李在明氏が韓国大統領に就任した。アメリカは選挙の公正さを評価しつつ、中国共産党(中共)の干渉に警戒感を示している。新政権の外交・経済・安全保障政策に注目が集まっている。
韓国大統領選挙において、共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)候補が勝利を収め、6月4日に第21代大統領として就任した。今回の選挙では1997年以来となる高い投票率を記録し、李氏は49.42%の得票率で保守派の金文洙(キム・ムンス)候補(41.15%)を上回った。この結果、共に民主党は国会と行政の双方で主導権を確保し、韓国政治は新たな局面を迎えた。
アメリカ 選挙の公正さを評価しつつ中共の影響力に警戒
李在明氏の勝利を受け、米ホワイトハウス高官は「選挙は自由かつ公正であった」と評価する一方で、「中共が世界の民主国家に及ぼす影響力」に対して強い懸念を示した。ホワイトハウスの書面声明では「米韓同盟は揺るぎない」と強調しながらも、「中共による干渉に反対する」と明言した。声明は韓国大統領選への中共の関与を具体的に示してはいないが、アメリカは民主主義体制への外部からの影響に強い警戒感を抱いている。
ルビオ国務長官「米韓同盟は揺るぎない」
米国務長官のマルコ・ルビオ氏は祝賀声明を発表し、「米韓同盟は共同防衛条約と共有する価値観、深い経済関係に支えられており、揺るぎない」と強調した。さらに、同盟の現代化を推進し、経済・安全保障における新たな課題に対応する方針を示した。また、日米韓三国による協力強化によって地域の安定と経済的回復力を高める構想も明らかにした。
アメリカ右派から中共干渉への強い警告
アメリカ国内の保守系言論人や政治活動家は、李在明氏の当選に対して中共の影響を疑問視する見解を相次いで発信した。トランプ大統領の支持者であるローラ・ルーマー氏はSNS上で「韓国は共産党に掌握された」と主張した。
元国家安全保障顧問のマイク・フリン氏も「選挙には不正の兆候がある」と述べ、「中共に有利な結果となった」と指摘した。トランプ氏の元盟友スティーブ・バノン氏も番組内で中共の関与の可能性を議論し、こうした発言はアメリカ内で李政権の対中姿勢に対する関心を高めている。
李在明氏 就任式で「軍政の影を断つ」と明言
李在明氏は6月4日午前、国会で簡素な形式による就任式を実施し、「今回の補欠選挙は尹錫悦(ユン・ソンニョル)前政権の戒厳令に対する審判である」と述べた。また、「反乱を徹底的に排除し、二度と銃口を国民に向ける事態を容認しない」と断言し、民主主義体制を堅持する意志を明確にした。
経済改革と社会統合を最優先に位置づけ
経済成長の鈍化と社会分断が進行する状況において、李在明氏は「経済改革の即時実行」を最重要課題として掲げた。就任直後には、年度内で2度目となる補正予算編成に着手し、地域経済の活性化を目的とした消費券の発行や、子育て世帯・若者・高齢者に対する補助金支給などの政策を打ち出した。
こうした施策によって、中低所得層や小規模事業者の支援を図る方針である。具体的な政策の詳細には未確定な要素も残るが、「国民が団結すれば困難を乗り越えられる」と訴えた。
国防に即座に対応 北朝鮮との対話再開を模索
李氏は就任直後、韓国軍の参謀総長と電話で協議し、防衛体制の報告を受けた。三軍統帥の立場から安全保障を重視する姿勢を示しつつ、「戦わずして勝つことが最も優れた安全保障の形だ」と述べ、北朝鮮との対話再開を志向する姿勢を明らかにした。この発言は、朝鮮半島の緊張緩和と平和的解決を目指す明確なメッセージである。
対中・対米・対日外交の調整に注目
外交政策では、李氏は中国を「韓国にとって重要な貿易相手国」と位置づけ、対中関係においては穏健な立場を保ってきた。一方、台湾海峡などの敏感な地域に関しては強硬姿勢を回避している。ただし、選挙期間中には国内の反中感情や政治的空気に応じて対中・対日政策のトーンを調整する動きも見られた。
また、李氏は「米韓同盟を韓国外交の柱」と位置づけ、日本との戦略的関係の維持も明言している。就任直後には、アメリカとの間で未解決のまま残された貿易交渉(アメリカによる韓国車・鉄鋼への関税問題)への対応が急務となっており、交渉期間の延長を要請する意向を示した。米側の対応については不透明な情勢である。
国会と行政の「絶対多数」 権力集中への懸念も残る
今回の選挙により、共に民主党は国会と行政の双方で「絶対多数」の立場を得た。この体制により、法案審議や予算成立の迅速化が見込まれ、前政権時に見られた政府と国会の対立による機能不全を回避できる可能性が高い。
しかし、権力の過度な集中に対する懸念も根強い。保守派の一部からは、「少数意見が排除され、社会の分断がさらに進行する」との警戒感が広がっている。
今後の韓国の内政・外交に世界の注目が集まる
李在明政権は、経済改革、社会統合、外交・安全保障といった複雑な課題への対応を迫られている。アメリカは韓国の民主主義を高く評価しながらも、中共の影響拡大に対して一層の警戒を強めている。アメリカ国内の保守勢力も李政権の対中姿勢や選挙の正当性に強い関心を寄せており、今後の動向に注視している。
現在の韓国社会は、経済・安全保障・外交のすべてにおいて重大な転換点に立っている。李在明大統領が掲げる「国民の団結」と「平和的対話」という理念が、どのように新時代の韓国を形づくるか、国内外の関心が高まっている。
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