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中共幹部と子女を輩出 ハーバードは「海外の党校」に?

2025/06/02
更新: 2025/06/02

ハーバード大学とトランプ政権の対立が続くなか、大学と中国共産党(中共)との関係が米政府の是正対象として注目を集めている。歴史的に、ハーバード大学は多数の中国共産党(中共)高官やその子女を輩出しており、かつて中共系メディアが「海外の党校」と称したこともある。

米国土安全保障省のノーム長官は5月22日、ハーバード大学の「学生・交流訪問者プログラム(SEVP)」の認定を取り消すよう命じた。同省は、ハーバードの幹部が中共との協力に関与しており、ウイグル人への人権侵害に関与する準軍事組織の関係者を受け入れ、訓練していたことを指摘。さらに、中共の国防産業と関係を持つ人物と軍事応用可能なロボット研究などで協力していたと非難した。

これを受けてハーバード大学は連邦裁判所に提訴し、外国人学生の受け入れ資格の維持を求めている。裁判所は停止措置に差し止め命令を出している。

ウォール・ストリート・ジャーナルは6月1日付で、ハーバード大学が過去数十年にわたり、中共幹部やその子弟を多く受け入れてきたと報じた。中には、後に中共政治局に昇進した人物もおり、一部の専門家は同大学を「中共幹部養成機関(党校)」と表現している。

たとえば、中共の機関紙である解放日報傘下の上観新聞は2014年、「中共の海外党校ランキングで、ハーバード大学ケネディ行政大学院は間違いなく首位に値する」と評していた。

かつて国家副主席、中共中央政治局委員を務めた李源潮は、2002年にハーバード・ケネディスクールの中期研修に参加。トランプ1期目政権下での米中貿易交渉の代表だった劉鶴元副首相も、1995年にハーバード大学で公共管理の修士号を取得している。さらに、現政治局委員の李鴻忠も1999年に同校の短期プログラムに参加した。

ケネディスクールは1980年代にはすでに中国人学生を受け入れており、1990年代には中共高官向けの中期研修プログラムも制度化。1998年に始まったあるプログラムでは、毎年約20人の高官に奨学金と幹部研修を提供していた。

2000年代には「中国発展リーダーシッププログラム」がスタート。これはハーバードと清華大学の共催で、中共の中央および地方政府高官に対して1週間の集中研修を行うもので、ハーバード側は「中国の継続的な改革に向けた課題に備えることを目的」としている。

また、複数の中共幹部の子弟も同大学に在籍していた。たとえば、習近平の娘・習明澤は2010年代初頭に偽名で入学。父親が中共副主席から中共党首へと昇格する間で同校に通っていたとされる。

そのほか、中共の元党首、江沢民の孫・江志成や、薄熙来元政治局委員の息子・薄瓜瓜もハーバード大学に在籍していた。

ハーバード大学は、これら報道に対するコメント要請に応じていない。

5月19日には、米下院の対中共特別委員会と教育・労働委員会、下院共和党会議議長のエリス・ステファニク氏がハーバード大学に書簡を送り、人権侵害が疑われる外国勢力との関係についての透明性と説明責任を求めた。

書簡では以下のような懸念が指摘されている

  • アメリカが制裁対象としている準軍事組織「新疆生産建設兵団」への繰り返しの研修実施
  • 米国防総省資金による研究を、中共軍関係大学(清華大学、浙江大学、華中科技大学)と共同で実施
  • イラン政府が資金提供する研究者との協力関係
  • 中共による臓器摘出疑惑が深まるなか、中国側との臓器移植研究を継続
  • 下院教育・労働委員会のティム・ウォルバーグ委員長は、「アメリカ国内の大学は、中共による影響力の拡大、人権弾圧、アメリカの国家安全保障の侵害に手を貸してはならない」と強く非難した。

さらに、ハーバード大学と中共との関係は、同大学の著名な学者たちが中国にアクセスする上で有利に働いていたと指摘されている。ケネディスクールの元学長グレアム・アリソン氏は、過去1年の間に習近平や王毅外相らと面会し、米中関係について意見交換を行っていたという。

一方で、ハーバード大学の著名なナノ科学者であるチャールズ・リーバー教授は、2021年12月、連邦陪審によって虚偽申告および脱税など6件の重罪で有罪判決を受け、2023年4月に実刑判決が下された。

米司法当局は、リーバー氏が「中共の千人計画」(中共が2008年に開始した海外の高度人材を招致・帰国させる国家主導の人材招致プロジェクト)に関与し、その関係を隠すために虚偽の説明や申告を行ったと発表。リーバー氏はこのほど、北京の清華大学の客員教授に採用され、今年4月28日に任命式が行われた。リーバー氏はその後、深センで新たな研究の旅を始める準備ができており、できるだけ早く仕事に取り掛かりたいと語ったという。

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