中国の銀行で相次ぐ投資詐欺 顧客の預金で「勝手に商品購入」か=中国 四川

2023/10/27
更新: 2023/10/27

「銀行に預けていた定期預金が、預金者に全く知らされず、銀行職員の勝手な判断で、金融商品の購入に使われていた」。

そう聞いて、一瞬こちらが理解不能になるほどの非常識であるが、これは事実である。しかも中国の銀行では、これに類するケースがすでに多発しており、今後どれほど噴出するか分からない。

顧客の定期預金で「金融商品を購入?」

今月23日、四川省成都に住むある女性が「中国農業銀行に預けていた定期預金15万元(約308万円)が、銀行の職員によって、全く勝手に、何らかの商品購入に変えられていた」と訴える動画をSNSに投稿して注目されている。

つまり、この女性はお金を定期預金として銀行に預けたつもりだったが、担当した銀行職員が(個人か組織ぐるみかは不明だが)不正をして、その定期預金を勝手に使い、おそらく何らかの金融商品を「購入」していたことが発覚したのだ。女性は今、その預金を引き出せなくなっている。

(関連動画はこちら

動画のなかで被害者の女性は、中国農業銀行の「成都三洞橋支店」で手続きを担当した銀行員に対して、「私が何を購入したというのか。はっきり言いなさいよ!」と問い詰めて抗議した。当該の銀行員は、始終逃げ腰で女性を避けようとし、まともな回答をしなかった。女性は「おまえは強盗だ!」と叫び、「きっと私のお金で、何かの金融商品を買ったんだわ」と疑いを強めている。

銀行が「とんでもない詐欺」に走った

この件が明るみに出た後、中国メディアの取材に対して、同銀行のその職員は「私には説明する権限がない。上司に聞かないといけない」とだけ答えた。

このような不明瞭な回答をめぐり、ネット上では「まるで、銀行には責任がないかのような態度だ。腹が立つ」「たらいまわしにされるうちに、この件は収束するんだろうな」などと、銀行の無責任さに対する批判が殺到した。

このような銀行に対する批判だけでなく「これは特定の銀行の問題ではなく、個別の事例でもない。今の中国が抱える社会現象である」と訴えるコメントも非常に多い。

多くのネットユーザーは「自分や、身近にもそういう例がある」と告げて、自身や両親、友人などが「半分は強制的に、半分は騙しによって、銀行からそういう被害に遭っている」と明かしている。

同様の被害者は、中国にあふれている

こうした状況に対し、民衆の間には「銀行がこれでは、どうやって信用できるというのか」とする嘆きが広がっている。以下は、そのなかの、ごく一部の声である。

「数年前、私の母が銀行にお金を預けに行ったら『定期預金よりも利子がはるかに高いですよ』と勧められて、保険商品を買わされた。銀行は、農村出身で知識のない人たちを狙って騙している。まったく最低だ」

「私の父親の16万元(約330万円)も銀行員が勝手に使い、投資ファンドに回された。すでに半分ほど損したよ」

「うちも郵政銀行へ預金預けたら、いつの間にか保険購入になっていた。預金引き出す時には、1年間で7000元(約14万円)も損をしていた」

「私の母親も3万元(約60万円)の預金が勝手に保険購入に変えられていた。それをやった人間は、母の知り合いだったというから本当に腹が立つ。その結果、3年未満で引き出そうとすれば元金が損失を被ることになる。最悪だ」

「銀行員が、顧客の預金を勝手に使い、金融商品の購入に変えるのは本当に良くあることだよ。今後もどんどん被害が明るみに出るだろう。なぜそんなことをするかって? そりゃ金融商品を買わせれば、自分の懐に金が入るからだ」

「そういう例は、私の身近にたくさんあるよ。だから私は、恐ろしくて銀行になんて行けない」

「これは『電信詐欺』よりも悪質で、あからさまな詐欺行為だ。なのに、なぜ放置しておくのか?」

相次ぎ発覚する「銀行の不正」

今月にも、河南省周口市の胡さんが中国工商銀行に預けた10万元(約204万円)の定期預金が、同銀行の職員によって、勝手に「金融商品」の購入に変えられていたことが明るみになった。

この預金者が銀行に抗議したところ、あたかも銀行には責任がないかのように「従業員個人による行為だ」と答えた。しかも銀行側は「どれだけ苦情を申し立てても、最終的に、この事件は我が銀行で処理される。だから(抗議は)無駄な努力だ」と脅したという。

知らずして「購入させられた」その金融商品というのは、詐欺行為の一種である「ポンジ・スキーム」が疑われるもので、預金者へは今も返金されていない。

ポンジ・スキームのよくある手口は、こうだ。

言葉巧みに「出資してもらった資金を運用し、その利益を出資者に(配当金などとして)還元します」などと謳っておきながら、実際には資金運用を行わない。騙されて参加する後続の出資者から新たに集めたお金を以前からの出資者に「配当金」として渡すことで、あたかも資金運用によって利益が生まれたかのように偽り、出資者を増やしていく。

しかし、もちろん投資詐欺であるため、偽りの「配当金」は始めの少額だけである。騙された出資者は、必ず大損を被ることになる。

仮にも「銀行」の看板を掲げたものが、預金者の預金を全く無断で使い、あるいは言葉巧みに騙してこうした詐欺行為を行っているとすれば、その悪質さは相乗的で、計り知れない。

さらには「従業員個人による行為だ」といって責任逃れする銀行が存在すること自体、中国社会が抱える不条理の根深さを物語っているとみてよいだろう。

顧客のお金である預金の不正使用、預金の凍結など、中国の銀行は、もはや安心して預金できるようなところではない。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。
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