中国の地方財政難 公務員や教師に波及 防疫要員の手当返還要求も

2026/08/11
更新: 2026/08/11

中共の地方財政難が深刻化し、その影響が公務員や教師など体制内の職員にまで及んでいる。最近、一部地域で、コロナ封鎖期間中に防疫要員へ支給した奨励金や手当の返還を求める動きが始まった。

封鎖期間中、中共は白い防護服を着た「大白(ダーバイ)」と呼ばれる防疫要員や医療従事者を感染対策の象徴として大々的に宣伝した。ところが現在は、一部地域で当時支給した防疫関連の奨励金まで返還を求めている。

各地の財政部門職員、公務員、教師、国有企業関係者が記者に明らかにしたところ、一部地域では給与や業績手当の停止・削減に加え、過去数年間に支給した各種手当や奨励金を調べ、職員に返還を求めている。

地方政府の財源確保策は、現在の支出削減だけでなく、過去に支給した資金の回収にまで及んでいる。

江蘇省の財政局職員、胡さんは、以前は財政難が一部の県や郷に集中していたが、今では一部地域だけの問題ではなくなったと話す。地方政府では、給与の支払いと行政の最低限の運営をどう維持するかが最優先になっている。

胡さんは「地方財政はもう底をついている。土地使用権の売却収入はほぼなくなった一方、削減しにくい固定支出は残っている。縁故で採用された公務員も多く、人員整理できるものか。多くの機関は省政府に『救援』を求めて給与を払うしかない」と語った。

財政難で過去の支給分まで回収 防疫手当も対象

関係者によると、一部地域では最近、行政機関や公的機関が過去3~5年間に支給した業績手当、生活手当、福利厚生費を改めて審査している。

今後の支給を停止するだけでなく、過去にさかのぼって返還を求めるケースもある。対象には年末の業績手当、生活補助のほか、コロナ禍で最前線に立った防疫要員に支給した臨時勤務手当も含まれる。

武漢市でボランティアをしていた江さんは「封鎖が終わって何年もたつのに、当時、最前線の職員への補償として支給した奨励金まで取り戻そうとしている。あまりにもひどい。この国はどうしてここまで貧しくなったのか。先日には、当局がアフリカに資金援助したニュースを偶然見たばかりだ」と話した。

貴州省桐梓県の公務員、黄さんは「先週の会議で、上司から口頭で通知された。正式な公文書は出されず、10日以内に一昨年支給された業績手当を指定口座へ返金するよう求められた。写真撮影や録音も禁止された。そのお金はもう使ってしまったのに。突然、財政の穴埋めに数万元を出せと言われ、グループチャットでは皆がその人を罵倒している」と語った。

中共財政部が公表した2026年上半期の財政統計でも、地方政府の主要な収入源は落ち込みが続いている。

上半期の地方政府の基金収入は前年同期から大幅に減少した。地方政府が長年依存してきた国有土地使用権の売却収入も2桁減が続いた。

地方政府、過去の支給分も回収 公務員や教師も対象

一部地域では、返還請求の対象が行政機関や公的機関だけでなく、学校や一部の国有企業にも広がっている。

広東省河源市の中学校で事務係員、孫さんは、かつて体制内で働く大きな理由の一つは収入の安定だったが、現在は減給、業績手当の停止、すでに支給された奨励金や手当の返還請求まで相次いでいると話す。

孫さんの学校では昨年以降、1回の減給と2回の業績手当停止があった。

孫さんは「もともと給与は高くないのに、さらに10%減らされた。業績手当も実質的には給与の一部なのに、それさえカットされた。安定した待遇は数年しか続かなかった。今では学校にまで手が伸びてきた」と語った。

中国の医療従事者、防疫要員、公務員、教師はこれまで、比較的収入が安定した層とみなされてきた。しかし現在、減給、業績手当の停止、過去に支給した奨励金の返還請求が各地で相次いでいる。

海外の研究者は、体制内の職員でさえ基本的な収入の安定を維持できず、過年度分までさかのぼって返還を迫られているとして、地方財政危機が中共の地方統治を支えてきた利益基盤を揺るがし始めたと分析する。

体制内の職員が政権への信頼を失えば、職務への消極姿勢や責任の押し付け合い、働く意欲を失って最低限の仕事しかしない「寝そべり」が広がる恐れがある。

研究者は、地方の官僚機構は安定した待遇や組織内の利害関係によって支えられてきたと指摘する。こうした信頼関係が崩れれば、行政機構の機能低下につながり、中共政権の安定にも影響しかねないと分析した。

葉子龍