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年金改革法案 衆院可決で参院に送付 

2025/05/30
更新: 2025/05/30

5月30日、衆議院本会議において、パートやアルバイトなどの短時間労働者を厚生年金に加入させやすくする年金制度改革関連法案が、自民党、公明党、立憲民主党の賛成多数で可決された。同日午後には参議院に緊急上程され、今国会会期末である6月22日までの成立が見込まれている。

短時間労働者への厚生年金適用を拡大

今回の法案では、現在「従業員501人以上の企業に勤め、週20時間以上働き、月収8.8万円以上(年収約106万円)」という厚生年金の加入条件を緩和し、従業員数50人以上の企業にまで適用範囲を拡大する方針が盛り込まれた。適用は段階的に実施される予定である。

また、いわゆる「年収106万円の壁(短時間労働者が社会保険加入を避けるために収入を抑える傾向)」を撤廃し、より多くの短時間労働者が厚生年金に加入しやすくなる環境を整える。これにより、非正規雇用者の年金受給額の底上げが期待されている。

基礎年金の底上げも付則に明記

法案の付則では、2029年に実施される公的年金の財政検証において、基礎年金(国民年金)の給付水準が下がる見込みとなった場合、厚生年金の積立金を活用して給付額を底上げする措置を講じることが明記された。

この方針は、特に低所得者や年金受給額が少ない高齢者への支援強化を意図している。ただし、積立金を用いることで厚生年金の給付水準が一時的に低下する可能性があるため、段階的な実施や補填措置など、影響緩和策の検討も合わせて進められる見通しだ。

背景と今後の課題

本法案は、少子高齢化の進行による年金財政の逼迫と、非正規雇用者の増加による年金格差の是正を目的としている。特に、女性や若年層を中心とした短時間労働者の社会保険加入を促す点で、長期的な年金制度の安定に寄与すると期待されている。

一方で、企業にとっては保険料負担が増すことから、中小企業を中心に懸念の声も上がっている。また、厚生年金の積立金を国民年金に充てる案については、自民党内や一部の専門家から「将来的な財政負担の増大を招く」として慎重論も出ている。

SNSでは、シニア層からは「自分たちの年金が減らされるのではないか」との不満、若年層からは「将来、本当に年金を受け取れるのか」といった不安の声が目立つ。実際の影響は、今後の参院審議や制度施行後の運用を通じて明らかになるだろう。

法案は参議院での審議を経て、6月22日までに成立する見通しである。今後の焦点は、付則に盛り込まれた国民年金の底上げ措置の具体化や、厚生年金の給付水準に対する影響をどう緩和するかに移る。年金制度の持続可能性と世代間の公平性をどう両立させるかが、引き続き重要な論点となる。

清川茜
エポックタイムズ記者。経済、金融と社会問題について執筆している。大学では日本語と経営学を専攻。