東京23区内の主要火葬場が、実質的に中国系資本の影響下に置かれているとの見方が広がっている。都内6施設を運営する東京博善株式会社は、親会社の広済堂ホールディングスを通じて中国系実業家グループの出資を受けており、都心部における火葬事業の価格や運営形態に対する懸念が浮上している。業界関係者は、市場の独占構造や公共インフラへの外資関与の是非について、改めて議論が必要だと指摘する。
都心6施設を運営、寡占状態の構造的課題
東京博善は、東京23区内にある9か所の火葬場のうち、落合、町屋、四ツ木、代々木、堀ノ内、桐ケ谷の6施設を運営する。同社の親会社である広済堂ホールディングスの株式約40%を中国系実業家グループが保有しており、資本構造の透明性や経営方針への影響が懸念されている。
株式会社中央セレモニー代表取締役の大杉実生氏は、「都心部の火葬場は東京博善が事実上押さえており、競争が働きにくい寡占的状況にある」とし、「独占禁止法に抵触する可能性も否定できない」と指摘した。

一方、戸田葬祭場(戸田市)日華斎場(府中市)正蓮寺斎場(草加市)など、過去に東京博善との関係があった施設は現在独立運営に転じているが、都心の地理的優位性において東京博善の影響力は依然として強い。
また、大杉氏は「一部でラオックス(中国企業・蘇寧電器傘下)が東京博善を買収したという情報もあるが、完全な買収は確認されていない」と語っている。
火葬料金と収益構造──値上げ圧力とサービス品質の両立課題
東京博善が運営する火葬場では、火葬料金が過去10年で上昇傾向にある。23区民向けの火葬料金は現在約7万5千円、区外住民向けは約9万円に設定されており、これは過去の水準(約5万9千円)から大きく上昇している。
大杉氏は「今後さらに値上げされるとの観測もあるが、具体的な裏付けは今のところ確認されていない」としながらも、「資本収益性を重視する運営に転じた場合、料金やサービス品質への影響が出る可能性がある」と懸念を示す。
現場では人員の配置転換やパートタイム労働者の増加も報告されており、サービスの質的低下に対する懸念の声も上がっている。
外資系資本と公共インフラ──透明性と規制のバランス
火葬場事業は地方自治体の生活インフラと密接に関係しており、民間事業者による運営であっても公共性が強い。そのため、資本の出自や経営方針の透明性が求められる。
中国国内では2023年に火葬場が遺骨を不法に転売する事案が報道されており、大杉氏は「日本でもリスクゼロとは言えない」と警鐘を鳴らす。
現在、日本の火葬事業は厚生労働省および各自治体の厳格な法規制の下に運営されており、現時点で具体的な問題は表面化していない。
「公共インフラである火葬場に外国資本が深く関与している現状に対して、市民の不安が高まっているのは事実だ」と大杉氏は述べており、今後は資本構造の透明化と行政の監督体制強化が求められる局面にある。
行政対応の遅れと市場原理の限界
現時点で、東京都または23区の自治体による東京博善への介入や調査の動きは確認されていない。価格形成やサービス品質に対する社会的関心が高まる中、規制当局による事実確認や制度見直しの必要性が指摘されている。
大杉氏は「火葬場は典型的な地域密着型の社会インフラであり、利益追求と公共性のバランスをどう取るかが重要な政策課題だ」と強調する。
東京の火葬場市場をめぐる今回の問題は、単なる企業買収や料金の問題にとどまらず、外資による社会インフラ支配の是非や、地方自治体の公共サービスにおける民間委託の限界といった、より広範な論点を含んでいる。
経済合理性と地域の信頼、そして公共性をどう両立させるか──。今後の動向が注目される。
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