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現代中国を覆う「飛び降り自殺リレー」 対策強化の裏で広がる絶望「仕事も金も未来もない」

2025/05/26
更新: 2025/05/26

生存環境が悪化の一途をたどる中国では、ショッピングモールや河川の橋から飛び降り自殺を図る事件が絶えない。

こうした事態への対策として、“自殺名所”と化した一部の橋では「監視員」が常駐するようになり、橋全体に飛び降り防止用のネットやバリケードが設置され、橋の下には「救助要員」が常駐し、24時間体制で待機している。さらに、橋には「飛び降り禁止、違反者には罰金1,000元(約2万円)」との看板まで掲げられた。

 

画像(左)は飛び降りが多発するビルの窓に貼られた紙、「命を大事に、飛び降りを禁じる。違反した場合、男であればネットの閲覧記録を公開する、女であればチャット記録を公開する」と書かれている。画像(右)は飛び降り多発する橋に貼られた紙、「違反すれば1000元(約2万円)罰金するぞ」と書かれている。(スクリーンショット)

 

自殺が発生したショッピングモールでは階ごとに自殺防止のための「監視員」が常駐するようになり、なかには吹き抜け全体を覆う巨大なネットが張り巡らされているところもある。

しかし、こうした表面的な対策にもかかわらず、自殺の連鎖は止まらない。

自殺だけでなく、中国各地では近年、様々な凶悪事件、一家惨殺事件、無差別殺人事件、社会報復事件も頻発し、この由々しき事態に、SNS上では、「なぜ中国はこんな国になってしまったのか」、「共産党が統治する中国はもはや人間が住む場所ではなく地獄と化した」といった嘆きの声も少なくない。

 



【動画あり】自殺名所の橋に「監視員」や「救助隊」が常時待機=中国

自殺名所の橋に「監視員」や「救助隊」が常時待機

 

「飛び降りリレー」の橋から

なかでも、昨年から「毎日のように飛び込み自殺が発生している」とネットでも有名なのは山西省の省都、太原市にある橋「迎澤大橋」で、「飛び降りリレー」と揶揄されるほどに異常な状況が続き、1年前は15人と立て続けに自殺者が出たことで、中国SNSのトレンド入りをしており、今月に入ってからも多くの橋からの飛び降り自殺動画がネットで拡散され注目を集めた。

地元市民によると「この橋では今月だけでも少なくとも8人が立て続けに飛び降りている」という。しかし、関連動画はことごとくネット上で検閲・削除に遭っており、文字だけ(隠語など)の投稿といった厳しい検閲の目を運よくすり抜けた情報しかネットに残っていない状態だ。

現地からも「自殺関連の情報を発信できない(すぐに消される)だけであって、実際、自殺件数は昨年より増えている」と指摘した。

大紀元の取材に対し、現地タクシー運転手は、「飛び降りる人たちの多くは、ここへ出稼ぎに来た地方出身者だ」と明かす。「職を失い、カネがなく、戻る場所もなくて、生活が行き詰まった末の選択だった」という。中には、元同僚からわずか48元(約1,000円)を借りた数日後に、橋から身を投げたという事例もあった。

 

橋から飛び降り自殺をしようとする男性(ピンク色のシャツ)と彼を止める市民たち。(中国のSNSより)

 

専門家は「現在の失業問題は1990年代の“下崗”(国有企業の大量解雇)時代とは根本的に違う」と指摘する。当時は借金が少なく再起も可能だったが、現代は住宅ローンなど高負債を抱えたまま職を失えば即座に生活が破綻し、中国SNS上には「仕事は見つからない」「生きていけない」といった悲痛な声があふれ、いまや防護ネットが飛ぶように売れ、橋には常時監視員が並び立ち、24時間体制で“飛び降り”に備える状況──これが現代中国の自殺対策の実態である。

飛び降りを試みた市民の背後には、誰にも届かなかった救済の声がある。だが、政府が目を向けるのは“対策”ばかりで、なぜ人々が死を選ぶのか、その根本的な問いは封殺されたままだった。

 

橋から飛び降りた市民が残した遺品の数々(中国のSNSより)

 

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!