザ・ディプロマット(The Diplomat)」の記事によると、在ニューヨーク中国総領事館の黄屏・総領事がニューヨーク州議会に招かれて同決議案の可決に立ち合った。決議案の共同提案者の議員は、「連邦政府レベルで何が起きようとも、中国との関係を維持するために我々が尽力すべき」と豪語した。

ジャーマン・マーシャル・ファンドの中国問題アナリスト、ブライス・バロス氏は、米連邦政府は、地方政府を操る中国の戦略に十分な警戒を払っていないと批評した。

中国影響力への「地方レベルの監視は疎か」

欧米の政治体制では、外交政策の決定権は中央政府にあるが、グローバル化の進化により、国内政治と外交政策を完全に切り離すのが難しくなり、各国政府の対中政策は往々にして地方政府の利益に波及する。米国では、州政府は対中政策の策定には参加できないが、連邦政府の決定に影響を与えることができる、中国との貿易・経済関係を独自に進むことも許されている。

民主主義防衛財団の同報告書は、ホワイトハウスと議会のほかに、州知事も大きな権限を持つと、深刻な結果を招きかねないと指摘した。

2017年、米トランプ政権はパリ協定から離脱したが、カリフォルニア州は中国政府とグリーンテクノロジーを拡大する協定を結んだ。当時のブラウン同州知事は北京に訪れ、中国の習近平国家主席と非公開会談を行い、「連邦政府の穴埋めができた」と誇示した。

米中州知事・省長フォーラム」は米中の貿易・通商・投資などの分野で、地方政府と企業が協力するための重要なプラットフォームであると言われている。

民主主義防衛財団は、過去10年間に起きた様々なトラブルから、日米間のこうしたローカルな取引がしばしば米国の繁栄と国家安全を損なっていると報告した。

報告書の著者、前出のピカシック氏は、中国は米連邦政府の国家安全保障上の審査を逃れて、州や市に直接投資することで米産業界に参入していると指摘し、「連邦政府には監視機関があるが、州や地方政府は雇用や投資を優先して、審査を受けずに取引を進めることが多い」と問題視した。

米フーバー研究所のダイ・ヤメン氏はVOAの取材で次のように分析した。「アメリカは連邦制で、多くの権限が州や地方政府に委譲されている。多くの州政府や地方政府は、中国との提携には前向きで、中国の影響力について寛容的な態度をとっている」

マイク・ポンペオ米前国務長官は2020年、中国勢が米国の地方に浸透し、地方政府の幹部を懐柔したり、地方政府の運営を干渉したりしていると警鐘を鳴らした。中国問題専門家は、米国はこの分野を監視・警告する有効なシステムを持っておらず、この問題は長い間ほとんど放置されていると懸念を示した。

「メディアの報道を含めて、中国の影響力に対する監視は、州や地方レベルでははるかに疎かなもの」と前出のヤメン氏は批判した。

欧州も「中央政府を飛び越えて」地方政府と関係作り

同じ懸念は欧州でも見られた。ドイツのシンクタンク「メルカトール中国研究所(MERICS)」は11月に発表した「小さな池の大きな魚:ヨーロッパにおける中国の地方外交(Big Fish in a Small Pond: China’s Subnational Diplomacy in Europe)」と題する報告書で、次のように述べた。

「中国の対欧州政策は『EUの機関や各国の中央政府を迂回して、地方政府レベルで着実に広まり、多数の地域や都市とパートナーシップを築いた』。これにより、中国の投資、研究開発(R&D)協力、政治・文化的交流が増え、ヨーロッパの地方政府・都市は概ね、中国政府を歓迎している」

欧州では、中国政府の広域経済圏構想「一帯一路」が欧州議会や各国の中央政府レベルで糾弾され、EUは12月はじめに「一帯一路」に対抗する世界的な投資計画「グローバル・ゲートウェイ」構想を発表した。

だが、MERICSの同報告書によると、ヨーロッパ諸国の地方政府レベルでは「一帯一路」は人気があり、多くの都市や地域が経済的恩恵を期待して参加を望んでいる。マルセイユ、ロッテルダム、デュイスブルクなどの都市が、ヨーロッパにおける「一帯一路」の節点になろうとしているという。

同報告書は、EUの5つの加盟国(ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、ポーランド)の地方自治体レベルで中国と合計146のパートナーシップを結んでいるという調査結果を引用した。

報告書を執筆したメルカトール中国研究所のシニアアナリスト、ロデリック・ケファーピューツ氏はVOAの取材に対して、中国の合法的な地方外交と、破壊的な侵入を区別するのがいっそう難しくなっていると語った。「中国との地方外交に伴うリスクとしては、経済的な依存、産業スパイ活動、中国政府からの政治的圧力の増幅などが挙げられる」という。

同報告書によると、欧州の中央政府レベルは中国政府の浸透を警戒しているが、中国はいわゆる「スマートシティ・パートナーシップ」を通じて、監視技術を欧州のデジタル・エコシステムに植え込んでいる。ドイツ、マルタ、セルビア、イギリスなどの国々の多くの都市は、中国企業と提携してスマートシティ・プロジェクトを展開しており、中国の監視機器メーカーであるハイクビジョン社(Hikvision)の監視システムがイギリスやドイツの多くの都市に導入されている。

前出のケファーピューツ氏は「多くの場合、中国側は外国政府の関与なしで、その国の都市や地域と投資・協力協定を結ぶことができる」と憂慮した。

(翻訳編集・叶子静)