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ノーベル賞ダブル受賞快挙の裏にある課題 崩れる日本の研究の足場

2025/10/13
更新: 2025/10/13

日本人研究者2人が相次いでノーベル賞を受賞し、日本の科学界が沸いている。しかしその一方で、国内の研究環境は諸外国に比べて見劣りしているのが実情だ。

受賞が決まった坂口志文・大阪大学特任教授と北川進・京都大学特別教授は、受賞決定後の会見で「基礎研究をちゃんと重視すべきだ」と述べ、研究環境の充実に向けた国の支援を求めた。

研究現場の劣化は、2004年の国立大学法人化を契機として進行している。法人化以降、国立大学に対する運営費交付金(基盤的経費)は削減が続き、教員が研究に専念できる環境は大きく損なわれている。

運営費交付金は2004年度の1兆2415億円から2023年度には1兆784億円へと約13%減少した。2006年には、交付金を年1%ずつ削減する方針が閣議決定されており、この動きが継続している。

こうした財政状況の変化とともに、教員の研究時間も減少傾向にある。大学等の教員が年間総職務時間に占める研究活動の割合は、法人化前の2002年度には46.5%だったが、2008年には39.1%、2018年には32.9%、さらに2022〜2023年度には32.2%へと低下した。

主な要因は教育負担の増加と大学運営業務の煩雑化である。特に「会議等に要する時間が多く、研究時間が確保できない」との声は教員の49%から寄せられており、「研究以外の職務が多忙で、まとまった研究時間を確保できない」という意見も47%にのぼる。

このような環境の変化は、研究成果の質にも影響を及ぼしている。論文の質とされる「Q値」は主要国の中で最低水準となっており、国際的に注目される論文数(Top10%補正論文数)でも、日本は世界ランキングを大きく後退させた。研究成果の低下は、研究時間の減少と密接に関係しているとされており、2000年代半ばから2010年にかけての論文数減少の主因となっている。

日本の大学は2004年以降、QS世界大学ランキングにおいて順位を徐々に下げており、東京大学は2004年の12位から2025年には32位まで後退した。

対照的に、アジアの近隣諸国の大学は着実に順位を上げている。2025年の同ランキングでは、シンガポール国立大学が8位、南洋理工大学が15位、香港大学が17位、清華大学が20位、北京大学が14位、ソウル国立大学が31位となっており、日本の大学は相対的に後塵を拝している。

国立大学の法人化は、大学の自律的な運営と国際競争力の向上を目的とした制度改革であった。しかし、その実態は運営費の削減と競争的資金への依存強化を招き、結果として研究に専念できる環境の悪化をもたらしている。

京都大学の林哲介教授は、法人化によるメリットもあるとしつつも、「重要な問題は基本的な予算が危機に瀕していることだと思う。そういったことを考慮すると全般的にはメリットよりもデメリットの方がはるかに大きいと感じる」と述べた。

エポックタイムズの記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。他メディアが報道しない重要な情報を伝えます