国際条約を無視する中国共産党 メコン川上流に建設したダムで下流に深刻な損害(1)

2023/08/21
更新: 2023/08/21

今夏、中国がメコン川上流に建設した一連の大規模ダムは、下流域の深刻な干ばつを悪化させた。専門家は、中国共産党(中共)の建設したダムは過去数十年にわたって事実上の武器となり、東南アジアにおける権益を追求する一方で、生態系や暮らしに深刻な損害と脅威を与えてきたと考えている。

チベット高原を源とするメコン川は、全長約2900マイル(約4800キロメートル)にわたる。その上流は中国南西部を1300マイル(約2092キロメートル)にわたって蛇行し、中国では瀾滄江(らんそうこう)と呼ばれている。

この壮大な河川は中国だけでなく、ミャンマー、ラオス、タイ、カンボジア、ベトナムの東南アジアの5か国を横断して流れ、何百万もの人々の生命線となっている。

ブライアン・エレ博士は、米国シンクタンク「スティムソンセンター」の東南アジアプログラムの上席研究員であり、「メコン川ダム観測プロジェクト」の担当者でもある。彼は、リモートセンシング、衛星画像、地理情報システム分析、ソーシャルメディアを活用して、メコン上流に存在するダムの影響を、メコン地域の社会や政府に伝えるプロジェクトを共同で推進している。

最近のワシントンD.C.でのイベントの後、エレ博士は「さまざまな気候指標は、メコン川で深刻な干ばつが進行していることを示している」と述べた。また、中国が「雨季に川から水を汲み上げ、乾季にはその水を戻して水力発電に利用することで、干ばつを悪化させている」と指摘した。

ダムの貯水が干ばつを悪化させている。

中国のダムは水を貯め、その後、非自然の放水で川の水位を人工的に変えている。下流域の水位が異常に変動する時、魚類の回遊、農業、交通に長期的な影響を与える。

ドイツ在住の中国人水文学者である王維洛氏は、2021年3月『議報』に寄稿した記事で同様の懸念を表明した。また、王維洛氏のデータによれば、実際の状況はエレ博士が現在示唆しているよりも更に深刻になる可能性があると指摘した。

エレ博士は瀾滄江の11個のカスケードダムを監視している。王維洛氏によれば、中共支配下のチベットにあるザーク川水力発電所を含めると、2020年末までに実際には12箇所のダムがあると指摘した。

ザーク川は瀾滄江の源流と見なされている。更に、8つのダムが計画・建設中で、瀾滄江の多くの支流には合計で85基のダムが存在している。報告によれば、雲南省南西部にある糯扎渡(ヌオザドゥ)ダム の総貯水容量は237億300万立方メートルであると王氏は報告書で述べている。

エレ博士は、「メコン川ダムの1年間の監視:私たちは何を発見したか」というタイトルの分析レポートの中で、糯扎渡ダムと小湾ダムの総貯水容量がメコン川の有効貯水容量の50%以上を占めていることを指摘した。これらの2つのダムは、メコン川において中国最大のダムであり、どちらも国有企業の華能水電集団が所有している。

長年の論争

15年近く前の2010年、タイ、ラオス、ベトナム、カンボジアからなるメコン川委員会(MRC)のメンバーは、メコン川の水位低下をめぐって、中国が瀾滄江にダムを作ったせいだとして、中国政府に不平を訴えた。

中国政府は、メコン川河口の年間平均流出量は13.5%にすぎず、ダムはメコン川下流域に「何の影響も与えていない」と主張した。当時、専門家や学者たちはこの公式声明に異議を唱えた。

ロンドンに本部を置く環境保護団体「チャイナ・ダイアログ・トラスト」が2010年に発表した記事で、清華大学の秦輝教授は、瀾滄江出口の河川区域のほとんどで流出量が14%をはるかに超えると書いている。彼はルアンパバーンの区間を例にして、中国から流出する水量は平均して川の水量の約2/3であることを指摘した。

王維洛氏も同様の意見を持ち、瀾滄江の主要な水源は、山の雪解け水と中国の地下水であり、乾季でも十分な水を供給できると指摘した。メコン川は、乾季に雨が降らない場合、主に上流(瀾滄江)の水に頼る必要がある。

自然の状態では、中国からタイのチェンシェンへの水の流れは、乾季には毎秒平均689立方メートルで、これは乾季のメコンの流れの半分か3分の2の程度に相当すると王維洛氏は語った。

ダムは土砂を閉じ込め、生態系を破壊する

メコン川は、氷河からの雪と土砂を運んでいる。雨季には水と土砂に豊富な栄養分が含まれ、メコン川流域は世界で最も重要な内陸漁業と米の穀倉地帯となっている。

しかしながら、中国による水力発電ダムの建設によって、土砂の多くがダムによってせき止められ、メコン川とメコンデルタの生態系を悪化させている。メコンデルタの塩化の進行は、すでに高収量でコメの輸出量が多いタイとベトナムのコメ生産に直接影響を与えている。

ロイターは2022年12月に、「2020年までに、河川が運ぶ土砂の約3分の1しかベトナムの氾濫原に到達しなくなり、現在の減少率では、2040年までに、毎年500万トン以下の土砂しかデルタに到達しなくなる」と報じた。また、メコン河流域諸国にとって重要な食料源である捕獲漁業も、困難に直面している。

世界第4位の内水漁場であるカンボジアのトンレサップ湖(Tonle Sap Lake)では、湖から産卵のために遡上する数百種の魚が妨げられ、絶滅の危機に瀕している種もある。

ドイツの水産リモートセンシング会社EOMAPの衛星データによると、2012年の糯扎渡ダムの平均濁度は、ダム建設前の2004年の同じ場所の平均濁度よりも98%低かった。

国際条約の無視

現在までのところ、中国政府は上流ダムの堆積物に関する水文データを発表していない。

中国のダムはしばしば予告なしに水を制限したり放流したりし、その結果、下流国に被害を与えている。中共は上流ダムでの活動を下流の5か国に通知することに合意しているが、批評家によれば、実施には消極的な姿勢を見せている。例えば、2020年12月31日には景洪水力発電所が上流で6日間の断水を行った後、下流国に20日間の水量制限を実施すると通知した。しかしこの時点で既にメコン川の水位は1メートル以上下がっていた。

エレ博士の情報によれば、「12月31日からの景洪市の急な水量制限により、1月3~4日にかけて、下流380kmのチェンセーン川の水位が急激に1メートル下がった。瀾滄江・メコン協力機構(LMC)およびメコン河委員会(MRC)のデータによって確認されたが、1月4日、中国はこの急な変化について通知を行っていない。この突然の水位変化は、下流の魚や養殖業にも影響を及ぼす可能性がある。

メコン川委員会(MRC)は1995年にメコン川流域国によって設立されたが、重要な上流国である中国は参加を拒否している。

米国在住の中国専門家である石山氏は、8月8日エポックタイムズに対し、中国政府がMRCに参加する可能性は低いと語った。中共は、国際水法(IWL)や国連河川法などの国際河川法にはほとんど調印していない。石山氏は、「中共は、これらの水法はすべて上流に制限を課すものであり、したがって自らの意図通りに行動し、規制を受けることを望んでいない」と述べた。

Lynn Xu