米国ミサイル3分の1消耗 補充3年で台湾有事リスク 日本にも影響?

2026/05/29
更新: 2026/05/29

アメリカはイラン戦争でミサイル備蓄の約3分の1を消費。CSISは補充には最低3年と指摘する。供給逼迫は日本へのトマホーク配備や台湾海峡の抑止力に影響するのか、現状とリスクを検証する。

米国とイランの戦争は終結していない。だがアメリカはすでに弾薬備蓄の約3分の1を消耗したとされる。補充にはどの程度の期間を要するのか。それは日本や台湾の対中抑止戦略に影響するのか。

この戦争は台湾海峡情勢にも強い警鐘を鳴らす。背景にあるのは兵器備蓄の問題である。対イラン戦争開始以降、アメリカはイランに多数のトマホークを発射した。さらにイランの無人機・ミサイル攻撃に対抗するため、防空システムや迎撃ミサイルも大量に投入した。これらは効果を上げ米軍の損失を抑えた一方、弾薬消耗は極めて大規模に達した。

統計によれば、アメリカが発射したトマホークはすでに1千発を超えた。開戦前の備蓄が約3100発であったことから、これは約3分の1に相当する。さらに、防空用のパトリオットミサイルも約1200発を発射、そのほか精密誘導兵器や戦術ミサイルも1千発以上を使用した。これを受け、米軍は韓国に配備されていたTHAAD防空システムやパトリオットミサイルを中東へ移送し、実戦に投入した。現在までに、この戦争に投入した費用は少なくとも250億ドル(約3兆9千億円)に達しており、その大半は弾薬消費によるものである。

日本向けトマホーク配備への影響は

英紙フィナンシャル・タイムズは数日前、アメリカが当初2027年に日本へトマホークミサイル400発を売却する計画であったものの、自国の備蓄補充を優先する必要から、引き渡しが2029年までの延期があると報じた。この報道は大きな議論を呼んだ。

これに対し、小泉進次郎防衛大臣はこれを否定し、現時点で引き渡し時期に変更はなく、アメリカのミサイル備蓄は依然として十分であり、日本は予定通り新たなトマホークミサイルを受領すると強調した。

なぜ国際社会は、このミサイル引き渡し問題に注目するのか。それは、第一列島線の各国が台湾海峡および西太平洋における中国共産党(中共)の軍事的拡張を抑止できるかどうかに直結するためである。防空能力やミサイル抑止力が不足すれば、中共軍が台湾海峡で早期に行動を起こす可能性が高まる。

ミサイル補充に3年以上かかる理由

では、米軍の備蓄は現在どの程度の水準にあるのか。アメリカの有力シンクタンクであるCSIS(戦略国際問題研究所)は、5月27日に発表した報告で、今回の戦争によりアメリカは大量のミサイル資源を消耗しており、その補充には少なくとも3年を要すると指摘した。

同報告は、特に深刻な消耗を受けた兵器として、長距離攻撃用のトマホークミサイル、パトリオット迎撃ミサイル、そしてTHAAD迎撃ミサイルの3種を挙げている。これら主力ミサイルの補充には、いずれも少なくとも3年以上の期間が必要とされる。

例えば、トマホークミサイルは1千発以上を消費したが、今年の生産量は約207発にとどまる見込みである。今後増産したとしても、補充には最低でも3年を要する計算となる。また、海軍のスタンダード3およびスタンダード6ミサイルについても消費量自体は限定的であるが、それでも補充には約2年が必要。AGM-158や新型の精密打撃ミサイルPRSMについては、数か月から1年程度で補充可能と見られている。

さらに重要なのは、防衛産業の供給能力である。アメリカは自国の備蓄を補うだけでなく、同盟国からの需要にも応えなければならない。現在、パトリオットミサイルの海外受注は約1900発に達しているほか、ウクライナへの継続的な供給も必要である。需要が急増する一方、供給は逼迫している。スイスでは、発注済みのパトリオットミサイルの納入遅延を受け、契約の見直しを検討している。

精密兵器の生産は短期間で完了するものではない。高度な技術と複雑なサプライチェーンを要し、部品の調達にも時間がかかる。さらに戦争が発生すれば、状況は一層不確実になる。このため、今回の戦争が第一列島線の各国、すなわち日本や台湾の防空体制整備に影響を与えるのではないかとの懸念が広がっている。

CSISは結論として、アメリカは現時点でイラン戦争に対応するための弾薬は確保しているものの、減少しつつある備蓄は西太平洋地域に「脆弱な空白期間」を生じさせると指摘する。すなわち、現在から2029年、2030年にかけての期間は、第一列島線の各国にとって弾薬面での脆弱期となる。

中国の軍事行動は現実的か

では、中共はこの期間中に台湾へ軍事侵攻を行うのか。この点については慎重な見方も存在する。過度な悲観は必ずしも妥当ではないとする指摘である。

第一に、米軍は近年の軍事行動において高い作戦遂行能力と戦術運用能力を示しており、特に指導部への精密打撃能力は大きな抑止力として機能している。CSISの分析でも、中共は1979年の中越戦争以降、本格的な戦争経験を持たず、実戦能力に差がある。

第二に、中共軍における長年の腐敗や統治構造の問題により、装備の整備に比べ実際の運用能力が十分に伴っていないとの指摘がある。こうした構造的問題は、軍事行動への制約要因となり得る。

第三に、近年の軍高層部に対する粛清の影響により、指揮系統や統制能力に不安定さが生じていると指摘されている。軍内部の信頼関係の低下は、短期的な軍事行動の決断に影響を与え得る要素である。

さらに重要な点として、米軍のインド太平洋地域における実際の弾薬備蓄状況は外部から完全には把握されていない。元米国防総省関係者の発言によれば、沖縄やグアムには大規模な弾薬備蓄が存在し、通常、インド太平洋軍の装備が他地域へ転用されることはない。

以上を踏まえれば、今回の戦争により米軍が大量の弾薬を消費したことは事実であり、その補充には数年を要する見通しである。しかし同時に、米軍の実戦能力と同盟国との連携は依然として高い水準にあり、中共が直ちに軍事行動に踏み切る環境にあるとは断定できない。

今後数年間、中共の対台湾戦略は、軍事侵攻よりもむしろ、政治・情報・世論を通じた影響力行使、すなわち浸透工作や認知戦、選挙介入などを中心に展開る可能性が高いと見られる。台湾海峡を巡る緊張は、軍事のみならず複合的な形で推移していくことになる。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
唐浩
台湾の大手財経誌の研究員兼上級記者を経て、米国でテレビニュース番組プロデューサー、新聞社編集長などを歴任。現在は自身の動画番組「世界十字路口」「唐浩視界」で中国を含む国際時事を解説する。米政府系放送局ボイス・オブ・アメリカ(VOA)、台湾の政経最前線などにも評論家として出演。古詩や唐詩を主に扱う詩人でもあり、詩集「唐浩詩集」を出版した。旅行が好きで、日本の京都や奈良も訪れる。 新興プラットフォーム「乾淨世界(Ganjing World)」個人ページに多数動画掲載。