5月8日の参議院外交防衛委員会で、外国人による日本国内での土地取得が進む中、国民民主党の榛葉賀津也幹事長は、「現状把握は当然だ」と述べ、政府に包括的な調査と規制の検討を求めた。政府側は、一部地域の調査にとどまり、全体像は把握していないと説明した。
これに対し、経済安全保障を担当する友納理緒政務官は、「(重要土地等調査法)を担務とする政務官として、その対象範囲内での現状把握や調査は行った」と説明。一方で、同法が対象としているのは、安全保障上の重要施設周辺に限られているため、「(重要土地)以外の土地については、現時点で答えを差し控える」と述べた。
榛葉氏は「これじゃだめだ。どう見てもだめだ。自分の国は自分で守る。日本の土地は、日本人が守らなければだめだと思う」と批判し、さらに、「農林水産省は、農地を、林野庁は、森林の売買を把握し、省庁横断的に情報を管理するために経済安全保障担当の役所があるのではないか。大臣、副大臣、政務官までいるのに、外国人による土地保有の実態をなぜ把握していないのか」と政府の姿勢をただした。
内閣府の岸川審議官は、「重要土地等調査法に基づく区域内については、林野庁や農水省から農地に関する情報の提供を受けており、許可・届け出に基づいて、国籍が記載された情報も受領している」とした上で、「他の土地取引においては、国籍などが記載されていないので、私どもは承知していない」と説明した。
榛葉氏は「まずは現状を把握すべきだ」と重ねて主張。これに対し、友納氏は「重要土地等調査法には施行から5年後に見直しを行う規定がある」と説明し、「今後は法の施行状況や情勢を見極めた上で、さらなる対応の在り方を検討していきたい」と述べた。
現在、日本では、外国人による土地取得が原則として自由に認められており、所有権の取得、売買、相続に特段の制限はない。しかし近年、北海道では、中国資本による別荘地や水源地、自衛隊基地周辺の取得が進み、長崎県・対馬では韓国資本による土地買収も確認されていた。こうした動きが、安全保障上の懸念として注目されていた。
政府は2021年に「重要土地等調査法」を成立させ、自衛隊基地や原子力施設、国境離島の周辺1キロ圏内を「注視区域」などに指定し、土地利用の実態を調査・監視。不適切と判断されれば、勧告や命令を行うことができる。ただし、この法律は、土地の取得自体を規制するものではなく、効果は限定的との指摘もあった。
国民民主党と日本維新の会は2024年、外国人による土地取得・管理に一定の制限を設ける「外国人土地取得規制法案」を共同で衆議院に提出した。しかし、政府はこの法案への評価や対応方針を明示しておらず、国会での審議も進展していなかった。
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