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知られざる巨大市場 アメリカの製薬業界について知るべき9つのこと

2025/07/20
更新: 2025/07/20

処方薬は、痛みの緩和、感染症との闘い、気分の安定、炎症の抑制、恐ろしい病気への対処、寿命の延長など、多岐にわたり人々を支えている。 

これらの薬は多くの、恐らくは大多数のアメリカ人にとって生活の一部となっている。CDCの最近の調査によれば、平均するとアメリカ人の2人に1人が1か月のうちに少なくとも1種類の処方薬を服用している。また、13%超が5種類以上の処方薬を服用している。  

その割合は増加傾向にある。

2020年、アメリカ人が調剤した処方薬は64億件で、1人あたり約19回に相当する。

2023年には、アメリカ人が年間で服用した医薬品の「1日分の用量」は2100億回を超えた。これは国民1人あたり、錠剤・注射・点眼・点滴・クリーム・ミスト・座薬などを600回以上利用している計算となる。

The Epoch Times

ペンシルベニア州立大学のジェシカ・Y・ホウ研究員によれば、2019年に米国で生まれた子どもは、生涯のほぼ半分を処方薬を服用して過ごすと見込まれる。

アメリカは世界で最も多くの処方薬を消費しており、その費用も他国すべてを合わせた金額の約2倍に及ぶ。

ビッグビジネス

ドイツ・ハンブルクに本社を置く世界最大級の統計データプラットフォームStatista(スタティスタ)によれば、2023年の世界の医薬品売上高は1.6兆ドルである。これはスペインの国内総生産(GDP)にほぼ等しく、スイスの約2倍に相当する。 

米国の大手製薬企業10社だけで、企業価値は合計2.1兆ドル超に達する。

近年の成長は、生物学的製剤(バイオ医薬品)やペプチド製剤など新しいタイプの薬剤の登場によってもたらされた。これらの薬剤は非常に効果的だが、同時に高価でもある。

生物学的製剤とは、化学合成ではなく生物由来成分をもとに製造された薬剤である。アメリカの高齢者や特定の障害者を対象とした公的医療保険制度「メディケア」は、2023年にHumira(リウマチや乾癬などの治療薬、生物学的製剤)という薬を処方された患者1人につき、平均して約66,000ドル(約950万円、1ドル=145円換算)を薬代として支払った。

生物学的製剤の開発数は過去10年で3倍以上に伸びた。米食品医薬品局(FDA)は2023年1年間で17件の生物学的製剤を承認しており、1999~2013年の年間平均の4件から大きく増加した。

2022年には、世界で販売された上位50の生物学的製剤のうち、アメリカ人がその72%を消費したと米国保健福祉省は報告している。

ペプチド製剤は、体内の特定物質の機能を模倣する薬剤である。

特定のペプチド「GLP-1」は血糖や食欲を調節する機能を持つ。オゼンピック、ウェゴビー、トルリシティ等はGLP-1製剤に分類される。

The Epoch Times

「メディケア・パートD(主に処方薬負担をカバーする補助制度)」が、2023年にGLP-1製剤の購入や提供に合計220億ドル(約3兆円強)以上を費やし、この2年で約2.3倍となった。

現在、GLP-1市場はノボノルディスク、イーライリリー、アストラゼネカ、サノフィなどが主導しているが、他社も参入を進めている。

米国の薬価は2022年時点で他国の2倍以上、ブランド薬の場合は4倍超に達している(調査会社RAND調べ)。

政治献金

製薬会社は連邦政府との大きな取引先であり、2023年だけでメディケア・パートDおよびメディケイド(低所得者向け公的医療保険制度)から3870億ドルの支払いを受けている。

The Epoch Times

製薬会社や約100の関連政治活動委員会(PAC)は、直近2回の大統領選挙ごとに1500万ドル超、また中間選挙でもほぼ同額を政治献金として支出した。

The Epoch Times

これらの金額は、製薬業界の年間ロビー活動費用に比べれば小さい。2024年、業界は連邦・州議会への影響工作に1億5千万ドル超を費やした。700人以上のロビイストのうち約3分の2は元政府関係者である。

過去四半世紀で、製薬業界がロビー活動(政治的な働きかけ)に使ったお金は、「電力会社」「石油・ガス会社」「病院・介護施設」など、他のどんな業界よりも多い。さらに、その額は「自動車業界」と「防衛・航空宇宙産業」を合わせた合計よりも多い、つまりアメリカの中で最も多額のロビー資金を使ってきた業界のひとつである、ということだ。

The Epoch Times

研究開発

新薬開発には莫大な費用がかかる。議会予算局が引用したデータによれば、市場投入までに平均で20億ドルに達する場合もある。

議会は「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法(One Big Beautiful Bill Act)」により、希少疾患治療薬メーカーへの特別規定など、研究投資を支援した。この法律により、希少な病気用の薬がより多く認められるようになり、さらに、それらの薬については、メディケアが値下げ交渉を始められるタイミングがもっと遅くなるようにされた。

そのため、こうした薬剤メーカーは、将来の研究資金確保のため、当面はメディケアに対し定価で薬剤を供給し続けることができる。

通常は、発売9年以上経ち、メディケアから年間2億ドル以上の支払いを受ける薬剤は薬価交渉の対象となる。

患者団体「ペイシェンツ・フォー・アフォーダブル・ドラッグス(Patients for Affordable Drugs)」によれば、希少疾患用の薬(オーファンドラッグ、Orphan Drug)が、決められた売上の基準に達するケースはあまり多くない。しかし、2023年のJAMA Internal Medicine誌の研究によると、その中でも特に注目された8つのオーファンドラッグに関しては、『薬価交渉の対象になると見込まれる時点までに、それぞれ平均して約219億ドル(約3兆円以上)もの累計売上を記録する』と予測されている。

製薬業界の研究開発費は、2019年には830億ドルであり、2023年にはほぼ倍増している。納税者が資金を拠出する国立衛生研究所(NIH)も、2014年から2023年までの病気研究に3600億ドル超を支出した。

The Epoch Times

ワクチン

ワクチンは世界的なビジネスであり、2023年には70億回分超が出荷された(世界保健機関・WHO調べ)。市場価値は約770億ドルである。

The Epoch Times

1980年代、米国の子どもは定期的に7つの感染症予防のためのワクチン(2種の注射、1種の経口投与)を受けていた。

現在、疾病予防管理センター(CDC)は17疾患への接種を推奨しており、13種類までのワクチンが使われている。誕生から18歳までの間に、健康な子どもが受けるワクチンの総投与回数は最大49回に及ぶ。

連邦政府が交渉した価格で計算すれば、その総費用は3500ドル程度になるが、商業保険や民間の場合は5000ドル以上かかることもある(CDC調べ)。

CDCは1993年~2023年の間で、低所得者層の子ども約1億1,700万人にワクチンを提供したと報告している。定期ワクチンによって約5億800万件の感染症、3200万回の入院、100万件超の死亡を防ぎ、3.2兆ドル超の社会的コストを削減したと推計されている。

The Epoch Times

2023年春のCOVID-19緊急事態宣言終了時点で、アメリカ連邦政府はファイザー及びモデルナからCOVID-19ワクチンを計12億回分、総額253億ドルで購入していた(KFF調べ)。1回あたりの平均価格は約21ドルであった。

エポックタイムズの政治記者