5月26日、中国河南省周口市の高校で、教師・楊徳才(よう・とくさい)氏が受け持ちの高3男子生徒に刺殺される事件が発生した。
生徒は、授業中にスマートフォンを没収されたことを逆恨みし、昼休みに教務室で休んでいた楊教師の頸動脈を刃物で突き刺した。楊氏は自衛のため反撃したが、出血多量で死亡。加害生徒も重傷を負い、現在も病院で治療中とみられる。
事件直後から、現地公安当局や学校側は一切の発表を控え、ネット上の報道も数時間以内に一斉に削除された。エポックタイムズ記者が複数の関係者に直接取材したが、地元政府への問い合わせ電話もつながらず、徹底した情報封鎖が敷かれている実態が判明した。
事件を受けた中国のネット世論は二極化した。教師への暴力を「反抗の象徴」と美化し、「少年英雄」とまで称える声がある一方で、「スマホ1つで人を殺すとは異常」と非難する意見も多い。
加害少年を英雄視する背景には、学校現場で教師が中国共産党(中共)体制に守られた「強者」とされ、生徒や保護者が声を上げにくい不平等な構造がある。
エポックタイムズの取材に対し、元・北京首都師範大学副教授の李元華氏は、本事件の根底には、中国社会に蔓延する「抑圧と爆発の構造」があると指摘し、中共体制下では、対話や解決の仕組みがなく、「忍耐か暴発か」の二択しか残されていないのだという。
ネット上でも「社会が圧力鍋のようになっており、爆発は時間の問題だった」とするネット投稿には、多くの共感が集まった。
李氏はさらに、中国の教育制度が「点数至上主義」であり、人格形成や道徳教育が欠落している点を厳しく批判した。
楊教師が勤めていた公立高校(太康第一高級中学)は、1万5千人以上の生徒を抱える河南省屈指の進学校で、監督官庁である教育局も事件に沈黙したままだ。情報封鎖によって事件の教訓は共有されず、同様の悲劇がまた繰り返される恐れがある。
エポックタイムズは今後もこの問題を追い続け、封殺される現実に光を当て続けていく。
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