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中露合同軍事演習 米軍核潜水艦が標的か?

2025/08/08
更新: 2025/08/08

今月1日から5日まで、中露海軍はロシア遠東海域で合同軍事演習「海上聯合2025」を展開した。今回の演習は対潜水艦作戦を主軸に据え、両国海軍の戦略的協力と同盟深化を強く印象づける内容となった。8月6日からは演習に続く合同巡航を開始し、地域安全保障環境はさらに緊張を増している。

中露軍事連携の明確な戦略意図

中国共産党軍報によれば、8月5日午後、演習に参加した中露艦艇編隊は事前計画通り全海上科目を完了し、翌6日から海上合同巡航に移行した。今回の「海上聯合2025」では、対潜水艦作戦を最重要科目と位置付け、敵方潜水艦を模擬目標として捜索・撃沈する実弾射撃を実施し、高度な対潜戦能力を強化した。ロシア国防省は今後も軍事協力を深化させる方針を示し、中露の協調行動を常態化する意図を明確にした。

米軍の核潜艇展開が示す強硬姿勢

同時期、米軍はロシア周辺海域に2隻の原子力潜水艦を展開した。米国の明確な軍事的反応の背景には、ロシア前大統領メドベージェフ氏による核威嚇発言がある。トランプ大統領は8月1日、米軍戦力の展開を発表し、ロシアに対し「ウクライナ戦争終結」の最後通牒を突き付けた。期限内に応じなければ、ロシアおよびロシアの石油購入国に対して新たな厳格制裁を科す方針も示した。また、中国共産党にも影響が及ぶ可能性を警告した。

米軍の原子力潜水艦展開は、ウクライナを巡る米露間の戦略的対立の深刻化を示すと同時に、東アジアにおいても大国間の安全保障リスクが現実化している状況を浮き彫りにしている。

「対潜水艦訓練」拡大が意味するもの

台湾国防安全研究院戦略与資源所所長の蘇紫雲氏は、中露による反潜科目の拡大や「敵方潜艇撃沈」訓練について、米国の海基核戦力への明確な対抗策であり、中露軍事協力が戦術段階から戦略的連携へと深化した証左であると指摘する。西側軍事圧力への共同対応体制が構築される中、米国も核潜艇展開でこれに呼応し、三極による軍事的せめぎ合いが一層熾烈化している。

台湾国防安全研究院 戦略与資源所の蘇紫雲所長は、大紀元の取材に対し「今回の中露合同軍事演習は、明確に特定の相手を想定している」と話した。特に、対潜水艦訓練の大幅な拡大や「敵潜水艦の撃沈」を目的とした訓練は、米国の海上配備型核抑止力に直接対抗する動きだという。こうした動きから、中露の軍事協力は戦術レベルを超え、戦略面での連携段階に入ったことが分かる。両国は西側からの軍事的圧力に共同で対応しているのだ。

地政学的バランスと大国の戦略的選択 中露の対米脅威は限定的

蘇氏はさらに、現在の国際情勢について「軍事対立が臨界点に近づいている」と分析する。NATO加盟国では国防予算が相次いで増額され、軍需産業も活発化している。これにより、冷戦後続いてきた「平和の配当」の時代は終わったといえる。もしロシア・ウクライナ戦争がアメリカの思惑どおりに収束しなければ、世界的な軍事対立はさらに激化する恐れがあるという。

一方、米国が発表した核潜水艦の配備に関する声明について、台湾国防院 中共政軍・作戦概念研究所の洪子傑所長は「これはロシア側の一部発言に対する応答に過ぎず、本格的な対立姿勢を示すものではない」と指摘した。この声明は8月8日のウクライナ・ロシア停戦期限に関連しており、実際の配備状況は今後も注視する必要があるとしている。

蘇紫雲氏は、米国の戦略目標が中国共産党の台頭への対応へと移りつつあると考えている。もしウクライナ紛争が制御可能な形で終結すれば、米国は段階的に対ロシア制裁を解除し、対中共との競争に全力を集中させる可能性がある。その場合、中米間の軍事的対立傾向は一層明確となり、ロシアの戦略的選択が重要な変数となるだろう。

中露が米国の原子力潜水艦に対して実質的な脅威を与える能力を有しているかについて、蘇紫雲氏は専門的な評価を示した。米国の原子力潜水艦の静音性能は世界最高水準であり、中露が米国の海上配備型核戦力に対して実質的な脅威を構築できる能力は限られているという。

洪子傑氏は、現在の全体的な情勢について総合的な評価を行い、「中露の軍事協力は深まっているものの、それが西側とのより高強度な対立段階に入ったと判断するには十分な根拠はまだない。各国が戦略的な警戒を保ってはいるが、全体として軍事対立の質的な段階が顕著に進んだ兆候は見られない」と述べた。

駱亞