例年以上に「殺気立つ」両会 「台湾独立支持者の虐殺」まで提案される

2023/03/10
更新: 2023/05/26

北京では、国政に助言する「全国政治協商会議(政協)」が4日に、同じく5日には国会にあたる「全国人民代表大会(全人代)」が開幕した。

この2つの重要会議を総称して「両会」と呼ぶ。どちらも3月中旬まで開かれる見込みである。

「全人代」と「政協」は形骸化したショー

日本のメディアでも「中国の国会にあたる」と説明される全人代は、確かに「中国憲法上の最高の権力機関」と規定されているが、実際は共産党の指導下にある形だけの議会でしかない。その仕事も、党の決定事項を承認する、いわば「三文判を押す」だけである。

採決のときは、人民大会堂に全国から集まった人民代表が、昔は右手の挙手だったが、今は机上の押しボタンで一斉に「賛成」を押すだけである。

議案によっては、ごく少数の「反対」も電光掲示板に表示される。ただし、それも予定された見世物の一環であるため、この場合に限っては当該の人民代表があとで批判されることはない。言うまでもなく、議案が否決された前例は全くない。

もう1つの政協のほうも、形式的な諮問組織でしかない。そのため両会は、民主政治をまねた「ただのショー」であるのは周知の事実である。ただし、中国共産党にはそれを演じずにはいられない「ご事情」がある、と中国問題専門家の姜光宇氏は指摘する。

「中国共産党のような非合法な盗賊政権にとって、最も重視されるのが正統性(中国の政権としての正当な名分)があることだ。歴史上、陰謀によって政権を奪取したどの政権も、やはりこの点が最も気になる。世の人から、正統性がないと言われることが最も我慢ならないのだ」

そのため、中国共産党は「自らの政権は、どこまでも合法であり、国民の支持を得ていることを必死にアピールしている」と姜氏はいう。

「正統性」をもたない強奪政権

正統性とは、言葉を換えれば「正しい筋目」である。

辛亥革命(1911)によって清朝が倒され中華民国が政権を引き継いだとき、簡素な様式ではあったが、宣統帝退位の手続きは1912年2月12日にきちんと行われている。もちろん当時6歳の幼帝にそれができるわけがないので、隆裕太后(光緒帝妃)が代行した。

しかし、国民党を台湾に追いやった中国共産党は、そうした王朝交代の「作法」を踏襲していない。もとより台湾の蒋介石も「大陸反攻」の野望を捨てていなかったとはいえ、暴力革命による強奪政権である中共に「作法」を求めること自体、ないものねだりであろう。

そこで中共は、自身の正統性を証明するために、また本当に「党が人民の支持を得ている」ように対外的に見せるために、全国の省・自治区・直轄市や香港などから約3千人の「人民代表」を選出して集合させる。人民大会堂の席に咲いた華やかな民族衣装も、芝居の雰囲気づくりに欠かせないアイテムといってよい。

これら「人民代表」に党の決定事項を承認させているのだが、人民の代表といっても、実際にはそういう党のお膳立てのなかで指名されるのであり、民主的な選挙で人民が選出したわけではない。

そうして中国共産党は「国家権力を人民の手にゆだね」また「人民の声を全面的に聞き取ることで、より良く人民に奉仕する」をアピールをしている。

それゆえに、姜光宇氏は「両会など、ただのショーでしかない。そんなショーに参加する人たちも、全員が演者と思ってよい」と断言した。

今年の両会には「殺気」がある

ところが今年の両会は、いつもと少し雰囲気が違うようだ。例年以上に、何やら不気味な「殺気」が立ち込めているのである。

両会で話題になった事といえば、習近平国家主席による「党指導強化へ機構改革」および退任前の李克強首相による「戦争や干ばつへの備えを求める最後の報告」であるが、そのほかに、人民代表や政協委員に選ばれた「演者」たちの言動も注目された。

例えば、政協委員に選ばれた香港出身のアクション俳優・甄子丹(ドニー・イェン)氏の場合、生まれ故郷である香港の市民を暴徒呼ばわりしたばかりか、中国大陸がいかに素晴らしいかを宣伝した。そのためネット上では、甄氏への批判が殺到している。

また、同じく政協委員入りした、五毛党(ネットで中国政府に有利な書き込みをするアルバイト)代表の若手ネット作家である周小平氏の場合はどうか。彼はなんと、小粉紅や五毛党たちの血を沸かすような「台湾独立支持者の粛清」を提案をしたのである。

周氏は、台湾の独立(台独)を支持する人物の「ブラックリスト作成」や、同じく独立を支持する台湾企業への制裁を提案した。台独支持企業は中国での活動が禁止され、資金が凍結される。

さらに周氏は「いったん戦争になれば、ブラックリストに載った人間は誰が殺しても構わない。その時、実行者は何の法的責任も問われず、さらには栄誉勲章まで授与する」という、ほとんど狂ったような提案も示した。

この「虐殺令」に等しい粛清案は、なんと「可決された」と今月4日に周氏本人が明かしている。

それが事実としても、立案審査を通過したのか、それとも党政部門の手続きを通過したのか。どの段階で「可決された」のかに関する説明はなかったが、日時からして、最初の立案審査を通過したのではないかとみられる。

あからさまな「台湾企業への恫喝」

これについて、時事評論家の唐靖遠氏は「そのような提案が立案審査を通過できたということだけでも、大いに意味を持つ。これはある種の方向性を示しているだろう」と指摘する。

唐氏によると「この虐殺案は、もはや周氏の個人的な意見ではなく、ある程度の中共当局の公式な態度を代表している」という。

さらに唐氏は「たとえこの提案が本当に全人代で可決され、立法されても、虐殺令はまだ心理戦にしか過ぎない。本当に恫喝力を発揮するのは、中国に関係をもつ台湾資本や台湾企業に対する制裁の部分だ」と警鐘を鳴らす。

つまり、中国に関係する全ての台湾資本や台湾企業に対して「立場を明確しろ」と強要しているというのだ。

唐氏は、それらの台湾企業が「目先の利益のために中国共産党の指導、さらには乗っ取りを受け入れるか。それとも長期的な自社の発展のため、中国を去って台湾に戻るか。そのどちらかを選ぶことになる。迷っていられる時間は、もう長くはない。おそらく数年だろう」と指摘した。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。
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