「フィリピン有事」の可能性が増大 比大統領が中共へ対抗姿勢

2023/11/26
更新: 2023/11/26

最近、中国共産党(中共)とフィリピンの関係に微妙な変化が見られる。中共の脅威に対応し、これまで中共との衝突に消極的であったフィリピンが、積極的な姿勢へと転換しているのだ。

フィリピンは東南アジアにおいて「友好国連携」を築き、中共に対抗するよう呼びかけ、同時に、米国と日本は、中共の国際秩序に挑戦する動きをさらに強力に抑制する姿勢を示している。日本の防衛関係者は、「台湾有事」に比べ、「フィリピン有事」の可能性が高まっていると指摘している。

中共は、南シナ海におけるフィリピンとの主権争いの地域で頻繁に海警船を派遣し、フィリピンの物資補給船の妨害を行った。今年2月には、中共の海警船がフィリピンの船に対して軍用レーザーライトを照射し、乗組員が「一時的に失明」する事件が発生し、また今年10月には、フィリピンの補給船との衝突事件も発生している。

これらの事件を受け、フィリピンはこれまで中共への非難を外交的なレベルで行っていたが、最近では南シナ海の緊張状況に対して、消極的な立場を改め、積極的な対応を始めている。

東南アジアの「友好国連携」を構築し、中共に対抗

11月19日、フィリピンのフェルディナンド・マルコス・ジュニア(ボンボン・マルコス)大統領は、APECサミット出席後、帰国途中にハワイを経由し、米軍の上層部および現地のフィリピンコミュニティのメンバーと会談した。同氏は、「状況は以前よりも深刻化している」と述べ、中共の軍事基地がフィリピンから約60海里(約111km)の距離に建設されていることを指摘した。

しかし、フィリピンは中共に屈することはないと強調している。同時に、危機に対処する新たな措置として、東南アジアに「友好国連携」を構築し、中共に対抗する計画を明らかにした。

マルコス氏はマレーシアやベトナムと行動規範を策定し、他の東南アジア諸国に広める計画を話し合っていると述べた。

近年、中共は南シナ海や台湾海峡で軍事的脅威を増しており、緊張が高まっている。

ASEAN諸国は2002年以来、中共との行動規範を協議しようとしてきたが、マルコス氏は中共に対する期待は結局は実らず、結果が出ていないと指摘している。同氏は中国を除外し、他のASEAN諸国と「友好国連携」を構築して、新たな規範を共同で策定し、中共の脅威に対抗する意向を示した。

マルコス氏はまた、フィリピンは同じ価値観を共有する国々、特に米国、豪州、日本、韓国などとの協力を強化し、地域の安定を維持することを模索していると述べている。

中共はフィリピンのこの新たな動きに、ただちに注目した。11月20日、中共外務省の報道官は、南シナ海は中国の「自己の領土」であり、他国には「口出しする権利はない」と主張した。

台湾近くでの合同実弾演習

最近、フィリピンは軍事面で新たな動きを見せている。11月6~17日まで、フィリピンは台湾に近いルソン島北端で陸海空軍の演習を行った。これには上陸作戦と合同実弾演習が含まれ、各軍種の共同作戦能力を強化する目的がある。また、15日には特別にメディアを招いてこの軍事演習を取材させた。

フィリピンのロメオ・ブロウナー参謀総長は、より大規模な演習計画が進行中であると述べており、この陸海空軍の合同演習はその一環であると強調した。彼はまた、「志を同じくするパートナーや同盟国」も演習に参加していると述べている。

注目すべき点は、この演習がフィリピンが主導する軍事演習であることだ。これまで多くの場合、米国が主導し、フィリピンは参加する役割に留まっていた。さらに、演習の場所は台湾に隣接し、台湾との間にバシー海峡が位置している。この地域は、中共による台湾侵攻を抑える重要な戦略の要塞とされている。

台湾の軍事評論家である亓楽義(チー・ラーイー)氏は大紀元に対し、第一列島線には中共軍が封鎖を突破するための2つの重要な出口があると述べた。第一列島線とは中国共産党が勢力圏を確保するため、海洋上に独自に設定した南北にのびる軍事的防衛ラインで、北は日本の南西諸島と台湾の間に位置する宮古海峡、南はフィリピン北部と台湾を結ぶバシー海峽が含まれる。

