中国軍制服組トップ人事、「台海幇」が有力か 第3次台湾海峡危機を経験

2022/10/06
更新: 2022/10/21

中国共産党は今月中旬に第20回党大会の開催を予定している。党大会では最高軍事指導機関である党中央軍事委員会の人事刷新が行われる。一部の専門家は、1996年の第3次台湾海峡危機を経験した中国軍高官、いわゆる「台海幇」が軍制服組トップである中央軍事委員会の主要メンバーに就任する可能性が高いと指摘した。

今回の党大会で習近平氏は3期目の再任を果たし、軍トップの中央軍事委員会主席の座も維持するとみられる。同委員会の副主席を務めている許其亮氏(空軍上将)と張又侠氏(上将)はすでに72歳のため、党内の年齢制限に従い、現職から退く可能性が大きい。

主席、副主席のほか、中央軍事委員会には4人の委員がいる。魏鳳和・国務委員兼国防相(上将)、李作成・中央軍事委員会連合参謀部参謀長(上将)、苗華・中央軍事委員会政治工作部主任(海軍上将)、張昇民・中央軍事委員会規律検査委員会書記(上将)である。魏鳳和氏と李作成氏は、年齢制限で今回、退任する公算が大きい。

台海グループが抜擢される?

米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)3日付は、中央軍事委員会の上層部の人事刷新に関して「不透明なところが多い」が、1995~96年にかけて起きた台湾海峡危機の経験者が抜擢されるとの見方を示した。

中央軍事委員会の苗華委員(66)はその代表人物だ。同氏は福建省福州市生まれで、同省に駐屯する第31集団軍で長年勤務していた。福建省で17年を過ごした習近平氏と深いつながりがあるため、同委員会副主席に昇格する見込みが大きいとされる。

いっぽう、中央軍事委員会の李作成委員(69)や陸軍司令官の劉振立氏(上将)を含む軍高官の多くは、1979年の中越戦争に参戦した。

9月21日に北京で国防と軍隊改革研究討論会が開催され、出席者は中央軍事委員会入りの有力候補者と目されている。劉振立氏が同委員会のバッジを付けて出席したことに注目が集まり、同氏が党大会で中央軍事委員会委員に任命されるとの観測が出ている。

また、今年1月に東部戦区司令官を退任した何衛東氏(上将、65)は同討論会に参加した際、「中央軍事委員会連合作戦指揮センター」と書かれた腕章をつけていた。香港紙・星島日報は、何氏は同委員会副主席の有力候補の1人だとの見解を示した。何氏は福建省出身で、第31集団軍の参謀長、副軍長のほかに、南京軍区(現 東部戦区)副参謀長、上海警備区司令官などを歴任した。

台湾・金門大学の盧政鋒准教授はこのほど、「習近平氏が体制発足から10年で、軍の大半を掌握した。16年以降は大規模な軍改革を行ってきた」と大紀元に語った。

盧氏は、近年中国軍は沖縄、台湾、フィリピンを結ぶ第1列島線に向けて軍事活動を活発化させているため、今後「福建省や東南沿岸部で経歴を積んできた将校が起用されるだろう」との考えを示した。

台湾国政基金会の李正修副研究員は、「1996年の台湾海峡危機を経験した台海幇は、米軍の軍事戦略をある程度知っているため、上層部入りの可能性が大きい」とした。

VOAは専門家の話として、台海幇が登用されても、習近平氏が台湾統一に向けて武力行使を決意したわけではないと伝えた。「台湾攻撃に大きなリスクが伴うことは、習氏が一番理解しているはずだ。今のところ、武力行使の兆候は見せていない」

グループの存在を認めない習近平氏

いっぽう、軍事評論家の亓楽義(き らくぎ)氏は、「東部戦区で勤務した中国軍の将校は多くいる。実際に彼らは他の戦区で勤務したこともある」とし、台海幇が存在しないとの見方を示した。

同氏は、米国防大学のジョエル・ウスノフ(Joel Wuthnow)上級研究員の研究を引用し、「軍改革以降の高級将校のうち、東部戦区が占める割合は約2割で、西部戦区(旧 蘭州軍区)を下回る」と大紀元に述べた。

「西部戦区出身の高級将校の割合は22~26%だ。この数値では台海幇ではなく、西北幇がより重要視されていると言える」

亓氏は、習近平氏の将校起用は特定の地域出身に偏っていないとの認識を示した。東部戦区の現職司令官である林向陽氏は中部戦区の司令官を務めたことがある。「習氏は軍の中で派閥を作ることを許していない。軍内の郭伯雄勢力の排除に苦労していた」

陸軍出身で中央軍事委員会副主席だった郭氏は江沢民元国家主席に近いとされていた。15年4月、習政権は郭氏の身柄を拘束し、汚職容疑で取り調べを始めた。16年7月、中国の軍事裁判所は同氏に無期懲役を言い渡し、上将階級をはく奪した。

 

張哲
張哲
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