カンボジア臨海の町、驚くべき変貌に払った大きな代償

2022/10/03
更新: 2022/10/03
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近年まで、シアヌークヴィルはカンボジア国内のタイ湾にある、浜辺で過ごすひと時を求めて訪れる人々やバックパッカーが多く訪れる、のんびりしたリゾート地だった。 しかし、それは過去のことだ。 わずか10年足らずで、中国の資金がこの町を大きく変えた。 今では、ギャンブラー、ホワイトカラーの犯罪者、そして世界中の詐欺師の温床と化している。

かつてのどかな沿岸部の雰囲気が広がっていた町は、マカオや沿岸のラスベガスと呼ばれる場所へと姿を変え、高層カジノ、ネオンきらめく夜の歓楽街、テンポの速い国際的地域の特徴であるマネーロンダリング、違法薬物販売、武器取引、人身売買、野生生物売買が盛んに行われている。

大規模な変貌は、2010年代半ばにピークを迎えた中国人投資家や観光客の流入によるものであり、新型コロナウイルス感染症パンデミック(COVID -19)の流行が収束に向かう中、流入が再開される可能性がある。

この地域は、カンボジアで唯一の深水港があることでさらにその悪名が増幅されている。 近隣には国際空港もあり、 犯罪シンジケートは両方の拠点を利用して違法貨物の送付・受理を行っている。

シアヌークヴィルはカンボジアの多くの地域と同様に、中国の一帯一路政策と密接に関連している。 さらに、新しい高速道路がカンボジアの首都プノンペンとシアヌークヴィルを結んでいる。 「チャイナ・レイバー・ウォッチ(China Labor Watch)」の2022年8月の報告によると、中国政府は橋、水力発電ダム、競技場などの道路に資金を提供している。 

多くの住民は当初中国の投資を歓迎した。 カジノは雇用をもたらした。 しかし、カジノは組織犯罪ももたらし、不動産需要はインフレに拍車をかけた。 その後、2019年にフン・セン首相がカンボジア国内のオンラインギャンブルを禁止し、新型コロナウイルスの世界的流行により、残っていた環境客の多くが立ち去った。 大衆(そのほとんどは中国人)が居なくなった後には、未完成の建物と対照的に、カジノのネオンがこうこうと輝いている。

「どこもゴミだらけだ。それに道路の状態も悪い」と、長年シアヌークヴィルで暮らすサンポー(Sampoah)氏が「ザ・アトランティック(The Atlantic)」誌に語り、 「以前のシアヌークヴィルはとても良いところだったが、今は最悪だ」と述べた。

シアヌークヴィルで中国出資の建設プロジェクトに囲まれて貧困生活を送るカンボジアの人々(Getty Images)

オンライン雑誌「ザ・ディプロマット( The Diplomat )」によると、多くのカンボジア人が、シアヌークヴィルがカジノブームによって破壊されたと述べている。 「犯罪が急増し、 地元の住人はビジネスを失った。 かつて週末の旅行先として人気だったシアヌークヴィルを訪れようとする人は少ない。 カジノはカンボジアの評判と合法的なビジネスの評判を汚している」と2022年8月下旬にザ・ディプロマット誌が報じた。

組織犯罪対策の方法を分析・提言するグローバル・イニシアティブ(Global Initiative)は2022年9月の報告書で、シアヌークヴィルを「多面的な犯罪活動の拠点」と呼んでいる。

違法伐採された木材が輸出されるなど、シアヌークヴィルは国際的な犯罪ネットワークの一部ともなっている。 犯罪者らは、さらに観光業や不動産業などのその他の儲かる分野にも進出している。 グローバル・イニシアティブによると、彼らは「規制・取締の優先事項や活動の変化に対応して活動を適応させたり、移転させながら」一般的に緩い法的取締りの中を縦横無尽に立ち回っている。

「ロサンゼルス・タイムズ(Los Angeles Times)」紙によると、犯罪シンジケートの関係者の多くは中国人だという。 彼らはデジタル詐欺、オンラインギャンブル、麻薬や野生動物の取引など、多岐にわたる活動を行っている。

多くの取引には、組織犯罪運営者、詐欺師、好機に乗じようとする人々の間で人気のある仮想通貨が利用されている、とグローバル・イニシアティブは報告している。

犯罪活動がシアヌークヴィルに流入したことで、カンボジアの評判は損なわれた。 トランスペアレンシー・インターナショナル(Transparency International)によると、カンボジアは180の国と地域における公共部門の腐敗に関する2021年の評価で157位にランクされている。 公共部門の腐敗は人権侵害を生む格好の条件であり、「悪質でエスカレートする負のスパイラルを引き起こす」という。

カンボジア政治の専門家がグローバル・イニシアティブに語ったところによると、シアヌークヴィルは「中国の組織犯罪が支配力を持ち、地元経済に深刻なひずみをもたらす、広範な違法性のパターン」が見られるという。

2020年1月にザ・アトランティック誌が報じたところによると、急増する中国の影響力は、物理的にも経済的にもシアヌークヴィルを変えてしまった。 「クレーンや足場が至る所にあり、丘や森林はブルドーザーで打ち壊され、かつては豪雨時の排水に不可欠だった湖が埋め尽くされ、洪水を引き起こしている。 … やみくもな開発が廃水処理やその他の重要なインフラ設備開発を遥かに凌ぎ、至る所にゴミの山があり、廃水はしばしば約4.8km(3マイル)にわたり広がる海岸線に排出されている。現在は、海岸もゴミで覆われている」という。 

中国人投資家や観光客が町を去ったことで、低賃金に頼っていた住民は大きな打撃を受けた。 チャイナ・レイバー・ウォッチによると、犯罪者の裏社会は主な収入源をカジノや建設から 詐欺や人身売買へと切り替え、多くのアジア諸国の人々が被害に遭っている。

プノンペンで育ち、シアヌークヴィルを長年訪れていたヨーク・チャン(Youk Chhang)は、「カンボジア人のもの」であったタイ湾と果てしなく広がるビーチを覚えている。

「私が見たシアヌークヴィルは、もはや私がかつて知っていた場所ではなかった」と、町を訪れてから1か月後の2021年11月にザ・ディプロマット誌に語った。 「通りには高層ビルが立ち並び、その多くはホテルやカジノとして営業し、現在使われていなかったり、建設中のビルもあった。 … 到着したとき、とても虚しくなった。 息が苦しくなった。 かつてのシアヌークヴィルはもうなかった」

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