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激変する中国 いまなお弾圧され続ける遺族の声、届かぬ正義…

中国・四川大地震から17年 「あの日、手抜き工事校舎が学生たちを殺した」

2025/05/14
更新: 2025/05/20

もし、あなたの子どもが学校の校舎ごと押し潰され、その原因が「手抜き工事」だったとしたら。

しかも、政府はその責任を認めず、補償の約束すら果たさない。毎年の命日に、花を手向けることさえ警察に阻まれ、静かに祈ることすら許されない。そんな現実が、いまの中国にはあった。

四川大地震から17年。子を失った親たちは、約束を破られ、声を封じられ、きょうも深い怒りと悲しみに包まれていた。

四川大地震から17年。写真は犠牲になった我が子の手(下)を握る遺族の手(中国のSNSより)

「四川大地震」 

2008年5月12日、四川省で6万9千人以上(中共発表)の死者を出した巨大地震(M8.0)が発生した。

震災当時、付近の民家は、大きな被害を受けなかったにもかかわらず、多くの小学校や中学校の校舎が1階から順に、パンケーキ現象を起こして全壊し、大勢の児童や生徒が、一瞬にして犠牲となった。

パンケーキ現象とは建物などがまるでパンケーキのように層が重なって崩れ落ちる現象だ。

数年前にできたばかりの新しい学校がなぜ倒壊したのか?

地震以降、政府は「天災だった」として人的責任を曖昧にしてきたが、実際には地元教育局や施工業者の間で不正入札やコンクリートにほとんど鉄筋が入っていない「おから工事(豆腐渣工程)」が横行していたことが複数の証言や内部告発で明らかになった。

2008年に発生した四川大地震で、校舎の倒壊で亡くなった子どもたちの遺影 (Paula Bronstein/Getty Images)

震災直後、学校の倒壊による児童の大量死は社会に衝撃を与え、中国メディアもこの問題を報じていたが、批判の拡大を恐れる当局の意向によって、報道規制された。

それでも、原因解明や手抜き工事を許した地元政府の責任追及を求める声は、この16年、止むことはなかった。

だが、遺族による責任追及は妨害され続け、毎年5月12日に行われる追悼活動も現地での集会も当局によって抑え込まれた。

今年の清明節(日本の彼岸にあたる)にも、遺族たちは、倒壊した校舎跡に集まり追悼を行おうとしたが、現地当局は封鎖線を設け、警官隊が祭壇設置や紙の焼香を阻止した。「あの子たちに線香一本あげることすら許されないのか」と叫ぶ母親の姿がSNSに投稿され、大きな反響を呼んだ。

また、かつて当局が地震で命を落とした学生の遺族に約束した遺族に対する補償は、現在に至るまで果たされず、「担当者が変わったから無効」と突き返されるのだという。



中国共産党政権が封印する「追悼と真実」 六四天安門事件と四川大地震の叫び

六四天安門事件と四川大地震の被害者遺族は、今なお追悼と真実の声を封じられている。

 

 

血の月

今年5月12日、四川大地震からちょうど17年目の夜、四川省成都市で「ブラッドムーン(血の月)」が観測され、血のように赤い満月、17年前の惨劇と重なるようにして空に現れ、胸騒ぎを覚える市民も少なくなかった。

(2025年5月12日、四川省成都市で観測されたブラッドムーン)

手抜き工事で亡くなった子供たちの無念、いまなお弾圧され続ける遺族の声、届かぬ正義…この日、血の月は、忘れ去られた魂の叫びを照らすかのように、静かに天に浮かんでいた。

大地震から17年。この国は何も変わっていない。変わったのは、あの日から笑えなくなった遺族の心だけだ。

(2025年5月12日、四川省成都市で観測されたブラッドムーン)

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!