テスラ(Tesla)の最高経営責任者(CEO)であるイーロン・マスク氏が、自身の経営専念を強調したことを受け、同社株価が反発した。5月27日、テスラ株は約5%上昇し、直近の急落から持ち直す動きを見せた。
マスク氏は週末、自身が運営するSNS「X(旧Twitter)」上で、「再び週7日、1日24時間体制で働き、会議室やサーバールーム、工場で寝泊まりする生活に戻った」と投稿。さらに、「XやxAI、テスラ、そして来週の『スターシップ』発射に超集中する必要がある。重要な技術の投入を控えている」と述べ、経営の最前線に立つ姿勢を明確にした。
また、マスク氏は「今週発生したXの稼働停止問題が示すように、運営面で大きな改善が必要だ。バックアップシステムが本来の役割を果たせなかった」とも言及。実際、週末にはXで大規模な障害が発生し、数千人のユーザーが一時利用できなくなった。Xは2022年のマスク氏による買収以降、度重なるシステム障害に見舞われている。
マスク氏は今年、アメリカ大統領ドナルド・トランプ氏の政権復帰後に新設された「政府効率化省(DOGE)」の主導も担い、連邦機関の改革や効率化に尽力してきた。トランプ氏の2024年大統領選挙終盤では、全面的な支援も行っていた。しかし、政府効率化省の活動や連邦職員の大規模な削減に伴う報復的な破壊行為が発生し、マスク氏が企業運営に割く時間が減少したことで、テスラの業績と株価はこの間苦戦を強いられていた。
欧州市場でも厳しい状況が続く。欧州自動車工業会(ACEA)が発表したデータによれば、2025年4月のテスラ車の欧州販売台数は7261台と、前年同月比で49%減少。市場シェアも2024年4月の1.3%から0.7%へと半減した。年初から欧州での販売は減少傾向が続いており、同地域の電気自動車全体の販売が増加する中、テスラの苦戦が際立っている。
こうした状況を受け、マスク氏は「政治活動からは身を引き、企業経営を最優先する」と明言。4月のテスラ決算説明会でも「政府効率化省の運営に費やす時間を大幅に減らす」と表明していた。
マスク氏の発言は、スペースX(SpaceX)による「スターシップ」ロケットの打ち上げを控えたタイミングで発せられた。1月と3月には2基のスターシップが爆発事故を起こしており、今回の打ち上げにかかる期待とプレッシャーは大きい。
テスラ株価の反発は、マスク氏の経営復帰への期待感の表れだが、欧州市場での販売不振やXの運営課題など、同氏が直面する課題は山積している。今後、マスク氏がどこまで経営に専念し、テスラや関連企業の立て直しを図れるかが注目される。
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