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上海半導体器件研究所が清算完了 計画経済期の科学研究体制に終止符

2025/11/12
更新: 2025/11/12

 裁判所による清算手続きが完了し、上海半導体器件研究所の法人資格がまもなく抹消される。計画経済時代に設立されたこの研究機関は、最終的に資金の枯渇と運営停滞により終焉を迎えた。業界関係者は、同研究所の終結は単なる個別事例ではなく、中国における半導体研究体制の全面的な縮小が続いていることを示すと指摘している。

中国共産党上海市第三中級人民法院の公告によると、上海半導体器件研究所は債務超過のため破産清算手続きへの移行が認可された。同研究所は1970年代に設立され、中国における初期の半導体プロセス研究の重要拠点であった。

清算公告によると、同研究所は長年にわたり実質的な業務を展開しておらず、安定した収入源がない。清算チームが職務を遂行する中で、現金資産は一切確認されず、申告された債権は1413万元(約2800万円)の1件のみであった。裁判所は10月30日に清算報告書を承認し、破産条件を満たすと認定した。

研究所の破産は、中国の科学研究体制が市場化へ転換する一つの節目と見なされている。複数の科学技術関係者は、このような国有研究機関は行政からの補助金が減少する中で停滞状態に陥っており、国有企業の科学研究と市場経済との構造的矛盾を反映していると指摘した。

北京の科学技術評論家・葛氏は、この研究所の終焉は孤立した事例ではないとし「中国の科学研究体制は長年にわたり行政予算に依存しており、自律的な経済循環を持っていない。補助金が減れば、科学研究活動が縮小するのは当然だ」と述べた。

同研究所はかつて電子工業部に所属し、衛星通信や宇宙電子部品の開発に携わるなど、中国で最も早く集積回路(IC)およびMOSプロセス研究を行った機関の一つであった。1980年代以降、研究任務の移転や人材流出により生産ラインは段階的に停止し、2010年以降は基本的に研究活動を停止した。残留職員は主に設備維持や資産整理を担当していた。清算手続き完了後、法人資格は抹消され、工場用地と設備資産は裁判所の監督下で移管される予定である。

深圳の半導体業界アナリスト・林恒(仮名)氏は「今回の破産は国有科学研究体制の縮小を象徴している。中国の政策の焦点は研究所から企業主導へと移行している。研究所のような組織は市場経済の条件下では競争力がなく、資本を呼び込むこともできない」と述べた。

世界の半導体競争環境において、中国は長年にわたりアメリカ・日本・韓国などの主要国に後れを取ってきた。業界団体のデータによると、中国のチップ自給率は政策支援により約30%まで上昇したものの、高度な製造工程は依然として外部サプライチェーンに依存している。国内のウェーハ製造装置の80%以上は輸入品であり、中核となる露光装置(リソグラフィ機)は完全に外国依存の状態にある。

業界アナリストは、中国の半導体開発が長期にわたり「追いつき計画」に重点を置き、独自の技術路線と長期的な基礎研究が欠如していると指摘する。北京のベテラン技術者は「中国の研究開発はプロジェクト主導型で、技術志向ではない。そのため、プロジェクト期間が終了するとチームは解散し、成果が持続しない」と語った。

2024年以降、複数の半導体プロジェクトが資金繰りの悪化や政策変更により操業停止に追い込まれ、一部企業はIPO申請を撤回した。2025年6月にはAMS社の12インチウェーハ工場の再編計画が頓挫し、中国における地方政府主導の半導体投資ブームの崩壊を象徴する事例となった。業界では、半導体産業が「バブル解消」段階に入ったとの見方が広がっており、政策と資本の熱気が冷める中、研究機関が真っ先に清算対象となった。

林恒氏は「中国半導体産業の問題は、政策と市場の乖離にある。科学研究体制は持続的なイノベーションの連鎖を形成しておらず、国家プロジェクトが終了すると体制内の機関は存在意義を失ってしまう」と分析する。

ネット上では、「科学研究が失敗したのではなく、旧体制がもはや維持できなくなっただけだ」「一つの時代が清算された。研究所までもが歴史的遺物となった」などの声が見られた。

上海半導体器件研究所の破産は、計画経済時代の科学研究体制が正式に終焉したことを象徴している。

邢度