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ケネディ米保健福祉長官「自閉症の原因解明へ一歩前進」 新治療薬に期待

2025/09/24
更新: 2025/09/24

アメリカ保健福祉長官ロバート・F・ケネディ・ジュニア氏と当局者は9月22日、タイレノール(解熱鎮痛剤)の有効成分であるアセトアミノフェンが、自閉症という多様な症状を持つ障害と関連している可能性があると発表した。また、処方薬の葉酸誘導体であるロイコボリン(葉酸フォリン酸、フォリニック酸)が自閉症治療に有望であるとの見解も示した。以下では今回の発表の要点、自閉症、そしてフォリニック酸について解説する。  

タイレノールとの関連

当局は、アセトアミノフェン(別名パラセタモール)と神経発達障害との関連について、妊娠中の使用を控えるべきだと警告を出すに足る十分な証拠があると述べた。

米国食品医薬品局(FDA)長官マーティ・マカリー博士はワシントンでの説明会で「もはや無視できないデータが存在する」と語った。  

2019年のボストン大学とジョンズ・ホプキンス大学医学部の研究では、臍帯血漿(さいたいけっしょう)を分析し、胎内でアセトアミノフェンに曝露したことで、自閉症や注意欠陥・多動性障害(ADHD)の発症リスクが高まることが確認された。また2025年のレビュー研究でも「妊娠中のアセトアミノフェン曝露と神経発達障害発生率の上昇との関連を支持する証拠がある」と報告された。  

マカリー長官は医師向け通知で「妊婦によるアセトアミノフェン使用は、子どもの自閉症やADHDリスクを増加させる可能性がある」と明記した。ただし、発熱や疼痛に対しては最も安全な市販薬であることも強調し、使用は最小限に抑えるべきと述べた。  

一方で、一部の専門家は関連性を否定している。2024年のスウェーデンの大規模研究(約250万人の子供を対象)では、自閉症やADHDとの関連性は見られなかったと結論づけている。米国母体胎児医学会も「科学的証拠はまだ不十分で、妊娠中のアセトアミノフェン使用が自閉症やADHDリスクを増すとは断定できない」との立場を示し、妊婦の疼痛や発熱治療に有効で安全だと推奨を続けている。  

タイレノール製造元の親会社ケンビューは、「10年以上に及ぶ厳密な研究により、アセトアミノフェンと自閉症との関連を裏付ける信頼できる証拠は存在しない」と声明を出した。  

2025年9月22日、カリフォルニア州サンアンセルモにタイレノール錠が展示されている。米国保健当局は2025年9月22日、妊娠中のアセトアミノフェン服用に関する新たな警告を発した。Justin Sullivan/Getty Images

自閉症の増加

自閉症は、会話やアイコンタクトが困難になるなどの症状を持つ障害である。約4分の1の自閉症者は言葉を話せない、あるいはごく限られた言葉しか使えないとされる。  

米国疾病対策予防センター(CDC)によると、2002年には150人に1人だった自閉症の有病率は2022年には31人に1人まで急増した。ドナルド・トランプ大統領は9月22日、「これほど急増しているなら人工的な要因がある」と述べた。ケネディ長官も「遺伝が一部の要因となっている可能性はあるが、これほどの増加には環境要因が必要である」と指摘した。  

CDCは、自閉症のリスク要因として、高齢出産や特定の遺伝的条件などを挙げている。米国自閉症協会は診断基準の拡大や認識向上が増加の背景にあるとしている。  

ワクチンとの関連は? 

ケネディ氏は過去に「ワクチンが自閉症の原因になり得る」と発言してきたが、今回の発表ではワクチンが原因と明言はされなかった。ただし、今後発表される可能性は排除されていない。

2025年3月1日、テキサス州ラボックのクリニックで、MMRワクチン接種を受ける14ヶ月の息子を抱く男性。ワクチンが自閉症を引き起こす可能性があると信じている親もいる。Jan Sonnenmair/Getty Images

ケネディ長官は「自閉症は多因子的な障害であり、ワクチンも詳細に調査中である」と述べ、多くの自閉症児の母親がワクチンによる被害を疑っている点を強調した。  

一方、従来の研究では麻疹・おたふくかぜ・風疹ワクチン(MMR)と自閉症との関連は否定されている。しかし米国では政府の補償制度のもと、一部の患者がワクチン関連の障害で補償を受けている事例も存在する。  

トランプ大統領は、ワクチン投与スケジュールを延長すべきと主張し、出生直後のB型肝炎ワクチン接種にも疑問を呈した。CDCの諮問委員会は今月、接種開始時期の延期を検討したが、さらなるデータ収集のため決定を保留した。  

CDCはまた、ワクチンと自閉症の関連研究に資金を拠出する方針を発表。米国立衛生研究所(NIH)も自閉症の原因解明と治療研究のため5000万ドルを投じることを決定した。  

国立衛生研究所のジェイ・バッタチャリア所長は、食品医薬品局長官のマーティ・マカリー博士、ドナルド・トランプ大統領、ロバート・F・ケネディ・ジュニア保健福祉長官とともに、2025年9月22日にホワイトハウスで行われた発表で発言した。Andrew Harnik/Getty Images

フォリニック酸の推奨

葉酸には合成型(葉酸)と天然型(フォリニック酸)がある。9月22日の発表では、処方薬フォリニック酸(ロイコボリン)が自閉症の症状改善に有望であるとされた。米当局は、かつて市場から撤退した「ウェルコボリン(主成分はロイコボリンと同じホリナートカルシウム」を脳葉酸欠乏症(自閉症患者の一部も含む)治療薬として再承認する方針を検討している。  

ランダム化二重盲検試験では、フォリニック酸が自閉症児の言語能力などを改善する効果を示した。米国、フランス、インドでの臨床試験結果が報告されている。一部の自閉症者では、葉酸受容体に対する自己抗体が高頻度で見つかっている。この抗体があると、葉酸が脳内にうまく取り込まれず、脳内葉酸不足が生じる。しかし、フォリニック酸(ロイコボリン)は、この障害を受けずに脳内へ輸送されるため、十分に効果を発揮できるとされている。

精神科医デービッド・ダニッシュ博士は「フォリニック酸はすでに利用可能な形で脳に到達でき、多くの患者に有効な臨床効果を示している」と述べた。ただし全員に効果があるわけではなく、特に脳での葉酸輸送が阻害されている患者に適応すべきとした。  

自閉症支援団体「Autism Speaks」も「言語能力の乏しい子供の発語改善に有望」としながら、さらなる大規模臨床試験の必要性を指摘している。研究者リチャード・E・フライ博士は「治療法ではないが、自閉症者の生活の質を有意に改善できる安全な治療選択肢」としてフォリニック酸を支持している。

メリーランド州に拠点を置く大紀元のシニアリポーター。主に米国と世界のニュースを担当。