激変する中国 静かな後退が示すもの

中国2025年 静かに広がる失望の空気

2026/01/01
更新: 2026/01/01

2025年の中国で、世界を揺るがすような大事件は起きなかった。
経済が一気に崩れたわけでもなく、街を埋め尽くす大規模な抗議が続いたわけでもない。
それでも、多くの人が「暮らしが確実に苦しくなった」と感じている。

工場は音もなく止まり、店はいつの間にか閉まり、給料は遅れたり減ったりする。
派手な崩れ方ではない。
だが、日常のあちこちから、少しずつ「にぎわい」が消えていった。

 

イメージ画像。中国。(GettyImages)

 

給料が出ない それが珍しくなくなった

年末、中国のSNSには同じような声が並んだ。
「昨日まで働いていた工場が、今日はもう閉まっている」。

広東では、稼働を止めた工場に労働者が集まり、何も言えずに立ち尽くす映像が広がった。
遼寧では、地方政府や公的機関で働く人たちから、社会保険や住宅積立金が支払われていないという訴えが相次いだ。

「給料は減らされ、ボーナスや各種手当はすでに消えた。積立金は数字だけ残って、使えない」。こうした声は、役所職員だけでなく、学校や病院で働く人たちからも聞かれる。

「そのうち支給される」と言われ続けるが、時期は示されない。
この「待たされる状態」そのものが、不安になっている。

 

横断幕を掲げて、給料の支払いを求める農民労働者。(中国のSNSより)

 

上海でも進む空洞化

かつて中国経済の象徴だった上海でも、変化ははっきりしている。
オフィスビルの空室が目立ち、駐車場はがらがらだ。

「去年はほぼ満員だったのに、今は3分の2がいなくなった」。
そう語るのは、都心のオフィスで働いていた40代の男性である。
失業者の多くは、家族を支える世代だ。

山東の医療現場では、さらに深刻な状況が続いている。
数か月にわたり給料が大きく減り、時には数百元(数千円)しか支払われない例もある。
「子どもどころか、自分一人も養えない」。そうした声は、もはや珍しくない。

 

イメージ画像。街を清掃する作業員、上海。 (JOHANNES EISELE/AFP via Getty Images)

 

数字と実感が合わない

政府は「雇用は安定している」と発表している。
だが、仕事探しを諦めた人は統計に現れない。

都市で生きられず、故郷に戻っても耕す土地はもうない。
住宅ローンを抱え、親にも言えず、一人で悩む。
そんな投稿が、SNSに静かに増えている。

 

怒らず 訴えず ただ離れていく

専門家の間では、若者の行動変化が指摘されている。
働かない。
消費しない。
起業もしない。

これは怠けではなく、出口が見えない結果だという。
声を上げる代わりに、人々は社会から距離を取るようになった。

最近、SNSでよく見かける言葉は3つだけだ。
「仕方ない」
「もういい」
「言わないほうがいい」

言葉が減るほど、不満は消えたように見える。
だが、それは解決ではない。

 

写真は、北京の路上で玩具を売る若者。(Greg Baker/AFP via Getty Images)

 

見た目だけ整える経済

一部では、経済データをよく見せる動きも指摘されている。
輸出や成長率は立派でも、現場の仕事や収入は戻らない。

「数字は作れても、生活は作れない」。
現場に近い人ほど、そう語る。

結婚しない 借りない 増やさない

消費は冷え込み、店は次々に姿を消す。
結婚件数も大きく減った。

「結婚しない。子どもを持たない。借金をしない」。
それが今、自分を守る唯一の方法だと考える人も多い。

 

広州交易会の来場者、2025年4月15日、中国・広州。(Jade Gao/AFP via Getty Images)

 

静かな後退が示すもの

抗議や突発的な事件は点在的に増えているが、組織もスローガンもない。
ただ、限界を超えた個人が、突然あふれ出す。

2025年の中国を覆ったのは、怒りではない。
もっと静かなものだ。
諦めと、沈黙と、ゆっくりした後退。

次に何が起きるのかは、誰にも分からない。
しかし、この「何も起きていないように見える状態」そのものが、
すでに見過ごせないサインになっている。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!