8日に開かれた日銀支店長会議では、中国による渡航自粛要請の影響は「現時点では限定的」としながらも、旧正月期にかけて宿泊業を中心に悪影響が広がる可能性への懸念が示された。
中国航空情報サービス「航班管家」の最新統計によると、2026年1月に予定されていた中国―日本間の航空便のうち、すでに40.4%にあたる2195便がキャンセルされた。2025年12月23日から2026年1月5日までの2週間に限れば、46の日中路線で計画されていた便はすべて取り消され、キャンセル率は100%に達している。
中国情勢に詳しい時事評論家・陳破空氏は、この一連の動きを「人が政治の道具として扱われている典型例」と位置づける。
「中共という政権は、あらゆる問題を政治化し、武器化し、道具化する体制である。中国人観光客は本来『人』だが、当局は彼らの人権を奪い、政治のための道具として恣意的に利用している」
中国共産党当局は日本への渡航を控えるよう公式に呼びかけ、中国の主要航空会社は日本行き航空券の無料返金・変更措置を一斉に導入・延長した。旅行会社に対しては、訪日客数を従来の約6割に抑えるよう調整する方針も示された。
陳氏は、台湾で起きた過去の事例を引き合いに出し「馬英九政権の時代には中国人は大量に台湾を訪れたが、蔡英文政権になると一転して渡航は制限された。行かせるときは行かせ、行かせないときは行かせない」
今回も同じ構図が日本に向けられている。
「反日もまた一つの道具である。反日を煽る際には、意図的に勢いを作り出し、中国人を巻き込み、縛りつける。中国人がどこへ旅行するかは本来、政権と関係ない。しかし中共は一党専政の体制として、独裁的な強制力と押し付けられた意志を用い、国民を自らの側に引きずり込み、反日という構図に立たせている」
中共は「日本は危険だ」と言って人々を思いとどまらせ、ロシアやカンボジアへ行くよう勧める。
陳氏は「ロシアは戦争中で、ウクライナのドローンがいつでも攻撃しかねない。カンボジアも衝突の可能性を抱えている。世界で最も安全な国の一つである日本から、人々を引き離そうとしている。このやり方自体が荒唐無稽だ」と批判した。
しかも多くの中国人は、自ら進んで日本行きを取り消したわけではない。
陳氏は、「航空会社から『いま日本に行かなければならない理由があるのか』と電話で問いただされ、キャンセルを迫られた人が少なくない。南方航空は実際にこのやり方をとっている」と明かした。
結果として、中国人は日本で予約していたホテル、航空券、鉄道、行程、公演チケットを一方的に失うが、これらの損失は補償されない可能性が高い。
陳氏は「これは日本人を傷つけているのではない。中国人自身に大きな損害を与えている。反日はやがて反中へと変わる」と指摘した。
被害は個人だけでなく、中国の航空会社や日本で事業を展開している旅行会社にも及ぶ。
「南方航空、東方航空など中国の大手航空会社はいずれも重大な打撃を受けた。通常業務を続けていた中で突然、運航停止やキャンセル、払い戻しを迫られた。中国経済が低迷する中、中共は内需を拡大すると言いながら、政治のために内需を削っている」
陳氏はこの状況を、数年前に習近平が上海の全面封鎖を命じた際の発言と重ねる。
「『経済の帳簿を計算するな、国民生活の帳簿を計算するな、政治の帳簿を計算せよ』。権力維持のためなら、人民の生活は二の次という発想が、今回も貫かれている」

一方、日本の観光は大きく落ち込んでいない。
11月の訪日客は351万人、1月から11月にかけて累計で4千万人に迫っている。中国が中国人の訪日を制限しても、日本は揺らがない。中国人観光客が減っても他国の観光客が増えている。「この数字からも、日本が世界各国の人々に、そして中国人観光客からも強く支持されていることがうかがえる」と指摘した。
陳氏はさらに、今回中共は反日を煽っているが、中国人があまり乗っていないと述べた。
「中国が中国人観光客の訪日を制限しても、実効性は乏しい。私の知る限り、12月から年末年始にかけては多くの中国人が日本のホテルを予約しており、年末年始には再び満室が相次いだ。その多くが中国人観光客だという。こうした状況から、今回の反日姿勢はすでに持続困難な段階に入っているとみている」
逆に、反日を煽る過程で、自ら重い代償を払っている。より多くの日本企業が中国から撤退した。広東省では中山市のキヤノン工場が閉鎖され、ソニーも恵州市の拠点から撤退し、これだけで数万人規模の中国人労働者が職を失った。
昨年11月、中共外務省アジア局長の劉勁松は、両手をポケットに入れたまま金井アジア大洋州局長と立ち話をした写真が出回っていたが、同月、この人物は大連に赴き、日系企業に撤退しないよう説得して回っていた。
陳氏は、「中共は『敵を三千倒して自らは一万人を失う』ようなもので、代償はあまりにも大きい。それでも彼らは経済や国民生活ではなく「政治の勘定」しか見ておらず、人民の生活や感情には一切目を向けない。政権の安定、習近平の権力の維持、そして世論の目をそらせるのであれば、それでよいと考えているだろう」と指摘した。
こうした状況を踏まえ、同氏は今回の対日強硬姿勢が長期化する可能性は低いとみる。中国国内では失業や経済停滞への不満が高まっており、大規模な反日運動を展開すれば、矛先が政権批判に転じかねないためだ。実際、重慶市では反日を叫んだ市民が当局に拘束される場面も確認されているという。
「反日を煽りながら、同時に民衆の動員を恐れている。この矛盾したやり方は必ず自己崩壊する」
陳氏は、中共当局が狙ったとされる最大の目的、すなわち高市氏に発言を撤回させることにも、また最小の目標であった中国人を縛り付けて本格的な反日世論を形成することにも、いずれも結びつかなかったといえると考えている。
こうした結果を踏まえ、「今回の反日キャンペーンは、最終的には勢いを失い、静かに終息するだろう」とみる。残るのは、経済や雇用などの分野で中国側が支払った重い代償だけであり、その影響を実感しているのは当事者たち自身だとしている。
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