人件費高騰による倒産が急増 中小企業の経営危機深まる

2025/02/04
更新: 2025/02/04

近年、人件費の高騰が要因となる倒産が急増し、企業経営に深刻な影響を与えている。特に、中小企業や労働集約型産業では、人手不足と賃金上昇のダブルパンチにより、事業継続が困難になるケースが相次いでいる。政府の賃上げ要請や最低賃金の引き上げが進む一方、価格転嫁が十分にできない中小企業にとっては経営環境が一層厳しさを増している。

倒産件数が13.1%増—特に建設業・飲食業で顕著

帝国データバンクが2月3日に発表した調査結果によれば、2024年の全国の倒産件数は9901件に達し、前年より13.1%増加した。特に、建設業や飲食業での倒産が目立つ。

建設業では、技能労働者の不足により受注が困難となり、工期遅延や採算悪化が発生。飲食業では、最低賃金の引き上げや物価高の影響を受け、アルバイト・パートの確保が難しくなっている。

人件費の上昇に加え、原材料費やエネルギーコストの高騰も経営を圧迫しており、中小企業の存続が危機に瀕している。

「人手不足」関連倒産は過去最多に

東京商工リサーチの調査では、2024年に「人手不足」が一因となった倒産は289件と、前年比81.7%増加し、過去最多を記録した。内訳を見ると、

  • 「求人難」が114件(前年比96.5%増)
  • 「人件費高騰」が104件(同76.2%増)
  • 「従業員退職」が71件(同69.0%増)

と、それぞれの要因で倒産件数が大幅に増加した。人材確保ができないまま廃業に追い込まれる企業が増えていることが分かる。

産業別に見ると、労働集約型産業での倒産増加が顕著である。

  • サービス業他:88件(前年比60.0%増)
  • 建設業:75件(前年比158.6%増)
  • 運輸業:69件(前年比76.9%増)

さらに、帝国データバンクの調査によると、昨年12月時点で1年以内に倒産する確率の高い企業は全国で12万6960社に上った。特に、人件費の上昇が直接的な負担となる中小企業や薄利多売のビジネスモデルに依存する業界は、倒産リスクが高まっている。

現行の解決策が機能しない

現在の「人手不足対策」とされる施策は、小・零細企業には適応しにくい。

 賃上げによる人材確保 → 資金力がない

最低賃金の引き上げや大手の賃上げが進む中、小規模企業は同じ条件を提示できない。
結果として、より待遇の良い企業に人材が流れる。

業務効率化(DX導入)→ 初期投資の負担が大きい

生産性向上のためのデジタル技術(DX)導入が推奨されているが、小企業ではコスト負担が大きく、IT人材も不足している。

小・零細企業向けの「現実的な解決策」

「待遇」ではなく「働きやすさ」で勝負

  • 完全週休2日制の導入
  • 柔軟な勤務時間(時短・副業解禁・働きやすい制度づくり)
  • 資格取得支援(従業員のスキル向上で定着率UP)

事業の縮小・効率化を検討

  • すべての業務を抱え込まず、一部業務のアウトソーシングを検討。
  • 利益率の低いサービスを縮小し、高単価の仕事にシフト。

小規模事業者向けの補助金・助成金をフル活用

政府や自治体が提供する「小規模事業者持続化補助金」「人材確保支援助成金」などを活用し、人材確保や生産性向上の資金に充てる。

清川茜
エポックタイムズ記者。経済、金融と社会問題について執筆している。大学では日本語と経営学を専攻。