世界的スピードで浸食される香港の報道の自由

2022/05/23
更新: 2022/05/23

かつて言論の自由と報道の自由の砦だった香港は、真の発言力を失いつつある。観測筋によると、独立系ジャーナリストによる綿密でバランスの取れた報道が急速に姿を消した今、香港の「ニュース」は中国共産党の見解を信奉する一方的報道で構成されている。

国境なき記者団による世界的な報道の自由の年次評価では、2021年から2022年にかけて香港ほど大きく後退した国や地域はない。ジャーナリストや他のメディア関係者が評価した180の国と主要地域のうち、香港は「世界報道自由度ランキング」で2021年の80位から68位を下げ、148位となった。

20年前、香港は18位だった。

香港のランキングの急落は、2020年6月に民主派の抗議運動が急増した後に中華人民共和国が施行した国家安全法の影響によるものとされている。反対派によると、分離、転覆、テロ、外国勢力との共謀などの犯罪に対して厳しい懲役刑やその他の罰則を課す曖昧な法律により、香港で公平で洞察に富んだ報道の普及が困難になったという。(写真:2020年11月に香港の裁判所外に立つ、虚偽の講義声明を発表した容疑で告訴されているジャーナリストの支援者ら)

同法が施行されて以来、言論の自由と多様な意見が優勢なオープンな社会としての香港の評判は大打撃を受けており、最新の世界報道自由度ランキングでは中国(175位)、ミャンマー(176位)、北朝鮮(180位)と肩を並べる有様となっている。

さらに、香港民意研究所が2022年3月に実施した世論調査によると、香港住民の報道の自由に対する満足度は過去最低にまで低下している。報道の自由に満足していると回答したのは28%で、これは1997年に調査が開始されて以来最低の数字だ。

こうした国家安全法の影響は、イギリスが1997年に旧植民地の支配権を中国に譲渡した協定に違反していると、イギリス政府は述べている。協定では、香港は少なくとも2047年までその自治権の多くを保持することになっていた。

2021年6月に中国を批判する記事を掲載した後に閉鎖された民主派の「蘋果日報」(Apple Daily)をはじめとする独立系の報道機関に対する政府の弾圧が言論の自由の消滅を象徴している。同新聞社を所有していた黎智英(Jimmy Lai)は投獄され、スタッフは逮捕され、銀行口座は凍結された。

2021年12月には、「立場新聞」(Strand News)が7人の現職および元従業員が警察の襲撃で拘束された後に閉鎖された。2人の元トップ編集者は、煽動的資料を公開しようと共謀した疑いで告発された。

その1週間後には、「衆新聞」(Citizen News)が閉鎖された。香港記者協会前会長で共同創設者の楊健興(Chris Yeung)は「記者も人間である。家族や友人もいる。報道を取り巻く環境が危険になっているという事実を真剣に受け止める必要がある」と述べている。

国境なき記者団によると、13人の香港人ジャーナリストが国家安全法違反の疑いで投獄されている。ラジオ・フリー・アジアが最近報じたところによると、なかには香港を去り、海外から香港を取材している記者もいるという。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの中国担当ディレクターを務めるソフィー・リチャードソン(Sophie Richardson)氏は、「この法律は際限がないように見えるという点でも破壊的だ」とした上で、「権利を尊重する環境で活動することに慣れていた香港の活動家たちは今、恐ろしい状況に直面している」とニューヨークタイムズ紙に語っている。

2022年5月、2019年の民主派抗議者への弾圧を監督した強硬派の李家超(John Lee)氏が、北京支持者で構成される選出委員会によって香港の行政長官に選出されたことで、言論の自由を擁護する人々は再び打撃を受けた。李以外に立候補した者はいなかった。

言論の自由は、意識と議論を促進する、民主主義にとって欠かせない要素だ。自由社会を構成する人々には、政府に説明責任を持たせ、汚職を暴露し、社会と市民個人に利益をもたらす意思決定を集団的に行うために、バランスの取れた報道と多様な意見が必要だ、と専門家は述べている。

2021年のノーベル平和賞を共同受賞したフィリピンのジャーナリスト、マリア・リーサ(Maria Reesa)氏はAP通信社に対し、「事実を知らずに真実を知ることはできない」とした上で、「信頼することもできないし、現実を共有することもできない」と語った。

Indo-Pacific Defence Forum
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