税優遇120件点検 廃止「1件」の現実 日本版DOGE 看板政策に問われる実行力

2026/07/09
更新: 2026/07/09

政策効果の乏しい減税や補助金を洗い直す「日本版DOGE」で、各府省庁の自主点検結果が7月上旬に出そろった。日本経済新聞によると13府省庁が公表した約120件の優遇制度のうち、廃止の方向を明示したのはわずか1件だったという。看板政策として鳴り物入りで始まった歳出改革の初手は、既得権益化した制度を「やめる」ことの困難さを改めて浮き彫りにした。

時事通信によると、担当閣僚の片山さつき財務相は7日の閣議後会見で、「現時点では満足いくものではない」と述べ、各省庁の対応に不満を示した。査定する側の閣僚自身が結果を否定できないほど、各省の「防衛」は徹底していたことになる。

日本版DOGEは、トランプ米政権下で実業家イーロン・マスク氏が率いた政府効率化省(DOGE)を念頭に置いた取り組みだ。

自民党と日本維新の会の連立政権合意書(2025年10月20日)は「租税特別措置及び高額補助金について総点検を行い、政策効果の低いものは廃止する」と明記し、これを受けて同年11月25日、内閣官房の行政改革・効率化推進事務局に租税特別措置・補助金見直し担当室が設置された。

今回の点検の特徴は、国民の声を起点に据えた点にある。政府は2026年1〜2月に国民から集めた3.7万件の意見をもとに、各省庁が6月末までに所管する政策減税の租税特別措置(租特)や補助金を自主的に点検する段取りを組んだ。

その結果が「廃止1件」だった。唯一の例は、経済産業省所管の企業の事業再編を促す特例措置で、活用実績がないことから同省が「制度の終了が相当」と判断したものだ。使われていない制度の廃止という、最も抵抗の少ない一件にとどまった格好だ。

こども家庭庁所管の贈与税優遇は利用件数の低迷を踏まえつつも「延長の是非を慎重に検討する」との表現にとどめ、他の大半の制度も「意義」を掲げて維持・延長の方向を示した。

なぜここまで踏み込めなかったのか。構造的な要因として指摘されるのが、点検主体の問題である。今回の点検を担ったのは外部の第三者ではなく、制度を所管する省庁自身だった。自らが育てた制度を自ら裁く仕組みでは、大胆な削減判断は生まれにくい。

この点で、外部評価者による公開討論を軸とした2009年の「事業仕分け」とは対照的だ。日本版DOGEは劇場型の手法を排し、EBPM(証拠に基づく政策立案)による定量的検証を掲げたが、その検証の主導権を各省に委ねたことが、初戦の足かせとなった。もっとも、点検対象の裾野は広い。2025年度当初予算額1億円以上で裁量的経費に分類される補助金・交付金(一般会計)は計444件、総額8.0兆円に上り、見直しの潜在的な余地自体は小さくない。

焦点は次の工程に移る。8月末には各府省庁が予算の概算要求と税制改正要望を提出する。自主点検で「見直す」とされた項目が要求段階で実際に縮小されるのか、そして年末の税制改正大綱で個別制度の存廃がどう決着するのか。

片山氏による「政治主導」は官僚機構の論理を突破できるのか「廃止1件」という現時点の成果を、改革の停滞と捉えるか、あるいは攻防の始まりと捉えるか。その真価は、この半年間で明らかになるだろう。