旅先でのちょっとした行動が、思わぬ代償を生むことがある。
シンガポールのあるホテルで、中国人観光客が部屋にドリアンを持ち込み食べたところ、約2万円(200シンガポールドル)もの清掃費を請求される騒動が起きた。
ホテル側の説明によると、ドリアン特有の強烈な匂いが部屋に染み付き、専門の清掃業者による対応が必要となり、その間は客室を貸し出せない状況になったという。女性は「禁止とは知らなかった」と釈明しつつも、罰金を支払って謝罪した。
この出来事はSNSでも話題となり「シンガポールやマレーシアではドリアン禁止は常識」「観光客なら事前に注意されているはず」とのコメントが多数寄せられた。
「知らなかった」では済まされないアジア圏の“果物マナー”
実は筆者も大好き、東南アジア諸国では広く愛される果物―ドリアン。果肉の濃厚な味わいと強烈な匂いで知られる。しかし、その刺激的な香りゆえに、ホテルや空港、公共交通機関などでの持ち込みや飲食を明確に禁止しているケースが多い。
実際、2024年にもフィリピンのホテルで同様に中国人観光客がドリアンを食べ、罰金を科された事例がある。旅慣れた旅行者にとっては周知のルールであり、「知らなかった」では通用しないのが現実だ。
では、日本ではどうだろうか? 実は多くの日本のホテルには「ドリアン禁止」の明文化されたルールは少ないものの、「納豆やくさや、キムチなど強い匂いの食品を客室に持ち込まないでください」といった注意書きを見ることはある。
日本のホテル関係者によれば、「明文化はしていないが、持ち込みによる苦情や清掃トラブルは実際に起きている」とのこと。旅先での“においトラブル”は決して他国の話ではないのだ。
「郷に入っては郷に従え」──旅先での文化やルールに無関心でいると、思わぬ出費や信用の損失を招くことになり、グルメも観光も、相手の文化を尊重してこそ、真の旅の思い出となるのだ。

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