格安な中国製品の背後にあるのは「血と涙」 命を落とすほど過酷な強制労働経験者の証言

2023/05/03
更新: 2023/05/26

近年、新疆におけるウイグル人をつかった強制労働問題が国際社会でも注目されるようになってきたが、中国の刑務所では長年にわたり、きわめて搾取的な強制労働の実態がある。時折報道されるのは、氷山の一角でしかない。

カナダ首相「中国の奴隷労働」に言及

カナダのトルドー首相は4月28日、「中国は奴隷労働によって、世界最大のリチウム生産国になった」と言及。これについて、ロイター通信が報じた。

この日、米ニューヨークで開かれた外交問題評議会の会合でトルドー氏は、電気自動車(EV)などのバッテリーに使われるリチウムの生産を強化するカナダの取り組みについて説明していた。そこで同氏は「カナダには奴隷労働がない。そのため、カナダ産リチウムは(中国産よりも)少し割高になる」と述べている。

世界的なEV車へのシフトに伴う需要増加により、リチウムをはじめとする鉱物資源の安定調達の必要性も高まっている。

そのため近年では、中国企業によるリチウムなど鉱物資源に関連する企業の買収が目立つ。カナダ政府は昨年11月、国家安全保障審査の結果に基づき、中国の国有企業3社に対し、保有するカナダの重要鉱物資源企業の株式を売却するよう命じている。

昨年9月に米国の労働省が公開した「児童労働・強制労働による物品が原材料として使用されている製品のリスト」のなかには、リチウムイオンバッテリー(中国)や太陽電池セル・モジュール(中国)など10品目の中国製品が含まれている。

中国製品の背後にある、血と涙の物語

米国に亡命した中国人女性・王春彦(おう しゅんげん)さんは2021年5月、米バージニア州カルペパー郡の監理委員会(郡の行政機関)で証言し、自身が中国で経験した奴隷労働の実態を語るとともに、当時、自身が製作に関わった衣料品を提示した。

王さんは、かつて中国遼寧省で外国と貿易を行う商社を経営する、いわゆる「成功したビジネスマン」だった。しかし法輪功を修煉しているという理由で、同省の女子刑務所(遼寧省女子監獄)に収容され、そこで過酷な奴隷労働を強いられることになる。

同刑務所の責任者は「お前たちがここで作った服は、欧州や米国に輸出されるものだ」と明言していたという。

言うまでもなく、法輪功を修煉することは中国のいかなる法律にも抵触せず、社会に有益でこそあれ、中国共産党が虚偽宣伝するような反社会的な事実は一切ない。全ては、江沢民が独断で命じた法輪功迫害の暴挙であり、その悪政は今も続いている。

善良な法輪功学習者が大量に捕らえられ、いかなる罪もなく、正当な法的手続きもなされずに、刑務所や労働教養所(思想改造施設)に入れられる。王春彦さんも、そうした「冤罪による受刑者」の一人である。

王さんは過酷な奴隷労働のほか、獄中で様々な拷問を受けている。刑務所内で迫害を受けて命を落とした他の法輪功学習者の死も目撃したという。

バージニア州議会は今年2月23日、王春彦さんを「中国の強制労働収容所の生存者」として称賛し、中国共産党の暴政をあばいた彼女の勇気を称えた。

王さんは証言のなかで「中国が海外へ輸出する商品は、きれいにラッピングされています。しかし、その包装が覆い隠しているのは(中共の)罪悪なのです。お店で中国製品を購入するとき、その背後にある血と涙の物語について、あなたは想像できるでしょうか?」と述べた。
 

米国に亡命した王春彥さん(右)は2021年5月4日、米バージニア州カルペパー郡の監理委員会(郡の行政機関)で自身の奴隷労働経験を証言し、当時自らが製作に関わった衣服を提示した。(同公証会での動画のスクリーンショット)

王さんの証言によると、刑務所では「朝6時から深夜2時まで」働かされ、労働の合間にとる食事の制限時間は「わずか5分」という。また1日分の飲み水は、500ccの温水ボトル2本と決められていた。作業のノルマを達成できなければ、食事を抜かれることもあった。

そのような過酷な労働環境のなかで、意識がもうろうとしながら働かされる受刑者も多かった。また受刑者たちは様々な病気にかかったという。しかし、病気になっても相変わらず作業をさせられた。「病気の受刑者がつくった製品があっても、いかなる衛生検査も施されなかった」と王さんは証言している。

王さんが釈放された時、刑務所から持ち帰った手荷物の中に、なぜか獄中での強制労働で自らも製作に関わった「衣服」が複数枚、誰かの手によって入れられていたという。その衣服を、王さんは証言のなかで手にとって見せた。

厳格に決められた「トイレの時間」

遼寧省にある馬三家(ばさんけ)女子労働教養所(以下「馬三家」)では「強制労働をさせられる受刑者のトイレの時間まで決められていた」と証言する元受刑者もいる。

生産量を上げるために、毎日12時間の強制労働のなかで、トイレに行ける時間は午前10時と午後3時半と決められていた。「トイレを我慢し過ぎて、腎臓を悪くする受刑者は多かった」と元受刑者の呂さんは証言している。トイレは決められた時間以外には入れないよう、常に鍵がかけられているという。

生産量のノルマを達成できなければ食事が抜かれ、睡眠時間まで奪われる。獄中の食事は本当に少なく粗末なもので、とても十分には食べられない。極度の栄養不良によって歯茎が黒くなった。そのため呂さんの歯は、1本も残らず抜け落ちたという。

呂さんと同じ「馬三家」を出た女性の受刑者は、わかっているだけでも出所後に10数人が亡くなっている。彼女たちは過酷な刑務所生活のなかで、腎臓を悪くしていたという。

「馬三家」の実態に関しては、ドキュメンタリー映画『馬三家からの手紙』が公開されている。この映画の主人公は、さいわい生きて「馬三家」を出ることができたが、海外に潜伏中、何者かが接触した可能性のある「不審な死」を遂げている。

世界規模で起こる「人権侵害・中国」の締め出し

中国における強制労働や奴隷労働などの人権侵害は、今も続いている。

そのほか、先進国のハイテク技術を窃取して軍事転用するなど、中国に関係する様々なリスクを回避するために、先進国を中心とした各国では、国際的なサプライチェーンからの「中国締め出し」が進んでいる。

中国とのハイテク覇権競争を「国家安全保障上の脅威」と位置づける米国は、新疆をふくむ中国で強制労働によって作られた製品の「国際サプライチェーンからの締め出し」を進めるとともに、中国経済への過度な依存をやめるよう各企業に呼びかけている。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。
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