トランプ米大統領はロシアに対して強硬姿勢へと舵を切った。一方でウクライナへの軍事支援を強化し、他方でロシアに対し100%の関税を課すと警告した。こうした動きは、中国やインドにも緊張をもたらす。トランプ氏がロシア大統領プーチン氏に怒りをぶつけた背景には、ファーストレディの進言があった。
トランプ氏、ファーストレディの助言を受けて強硬姿勢──中国共産党(中共)にも間接的圧力。
7月14日、トランプ氏はホワイトハウスでNATO事務総長ルッテ氏と会談し、ロシア・ウクライナ戦争をめぐって一連の強硬発言を行った。これらの声明は、外部から「プーチン氏に対する最後通牒」と見なされた。
トランプ氏は、「ロシアが50日以内にウクライナと停戦または和平交渉に応じなければ、アメリカはロシアに対して100%の『二次関税』を課す」と明言した。
この発言は、アメリカおよび西側の対ロシア政策における大きな転換点となる。これまで三年以上続く戦争の中で、西側諸国はロシアとの金融取引を遮断してきたものの、ロシア産の石油や天然ガスに関しては輸出を容認していた。だが今回の措置により、アメリカはロシア政府だけでなく、ロシア産エネルギーを購入する第三国にも制裁を科す姿勢を打ち出した。これによりロシアへの資金供給を大きく断ち切り、同国の財政を圧迫し、プーチン氏政権の軍事行動を持続不可能に追い込む構えである。
二次制裁は多国間への圧力に直結
アメリカ商務長官ルートニック氏は、今回の措置を伝統的な制裁とは異なる「経済的懲罰」と位置づけた。彼はベネズエラの例を引き合いに出し、「トランプ氏はかつて『ベネズエラの石油を買えば関税を課す』と述べた。それは経済的制裁ではあるが、従来の“制裁”という手法とは異なる」と説明した。
ロシアに対する措置も同様であり、ルートニック氏は「モスクワと取引するすべての国がアメリカの関税に直面する。関税も制裁も、いずれもトランプ氏の政策ツールである」と述べた。対象国には中国やインドも含まれる。
ウクライナへの軍事支援を大幅に拡大
トランプ氏とルッテNATO事務総長は、ウクライナへの積極的な軍事支援も発表した。主な内容は以下のとおりである。
数日以内に「パトリオット」防空システムをウクライナへ配備。費用はEUおよびNATO加盟国が負担し、アメリカはシステムと技術を提供。計17基の配備を予定。
NATOのルッテ事務総長は、ドイツ、フィンランド、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、オランダなどが第一陣としてミサイルを提供すると述べ、「今後さらに追加される」と語った。
攻撃兵器の追加支援も予定されており、関係筋によると、支援総額は100億ドルに達する可能性がある。トランプ氏は「トップクラスの兵器を提供する」と語ったが、詳細は明かさなかった。
『ミリタリーウォッチ・マガジン』は、トランプ氏がJASSM空中発射巡航ミサイルの供与を検討中と報じた。JASSMはF16などの航空機に搭載可能な長距離ステルスミサイルで、高精度かつ多目的に使用可能であり、特にロシア軍の指令施設や地下兵器庫のような高価値目標への攻撃に適している。
このミサイルは2003年に初配備され、現在は世界で4か国しか保有していない。韓国も2010年代初頭に購入を希望したが、アメリカは一貫して輸出を拒否してきた。顧客数の少なさは、アメリカの輸出管理の厳格さを示している。
JASSMには複数の型が存在し、標準型は約370km、拡張型は1千kmの射程を誇る。
関係者の話によると、トランプ氏の軍事計画には、モスクワなどロシア本土深部を標的にする長距離打撃能力も含まれている可能性がある。
強硬姿勢の背景にファーストレディの言葉か
では、なぜトランプ氏はこのタイミングでプーチン氏に強硬な態度を取ったのか。トランプ自身がその一端を明かした。
「私は帰宅してファーストレディに言った、『プーチン氏と話して、とても良い会話ができた』すると彼女は『そう? でもまた一つ都市が攻撃されるわよ』と返してきた」
この言葉により、トランプ氏はメラニアの前で面目を失い、深い苛立ちを覚えたという。
彼は続けて語った。「プーチン氏とは何度も話した。会話のたびに良い感触を得たが、その直後にキーウなどにミサイルが飛んでくる。3、4回も続くと、さすがに無意味だと感じるようになった」
二重の圧力で停戦は可能か?
軍事と経済の二重圧力は、以下のような効果を持つと考えられる。
経済的孤立:二次関税の導入により、ロシア経済の中枢が打撃を受け、国民からの不満が高まり、プーチン氏は交渉に追い込まれる可能性がある。
軍事的抑止:長距離兵器の導入は戦場の様相を一変させ、戦争がロシア本土に及ぶことになれば、プーチン氏はコスト計算を見直す必要に迫られる。
国際的圧力:NATO諸国による連携強化は、ロシアを国際的に孤立させる力を持つ。
ただし、以下の要因がトランプ氏の戦略の障害となる。
プーチン氏の執着と権力構造:制裁によってクリミアやドンバスを放棄した前例はなく、ロシアの強人政治文化において、プーチン氏が弱さを見せることは即ち政権の危機につながる。
核抑止の影:軍事的圧力の高まりは、核使用のリスクも増大させるため、トランプ氏の行動にも一定の制約が生じる。
時間の制限:50日という期間は短く、ロシアの経済や軍事体制を完全に崩すには不十分な可能性がある。
中共の支援:中共の王毅外相は「ロシアがウクライナ戦争で敗北することを望まない」と発言しており、中共の支援がプーチン氏の譲歩を阻む恐れがある。
結論
現段階では、軍事と経済の二重圧力によって交渉の動きが加速する可能性はあるものの、即時の停戦には至りにくい。したがって、トランプ氏は今後さらに圧力を強める方針を採ると見られる。

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