テクノロジー 高周波曝露の熱性の影響だけを考慮した安全基準に懸念

5Gの安全性に係る問題点 マイクロ波症候群の重症例から明らかに

2023/05/09
更新: 2023/05/11

あるスウェーデンの健康な中年女性が、住んでいるアパートから60mの距離に5G基地局が設置された直後、高周波/マイクロ波症候群の症状を引き起こすようになったという。

先月、スウェーデンの環境がん研究財団(ECRF)が、査読付きジャーナル「Annals of Clinical and Medical Case Reports」でこの事例を報告した。

研究は5Gワイヤレステクノロジーに関して、人体と環境に悪影響を与える可能性に関する研究がないにもかかわらず、世界中で展開されていることを指摘している。

その結果、パルス変調マイクロ波への曝露事例が世界中で劇的に増加したという。マイクロ波の周波数は300MHzから300GHzで、米国の都市部では5Gに3.5GHz帯が割り当てられている。

5G用周波数における曝露の健康への影響に関する研究は、最近までほとんど存在していなかった。昨年10月に発表された研究では、動物を3.5GHzの周波数帯に1か月間、週5日、1日2時間曝露させてその影響を調べた。

その結果、曝露によって、健康な認知機能と正の相関を有するホルモンであるイリシンレベルの低下が見られたのに加えて、脳の海馬領域における酸化ストレスおよび変性ニューロンの増加が引き起こされた。

冒頭のスウェーデン人女性は、頭痛、めまい、平衡感覚障害、記憶障害、錯乱、集中力低下などの認知機能障害、極度の疲労、不安、咳、鼻出血、尿機能障害、自然痣や皮膚発疹などの皮膚障害を発症した。

アパートに隣接する3階建てビルの屋上に設置された5Gのアンテナは、アパート2階の彼女の部屋に向いていた。彼女がマイクロ波症候群の重篤な症状を発症したのは、それまで同じ場所にあった4Gのアンテナが5Gのアンテナに交換された直後のことだった。

5G基地局から遠く離れた別のアパートに移動すると症状はすべて消えたが、元のアパートに戻ると24時間以内に症状が再発したという。

女性が飼っていた犬も、5Gのアンテナが設置された後に下痢になった。女性と同様に、別のアパートにいる間は症状が消え、戻ると再発したほか、散歩の帰りにはなかなかアパートに入りたがらなかったという。

ECRFの研究者らは、「5Gはマイクロ波のパルス繰り返し周波数が高く、放射線スパイクは4Gなどの前世代のものよりも飛躍的に大きい」と指摘している。

研究者らが、女性の部屋の窓から30cm以内の場所で、1平方メートル当たりのマイクロワットを1分間にわたって測定したところ、有意なスパイクを発見した。

バスルームでも高い放射線が確認され、窓に最も近い浴槽での数値が最高だった。基地局からの伝送が直接は届かない寝室では、測定された高周波はかなり低かった。

研究者らが使用した商用メーター(Safe and Sound Pro II)では最大値に達したものの、曝露レベルは非熱的で、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)が推奨するガイドラインをはるかに下回っていた。

マイクロ波症候群の歴史

60年代と70年代の東ヨーロッパ諸国で、マイクロ波曝露に起因する疾病が最初に報告された際は、神経、心臓血管、および内分泌系の混乱に関連する症例が多かった。

また、米軍人を含む被曝労働者に対する国際調査では、非熱レベルのマイクロ波曝露が倦怠感、めまい、頭痛、睡眠障害、不安、注意力と記憶力の問題などの症状を引き起こすことが明らかになっている。

他にも、人間や動物を対象とした研究レビューは、「非熱レベルの高周波 /マイクロ波放射に曝露することで、驚くほど様々な神経学的および生理学的反応が生起される」と結論付けた。

これらの症状はマイクロ波症候群などと呼ばれている。非熱的効果(マイクロ波化学における熱では説明できない現象)は、主に信号の変調や脈動、あるいはピーク強度や平均強度に左右される。

高周波使用の安全基準に問題

イリノイ大学シカゴ校の電気コンピューター工学科の名誉教授であるジェームズ・リン氏は、高周波使用による人体への影響の評価方法に重大な問題があると指摘している。

4月に査読付きジャーナル「Environmental Research」に掲載された記事でリン氏は、世界各国で採用されている安全な高周波曝露の限界値が、曝露から短時間で現れる熱性の影響に基づいており、長期曝露による他の影響を評価していないことを詳述している。

熱性の影響に依拠した基準値のガイドラインは、ドイツに拠点を置く国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)が設定したものだ。

ICNIRPは、産業界の支援を受けることで、高周波使用による健康障害に関する科学的評価の国際的な権威としての地位を確立している。

ECRFの研究者らは次のように述べている。

「ICNIRPの基準値以下の範囲での有害事象が増えているにもかかわらず、彼らのガイドラインは非熱的効果に関する科学的証拠を蔑ろにした評価に基づいている。そのような非科学的な評価は産業界の利益となり、5Gとワイヤレス社会の展開を促進することになる」。

ICNIRPの元メンバーであるリン氏は、先ほどの記事の中で、「これらの健康安全ガイドラインと基準は憶測に基づいており、重大な異常がある。安全な限界値は見当違いかつ議論の余地があり、安全性と公衆衛生保護の観点から科学的正当性を欠いている」と批判している。

2019年、43か国の240人以上の科学者らが国連に対して申し立てを行い、5Gの健康に対する影響が適切に評価されるまで導入を引き延ばすよう求めた。次の通りだ。

「無線通信技術は急速に進展しており、あらゆる経済セクターにおいて不可欠なものとなりつつある。しかし、これらのテクノロジーに曝露されることによって引き起こる人、植物、動物、微生物への危害の科学的証拠が急速に増えている」。

「慢性的かつ不本意な形で非電離放射線源に暴露することによる健康障害は、私たちや懸念を持つ科学者、医師、賛同者らが繰り返し問い合わせたにもかかわらず、国内および国際的な保健機関から無視されている」。

「これが国連が定義する人権侵害に相当するのは明らかだ」。

医療の自由を強く主張するフリージャーナリスト。エポックタイムズのほか、The DefenderやMediumなどのウェブメディアや出版物にも寄稿している。25年にわたり大学教育に携わり、文学やライティングを教えた経験を持つ。カリフォルニア州パサデナを拠点に活動。
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