日本製鉄によるアメリカ大手鉄鋼メーカーUSスチールの買収計画をめぐり、同社幹部が来週、トランプ政権の高官と会談する予定であると複数の米メディアが報じている。買収計画の承認を目指す日本製鉄は、米政府の審査プロセスが進む中、直接交渉の場を設けることで理解を得たい考えだ。
USスチール買収計画は2023年12月、日本製鉄とUSスチールが約149億ドル(約2兆2000億円)で合意し、USスチールが日本製鉄の完全子会社となる内容で発表された。しかし、米国内では「国民的企業」であるUSスチールの外国資本による買収に対して、労働組合や超党派の議員、ホワイトハウスから懸念の声が相次いだ。こうした中、2025年1月、バイデン前大統領は国家安全保障上の懸念を理由に大統領令で買収を禁止した。
その後、日本製鉄とUSスチールは「違法な決定」として米政府を提訴し、再審査を求めてきた。2025年4月、トランプ大統領は対米外国投資委員会(CFIUS)に対し、買収計画の再審査を指示。ホワイトハウスは「さらなる対応が必要か判断するため」と説明し、CFIUSに45日以内の勧告提出を求めている。
日本製鉄は声明で「客観的かつ事実に基づく審査が行われれば、米国経済と国家安全保障の強化につながる」と強調。USスチールも「雇用の維持や創出、米国製造業の未来に資する」として再審査を歓迎している。
一方で、米国内の労働組合や一部議員は依然として買収に反対しており、審査の行方が注目されている。買収計画の期限は2025年6月中旬までとされ、両社はその間に米政府の承認を得る必要がある。
今回の幹部訪米については、Semaforなど複数の米メディアが報じており、トランプ政権の高官と直接会談し、投資拡大などの条件を提示する可能性も指摘されている。今後の審査結果が、米国鉄鋼業界の再編や日米経済関係に大きな影響を及ぼす見通しだ。
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