焦点:注目集める中国の「日本化」リスク、IMF総会でも懸念材料に

2023/10/17
更新: 2023/10/17

[マラケシュ(モロッコ) 13日 ロイター] – 渡辺博史・国際通貨研究所理事長(元財務官)は、中国の政策立案者が2015年頃まで、デフレの長期化と景気の停滞を招いた日本型バブル崩壊を回避する方法を熱心に研究していたと振り返った。

渡辺氏によると、中国の政策立案者はこうした取り組みを「その後はやめてしまった。この7─8年は教訓に全く注意を払っていないように見える」という。

ロイターの取材に「習政権の下、中国は恐らく経済を重視しなくなったのではないか」と話した。渡辺氏は今も現職の政策立案者と緊密な関係を持っている。

中国は今、そのツケを払っているのかもしれない。物価は低迷し、9─15日にモロッコのマラケシュで開かれた国際通貨基金(IMF)と世界銀行の総会では、中国の深刻化する不動産危機が世界の成長に対する最大のリスクの一つとして指摘された。

世界第2位の経済大国である中国は「日本化」の瀬戸際にあるとして注目を集めている。「日本化」とは日本で1990年代後半のバブル崩壊後に15年間続いた低成長とデフレを指す。

日本の政策立案者の間からは、日本にとって最大の貿易相手国である中国の低迷が長期化すれば、輸出に依存する日本経済が大きな打撃を受けると懸念する声も出ている。

日銀の野口旭審議委員は12日に「急速に浮上しているのは、中国がデフレに陥るリスク、つまり『日本化』するリスクだ」と述べた。

「中国が日本と同じような状況に向かっているかどうかは、まだ分からない。しかし、中国で経済の屋台骨である不動産セクターが低迷し、若者の失業率が上昇するとともに、インフレが弱まっているのは事実だ」と、12日に新潟市内で行われた講演で語った。

IMFは10日に公表した最新の世界経済見通しで、中国の今年の成長率予想を4月の5.2%から5.0%に引き下げ、中国の不動産セクターの危機が世界的な波及を伴って一段と深刻化する可能性があると警告した。来年の成長率は4.2%へと、さらに減速すると予測している。

13日に発表された中国の9月消費者物価指数(CPI)は前年比横ばいで、予想の0.2%上昇を下回り、他の多くの国が高すぎるインフレと闘っているにもかかわらず、中国がデフレ圧力に直面している様子が浮き彫りになった。

日本は1998年から2013年までのデフレ期に消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)が平均0.2%下落した。不動産価格の低迷が銀行のバランスシートを直撃し、投資を冷え込ませたためだ。

確かに、中国で進行中の事態と日本の過去の経験には違いがある。その一つは、中国ではバランスシートのストレスと過大な債務が不動産セクターに限られており、問題を抱えた不動産開発業者や地方がその中心となっている点だ。

中国とは対照的に日本では、不動産価格の低迷によって全国の銀行に膨大な不良債権の山が出来て、広範な信用収縮を引き起こし、景気後退が長期化した。

国際通貨基金(IMF)アジア太平洋局長、クリシュナ・スリニバーサン氏は13日の会見で、中国について「今のところ需要の回復を背景に物価上昇が加速しており、デフレに陥るリスクは大きくない」と述べた。

だが、中国政府に対して、経営難に陥っている不動産開発業者の再建支援や地方政府への指導などを行い、問題が拡大しないように対策を講じるよう求めた。

中国の「日本化」の可能性についての質問には「全体としては、中国は適切な政策によって、低成長の長期化を避けることが可能だと考えている」と回答。「われわれが言いたいのは、不動産危機が大きな問題にならないように正面から対処することが重要だということだ」と述べた。

Reuters
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