日米豪印戦略対話4か国首脳陣 優先事項とインフラ計画を強調

2023/06/12
更新: 2023/06/12

通称「Quad(クワッド)」として知られる日米豪印戦略対話(4か国戦略対話)の各国首脳陣は2023年5月20日に開催された首脳会合で、共有するビジョ ンの強化と優先課題の計画策定を目的として、同戦略対話加盟国の「善を推進するグローバルな力」としての地位を再確認した。 同首脳会合ではインド太平洋地域の平和と安定に対する日米豪印間の取り組みを強化することで一致している。

日米豪印戦略対話は過去に5回の首脳会合を実施しているが、今回三度目となる対面形式の会合は、地域の地政学的、人道的、環境的懸念に関する率直な意見交換を行う機会となった。 今回の会合は年次で開催される主要7か国首脳会議に合わせて日本の広島で開催されたが、 「アジアの民主主義の弧」構想の一環として戦略的同盟と位置付けられる日米豪印戦略対話は、地域問題に取り組むために定期的に会合を開催している。

加盟国首脳陣は東南アジア諸国連合(ASEAN)、太平洋諸島フォーラム(PIF)、環インド洋連合(IORA/旧環インド洋地域協力連合)といった他のインド太平洋諸国や連合と緊密に連携することを確認し合い、 協力や意思の疎通、そして各国がそれぞれに重要な要因となる「自由で開かれたインド太平洋」の構築を強調した。

アンソニー・アルバニーズ豪首相は、この地域を「主権が尊重され、国家規模を問わずにあらゆる国が平和を維持できるという地域バランスのメリットが存在する」地域と表現している。 豪首相は、ナレンドラ・モディ印首相、岸田文雄首相、ジョー・バイデン米大統領等の他の首脳陣と共に、地域の課題に対する集団的なアプローチを提唱した。 首脳陣は会談後に発表した共同声明で、「いずれの国も支配せず、いずれの国にも支配されない地域、すなわちすべての国が威圧されることなく、自らの未来を決定するための主体性を発揮できる地域を追求する」と述べている。

平和・安定の他に日米豪印戦略対話が優先する課題として、インフラ、健康衛生、気候変動、新興技術、サイバーセキュリティ、宇宙、海洋状況把握などが挙げられた。 外交問題評議会(CFR)アジア太平洋研究のシーラ・スミス上級研究員がボイス・オブ・アメリカに語ったところでは、今回の会合では国家間において高信頼性の通信を確保する技術の必要性と共に、太平洋島嶼国の平和と安定に焦点が当てられた。

道路から電力やインターネットサービスに至るまで、首脳陣は地域のインフラ向上と連結性の改善について意見交換を行っている。 ジャパンタイムズ紙が報じたところでは、今回の会合では官民連携で海底ケーブルネットワークを支援する喫緊の必要性が強調された。これにより、信頼性が高く安全なインターネットサービスをインド太平洋地域で実現することができる。

今回発表された新たなイニシアティブ「日米豪印・インフラ・フェローシップ・プログラム」を通して、同加盟国は政府関係者を対象として1,800人以上に奨学金や研修(ワークエクスチェンジ)、また他の幹部プログラムを提供する予定である。これは、地域のインフラ実務者が自国で質の高いインフラを設計、建設、管理できるようにすることを目的とするものである。

今回の会合で一致した優先事項を簡潔にまとめると以下のようになる。

  • 海洋領域認識(MDA)を強化することを目的として、「海洋状況把握のためのインド太平洋パートナーシップ(IPMDA)」の対象をインド太平洋地域の提携諸国にも拡大する。 2022年の東京首脳会合で発表された同パートナーシップは、IUU漁業(違法・無報告・無規制漁業)の阻止、気候変動や自然災害の監視、海洋関連法の遵守を目的として、法執行機関に海洋状況把握のためのデータを提供することを主軸とするものである。
  • 医療従事者の育成、疾病監視、医療情報システムの調整などを通じて、疾病やウイルスの発生を検知して迅速に対応できる地域の能力を構築することで、健康衛生の改善を目指す。
  • モバイルネットワークにおいてオープンRAN(オープン無線アクセスネットワーク)を展開することを目的として、パラオと提携する。 オープンRANにより、携帯電話などの機器を接続してネットワークを構築できるため、ウェブアプリケーションのアクセスにおいて異なる供給業者がサービスを提供できるようになる。

刻々と変化する同地域でイニシアチブを達成するためには協力体制が不可欠であると、日米豪印は主張している。 ジャパンタイムズ紙が伝えたところでは、岸田首相は首脳会合に先立ち、「法治に基づく自由で開かれた国際秩序が脅威に曝されている」と述べている。

共同声明を通じて、日米豪印戦略対話4か国は、「インド太平洋地域の提携諸国と緊密に協力を図りながら、この不確実性と好機の時代を共に乗り切るべきであると確信している」とし、 「すべての国が地域の平和、安定、繁栄に貢献すると共に、主権と領土一体性の原則を含めた国際法および法治に基づく国際秩序を堅持する役割を担っている」と述べている。

Indo-Pacific Defence Forum