ポンペオ米国務長官のブレーンを務めた、著名な中国問題専門家の余茂春(マイルズ・ユー)氏は、中国共産党の軍事産業には一定のパターンが存在すると指摘した。米国が実戦で圧倒的な軍事力を示すたびに、中共軍内部や国防研究部門で大規模な粛清が行われ、その直後に中共軍の軍事力が「飛躍的に進展した」を喧伝する傾向があるという。
余氏は、トランプ政権初期に米国務省の対中首席分析官を務め、現在は米保守系シンクタンク「ハドソン研究所」中国センターの責任者を務める。同氏は米紙ワシントン・タイムズへの寄稿で、最近の米軍によるベネズエラおよびイランでの作戦において、中共政権が提供した防空網やレーダー、ミサイルシステムが、米軍のステルス技術や電子戦能力の前に繰り返し機能不全に陥ったと分析した。
トランプ大統領も公開演説で、ベネズエラのマドゥロ大統領の拘束作戦に触れ、「中ロの妨害装置はまったく役に立たなかった」と述べ、その理由は将来明らかになるとしている。
余氏は、こうした失敗が中共製兵器の信頼性を損なうだけでなく、宣伝と実力との大きな乖離を露呈させたと指摘する。一方で中共は問題の検証ではなく、軍上層部や国防研究機関に対する大規模な内部粛清を選択している。
軍・国防研究分野で相次ぐ粛清
今年1月の米国によるベネズエラでの軍事作戦後、中共の高級将官が相次いで「行方が不明」となった。3月初旬の全国人民代表大会など「両会」期間中には、26人の上将のうち公の場に姿を現したのはわずか6人で、残りは欠席。また、中央軍事委員会の軍人メンバー6人のうち、4人がここ数カ月で相次いで失脚した。
粛清は軍にとどまらず、兵器開発の中枢にも及ぶ。空母建造、先進戦闘機、レーダー、防空ミサイル、戦略兵器など主要プロジェクトの責任者が、公の場から姿を消す事例が続出した。中でも中共軍のステルス機「殲20」開発の父・楊偉氏や、レーダーおよび対ステルス分野の呉曼青氏、防空ミサイル分野の魏一寅氏、核兵器設計に関与した趙向庚氏らは、急遽公職を離れたとされる。類似の事例は数十件に上る。
さらに、高超音速兵器や最先端な航空戦力分野の研究者の不審死も相次ぎ、68歳の方岱寧氏や57歳の厳紅氏の突然の死は、閉鎖的かつ高圧的な研究環境を浮き彫りにし、外部からの憶測を呼んでいる。
余氏は、これらの粛清や突然の死は偶発的な事件ではなく、中共軍事現代化の技術トップ層を体系的に解体する意図的な行動と分析する。
余氏は、「中共の体制は失敗を公に認めることを許さない。そのため欠陥が露呈した際、制度改革ではなく個人への責任転嫁が行われる」と指摘する。このような政治的粛清に依存する体質は、経験豊富な軍事指導者や科学者の排除を招き、組織の学習能力と改善能力を著しく低下させる。
また、恐怖政治のもとでは正確な報告や批判的分析が抑制され、誇張や非効率が横行し、結果的に失敗を固定化させる危険性があるという。
米の軍事攻撃がもたらす「二重の衝撃」
米軍のベネズエラ・イランに対する軍事攻撃は、中共の兵器開発に二重の影響を与える。一方では近代化を加速させる触媒として作用するが、他方では体制の構造的弱点を暴露する「ストレステスト」となる。結果として、米中間の技術格差が拡大するだけでなく、中共の軍・研究体制内部の不安定化も進む。
余氏は、「米国との競争を望む一方で、その体制自体が成功の可能性を制約している」というパラドックスを指摘する。透明性の欠如、真の革新能力の不足、制度の柔軟性の欠如が、進歩を脆弱で不均衡なものにしているという。
中共の軍事近代化は、持続的な内部革新によるものではなく、米軍の軍事的優位に対する受動的反応として進められてきたと余氏は分析する。例として、1991年の湾岸戦争は、中国に精密打撃やステルス、ネットワーク化作戦の重要性を認識させた。さらに1999年の在ユーゴスラビア中国大使館爆撃や、2001年の南シナ海米中衝突事件も、軍事的脆弱性を露呈させ、航空宇宙やサイバー分野への投資を加速させた。
これらの事例はいずれも、「中共の進展が内部革新ではなく、外部衝撃への反応である」という傾向を裏付けている。
余氏は最後に、中共の制度的弱点が軍事技術開発の制約となると指摘する。外国技術への依存、精密製造・材料科学の課題、軍民融合政策による腐敗・非効率、宣伝中心の政治体制が、兵器の性能・信頼性に深刻な影響を及ぼすとしている。
「米国の軍事的優位が示されるたびに、対外的な圧力であると同時に、中共内部の不安定要因となり、技術格差をさらに拡大させる」と余氏は結論づけた。
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