金融庁は、銀行口座開設時などに運転免許証の画像を利用する本人確認手続きを早期に廃止し、マイナンバーカード(個人番号カード)の活用を促すよう、銀行業界に要請した。これは、本来2027年4月に廃止される予定だった本人確認書類画像での手続きを前倒しする方針によるものだ。
背景には、偽造口座が詐欺犯罪に使われる事例が増加していること、成りすまし防止機能が高いとしてマイナンバーカードの信頼性向上が挙げられている。
しかし、制度を進める一方で、情報セキュリティやプライバシー漏えいといった根本的な課題について抜本的な解決がなされていないとの指摘もある。
マイナンバーカードは、ICチップによる高度なセキュリティ、顔写真による本人確認、複数の暗証番号設定など対策が講じられている。しかし、情報漏えいの発生リスクがゼロとはいえず、カードの紛失や盗難時には、その表面に記載されている個人情報が第三者に渡ることもある。
NHKによると2023年6月にはマイナンバーとひも付けることで国の給付金などを受け取る公金受取口座に、本人ではない家族名義とみられる口座がおよそ13万件も登録されていたことが明らかになった。
デジタル庁は公金受取口座の登録にあたって本人の名義しか認めらないことを周知していたが、金融機関の口座を持たない子どもの代わりに、親が自分の口座を登録するケースなどが相次いだという。
こうしたサイバー攻撃や人為的ミスによる情報漏えい、個人番号の不正な利用は社会的損失が大きく、政府も再発防止策を強化するとしているが、マイナンバー制度そのものへの信頼性を揺るがしかねない事例が続いている。
こうしたなか金融サービスの本人確認がマイナンバーカードに一本化され、カード携行の機会が増えることで、紛失や盗難のリスクが今後拡大する可能性も懸念される。
行政手続きや金融取引の利便性向上を目指すデジタル化推進と、個人のプライバシー保護・情報セキュリティ確保の両立は、今後ますます重要な課題となっている。その一方で、制度を拡大・運用する前に、セキュリティ対策の不備などに対する継続的な検証と対応強化が欠かせないとの声は高まっている。
現状では、「マイナンバーカードによる本人確認は安全」と強調されるものの、システムや運用に100%の安全はなく、万が一のリスクを社会全体で共有し、透明性のある議論と点検を続ける必要がある。政府機関等の発表や複数の報道を総合しても、情報漏えい対策が十分といえない状況下で、制度拡大には慎重な姿勢が求められている。
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