米国防総省(戦争省)は6月8日、最新の改訂版制限リストを公表し、中国共産党(中共)軍との関係が疑われる中国企業を相次いで追加した。中国を代表するテクノロジー・消費財ブランドであるBYD(比亜迪)や宇樹科技(Unitree)が直接名指しされた。
この措置は直接的な経済制裁には該当しないが、将来の投資制限、輸出管理、そして民間サプライチェーン全体の遮断への道を開くものとみられる。
2021年度国防授権法第1260H条に基づいて設置・更新されるこのリストには現在、国防総省が中共軍産エコシステムの一部またはその支援組織と見なす188の事業体が含まれる。今回の改訂で特に注目されるのは、従来の軍需大手に加え、アリババ(Alibaba)BYD(比亜迪)ロボットメーカーの宇樹科技といった著名な民間企業の追加だ。
米誌『ニューズウィーク』の分析報道によると、これら企業はいずれも国有ではなく、従来は国防部門との関連が認められていなかった。しかし、ワシントンは中共の軍事近代化、および民間企業が「軍民融合」戦略において果たしうる役割への懸念を強めている。
中共の軍民融合戦略は民間産業と軍需産業の垣根を曖昧にし、商業イノベーションを軍事能力に統合することを目指す。米当局者は、中共体制下では中国企業がいつでもデータや技術などの提供を政府から強制され、中共の軍事能力強化に利用される可能性があると主張する。
今回のリスト拡大は、ワシントンが人工知能チップ、半導体製造装置、量子コンピューティング、生命科学・AIの基盤ハードウェアにまで及ぶ先進技術へのアクセス遮断を強化する流れの中で行われた。
国防総省の軍関連企業リストへの掲載は制裁を自動的に発動するものではないが、強力な「コンプライアンス警告」となる。6月30日以降、国防総省はリスト掲載企業との直接契約が禁止され、来年以降は第三者を通じたサービス調達も禁じられる。米民間企業や多国籍企業がこれらの中国企業と取引を行う場合、大きなコンプライアンスリスクを負うことにもなる。
中共政府はただちに反応した。中共外交部報道官の林剣は記者会見で、ワシントンが中国企業を不当に標的にしていると非難し、米側の不当な圧力に対して必要な措置を講じると述べた。
アリババ、比亜迪、宇樹科技が指定された理由
今回の注目企業の中でも特に目立つのが、中国最大のプラットフォームテクノロジー・クラウドコンピューティング事業者であるアリババだ。国防総省はアリババを「中共国防産業基盤への軍民融合貢献者」と位置づけており、工業情報化部との業務・データ連携疑惑を根拠に挙げた。
グローバル展開を進める自動車メーカー、BYD(比亜迪)もリストに加えられた。中国自動車メーカーの米国市場シェアはほぼ皆無だが、トランプ大統領率いる共和党議員らは中国製電気自動車の米国市場完全排除を主張しており、予防的措置としての側面が際立つ。
もう一つの新規追加企業がロボットメーカーの宇樹科技だ。同社は今年の中共中央テレビ(CCTV)春節晩会でカンフーの動きを披露する人型ロボット「G1」を登場させ注目を集めた。コストパフォーマンスに優れた民生用ロボット技術が中共軍に広く転用されることへの懸念が米側にある。
薬明康徳、諾禾致源、中際旭創の指定が示す深層的意味
消費者向け著名ブランドとは対照的に、今回のリスト拡大はこれまで「軍関連ブラックリスト」の議論に登場することの少なかった企業にも照準を合わせた。
バイオテクノロジー審査の全工程拡大という観点では、時価総額430億ドルの薬明康徳(WuXi AppTec)と遺伝子シーケンシング大手の諾禾致源(Novogene)の指定が注目される。昨年12月にトランプ大統領が署名した生物安全保障法(BIOSECURE Act)で中国バイオテクノロジー企業が名指しされたのに続き、国防総省が正式に動いた形だ。米国の対中封鎖は医薬品受託製造から、研究サービスや遺伝子データの源泉にまで全面的に拡大した。
AIコンピューティングハードウェアの精密な切り離しという点では、世界最大の光モジュール(光トランシーバ)メーカーである中際旭創(Zhongji Innolight)の指定が市場最大のブラックスワンと受け止められた。中際旭創はエヌビディア(Nvidia)など米国AI大手の高速ハードウェア中核サプライヤーだ。米側がAIデータセンターのサプライチェーンから中国サプライヤーを根本的なハードウェア段階で排除しようとする意図が読み取れる。
指定を受け、これら企業は6月9日に相次いで声明を発表した。薬明康徳は香港証券取引所への公告で国防総省の認定は「明らかに誤り」と強調し、軍との関係は一切なく、この誤った認定に直ちに異議を申し立てると表明した。諾禾致源も同様に、独立した民間経営企業であり認定の根拠は事実と全く異なるとして、事業は正常に継続しており米側と協議を進めていると説明した。
薬明康徳など各社の株価は報道後、4〜5%下落した。ただ、アナリストは真の打撃は長期的にあると指摘する。野村証券は、世界の多国籍製薬企業や大手クラウドサービス事業者(CSP)に多大な「評判・コンプライアンスリスク」をもたらし、欧米企業がスイス、スウェーデン、あるいは米国内の競合他社への発注切り替えを迫られると分析した。
米議会、さらなる強硬措置を要求
米下院の中共問題特別委員会は国防総省の更新を強く歓迎し、リスト掲載企業に対するより強硬な措置を促した。同委員会はこれらの認定を、米企業・投資家への「最後の警告」と明確に位置づけた。
「リストに掲載された企業のうち、米国の証券取引所に上場しているものは即時上場廃止とされるべきであり、その製品も米国が依存するサプライチェーンから排除されるべきだ」と委員会は声明で訴え、「米国企業はわが国の安全保障を脅かすこれらの企業との取引を停止しなければならない。さもなければ、中共の軍事台頭を加速させる共犯者となる」と警告した。
ワシントンによる北京への包囲網が関税貿易戦争から、技術・投資・民生ハードウェア・生命科学・安全保障領域への「全方位精密防衛」へと全面的に拡大するなか、今回のリスト拡大は米中技術冷戦をより深く、より細分化された基盤レベルの争いへと押し進めるものとなっている。
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