彼は「日本は宮古海峡を完全に守る能力があり、中共軍を阻止することができる。一方で、バシー海峽を守る軍事力は比較的弱い。現在の観察によると、中共は第一列島線の突破において、重点をバシー海峽に置いていることが明らかである」と述べている。

この弱点を補うために、フィリピンの軍事力は特に重要である。今年4月、フィリピンは米国に4つの新しい軍事基地の使用権を正式に提供した。このうち3つは台湾に近い北部に位置している。さらに、今年8月には、米国とフィリピンがフィリピン北部の台湾から200キロメートルのバタン諸島に新しい民間港を開発することについて話し合いを始めた。

フィリピンの学者によると、「台湾有事があった場合」、この港は後方支援、避難民の撤退、フィリピン領土の防衛に使用でき、その戦略的位置は非常に重要である。

フィリピンは中共を封じ込める第一列島線の重要な位置にある。しかし、現在の軍事力は相対的に不足しているため、中共はフィリピンに対する挑発を強めている。

『産経新聞』は22日、防衛関係者の見解を引用し、「『台湾有事』に比べて『フィリピン有事』の可能性が高まっている」と報じた。この関係者はフィリピンの危機に高い警戒を示し、一旦「フィリピン有事があった場合」には米軍の介入が避けられず、日本も巻き込まれる可能性があると述べた。

フィリピンと中共の緊張が高まる中、11月3日、日本の岸田首相はフィリピンを訪問し、巡視船と監視レーダーを提供することを約束した。岸田首相はフィリピン議会で演説を行い、力と法制によって海洋秩序を維持する必要性を強調した。この演説は前例のない歓迎を受け、約30分間の演説で23回の拍手を受けた。

米国、軍事的真空を避け同盟国と共に中共を包囲

最近、台湾海峡と比較して、中共はフィリピンとの衝突をエスカレートさせる意図が明らかになっている。特にロシアとウクライナの戦争やイスラエルとハマスの深刻な緊張の下、中共が南シナ海で武力を使って現状を変更することが良いタイミングだと考えている可能性がある。

この状況は国際社会に懸念を引き起こしている。米国はロシア・ウクライナとイスラエル・ハマス、二つの衝突に対応しており、そうした中で南シナ海での姿勢が注目されている。過去の歴史から見ると、米国が南シナ海での軍事力を減らしたり、力の真空が生じた際には、中共が隙間に乗じて、軍事的拡大を進めてきた。

1970年代のベトナム戦争後期に米国軍が撤退した後、中共は西沙諸島を占領した。また1980年代中頃、ソビエト連邦がベトナムでの駐留軍を減らした後、中共は南沙諸島を占領した。1992年に米国軍がフィリピンから撤退した後、中共はミスチーフ礁を占領した。

しかし、現在に至るまで、米国は南シナ海で中共に対抗するために同盟国と団結し、その立場は固く明確だ。同時に、米国の同盟国である日本も、中共に対抗する重要な役割を積極的に担っている。

今年4月、日本は「政府安全保障能力強化支援(OSA)」という新しい機関を設立し、軍事面での無償支援を同盟国や友好国に提供し始めた。これには資源や基盤施設の建設も含まれる。

OSA支援機関は日本の「政府開発援助(ODA)」に似ているが、その違いはODAが経済的に途上国の経済、教育、医療などを支援するのに対し、OSAは軍事的な面で友好国を支援することである。過去数十年にわたるODAの運用経験を活かし、OSAは設立半年でフィリピン、ベトナム、インドネシア、モンゴルなどの国々に船舶やレーダーなどの装備を迅速に提供し、中共からの周辺地域への脅威に対応している。

現在、米国と日本は手を取り合い、同盟国と共に南シナ海や東シナ海での中共の軍事的挑発を抑えることが両国にとって重要な課題となっている。米国と日本の首脳は最近APECサミットで会談を行い、岸田首相はバイデン大統領の招待を受け、来年春までに米国への国賓訪問を計画している。この動きは日米同盟を強化し、中共の拡大がもたらす国際秩序の不安定化を抑えることを意図している。

趙彬