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米価高騰止まらず 備蓄米放出も効果薄 流通と制度の壁

2025/04/30
更新: 2025/04/30

全国のスーパーで販売される米(5キロ)の平均価格は、2025年4月中旬時点で4220円に達し、16週連続で過去最高値を更新した。政府は価格抑制策として、これまでに備蓄米31万トン超を市場に放出してきたが、価格高騰に歯止めはかかっていない。

備蓄米 消費現場に届かず

農水省によると、3月に落札された約21万トンのうち、4月13日までに小売店や外食産業に届いたのはわずか1.9%の4179トンだった。4月24日時点でJA全農が出荷済みの備蓄米も4万7031トンと、落札した全体の24%にとどまった。

遅れの原因は、多段階の流通構造だ。備蓄米はJAなどの集荷業者から卸売業者、小売業者を経て店頭に並ぶが、この過程で2~3週間かかる。JA全農は「国への代金支払い、倉庫選定、輸送手配に事務日数がかかる」と説明するが、小売業者からは「注文から納品まで遅すぎる」との不満が噴出。東京都内の米穀店経営者は「品薄感が続き、価格を上げざるを得ない」と語る。

制度設計の壁 効果の限界

備蓄米放出が期待ほどの効果を上げない背景には、制度の硬直性がある。1、2回目の放出では、年間玄米仕入れ量5千トン以上の業者に入札資格を限定した。結果、9割以上の放出米がJAに落札され、競争原理が働かず「価格抑制効果が限定的」との批判も上がっている。

さらに、備蓄米は「買い戻し条件付き売渡し」が前提。落札業者は同量の米を将来政府に売却する必要があり、市場の米が再び吸収される懸念が強い。これが米価高止まりの一因とも指摘される。

入札方式にも課題がある。農水省は非公表の最低販売価格を設定し、最も高い価格を提示した業者から落札する仕組みを採用。この方式は価格競争を阻害し、逆に市場価格を押し上げる可能性がある。

需給ギャップ

一方で、2024年の米生産量は前年比18万トン増の約680万トンとなった。しかし、大手集荷業者による集荷量は逆に21万トン減少しており、実際に市場へ供給された米の量は減っている。この「数字のねじれ」が、価格高騰を後押しする需給ギャップを生んでいる。農水省の試算によれば、2025年春の米在庫は前年比10%減の約150万トンに落ち込む見通しだ。

政府は改善に向けた対策として、4月23~25日に実施した3回目の放出から、卸業者間での取引を可能にするルール改正を行った。また、2025年5月からは中小業者も入札に参加できるよう制度見直しを検討している。

今回の3回目放出では、平均落札価格が60キロ当たり2万302円と、前回より420円下落した。ただし、流通構造の簡素化や入札制度の透明性向上にはまだ踏み込まれておらず、抜本的な解決策には程遠い。

流通の簡素化、入札制度の透明性向上、中小業者の参加促進など、構造改革が急務だ。米価の安定には、短期的な対症療法ではなく、市場全体を見据えた制度の見直しが不可欠であると考えられる。

清川茜
エポックタイムズ記者。経済、金融と社会問題について執筆している。大学では日本語と経営学を専攻。