2025年7月23日、中国公安部の亓延軍(き・えんぐん)副部長が国務院の記者会見で堂々と「中国は世界が認める最も安全な国の一つである」と言い放った。何を根拠に言っているのか皆目見当もつかないが、中国共産党は自国を「世界一安全」と自称している。しかしその「安全」の実態は、不都合な声を徹底的に消し去り、あらゆるものを危険視する統制の上に成り立っているにすぎない。

その実態を裏付けるかのように、このほど中国四川省・成都の警察内部文書が流出し、あらゆる声を「危険」とみなし、国家の都合で封じ込める中国共産党の「維穏(社会安定維持)」が、どこまで社会を覆い尽くしているかが浮き彫りになった。
流出した文書は「2025年第三四半期 意識形態分野リスク提示」と題され、チベット関連や抗戦勝利記念、「中国人民解放軍創設記念日(8月1日)」、米国駐成都総領事館閉館5周年に加え、性的少数者(LGBT)、校内いじめ、若者のアイドル熱狂までも「重点リスク」として列挙していた。
当局は文書の中で「西側が歴史をゆがめて語ることを警戒せよ」と指示。いっぽうで外国からの批判だけでなく、「米領事館再開」を求める声や過激な反米行動、さらには国内での行き過ぎた民族主義までもリスクとみなしていた。
さらに文書は、退役軍人や傷病兵の生活苦への注目を「重大リスク」と位置づけ、「若手大学教員の困窮」や「高温による開校延期」「軍事訓練の安全」「食品安全」など、退役軍人の待遇問題や教育現場の不満までも監視対象に挙げていた。
市民の間では「当局は『反米』『反日』を煽るが、制御できない世論は許さない。結局は愛国も言論も『彼らの都合の範囲でしか』許されない」との皮肉が飛び交っている。
一方で封じられる声が増えれば増えるほど、矛盾は積み重なり、不満は地下水のように社会にたまっていく。中共が最も恐れているのは外敵ではなく、制御できない自国民の声そのものなのである。

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