中国 当局が嫌う問題を長年取材

人権問題を追った著名な中国人記者に実刑判決

2026/09/04
更新: 2026/09/04

中国で、天安門事件や人権問題など、当局が神経をとがらせるテーマを長年追ってきた杜斌(ドゥ・ビン)氏に、懲役1年6カ月の実刑判決が言い渡された。

杜氏は、中国の著名なドキュメンタリー制作者、作家、写真記者として知られる。2025年10月15日、北京の警察に拘束された。翌日には日本へ向かう予定だった。

北京の裁判所は8月28日、「騒ぎを起こして社会秩序を乱した」とする罪で、杜氏に懲役1年6カ月を言い渡した。証拠とされたのは、政治や社会問題に関するSNS上の転載やコメント約40件。しかし判決文や起訴状は公開されず、家族にも「機密事件」として詳しい説明はなく、どの投稿の何が犯罪に当たったのかは明らかにされていない。

杜氏がカメラを向けてきたのは、中国で声を上げても救済されない人々だ。地方政府や裁判所に訴えを退けられ、北京まで救済を求めに来た人々の暮らしや抗議を撮影してきた。

2013年には、女性への拷問や虐待で悪名高い遼寧省の収容施設「馬三家」の実態を告発するドキュメンタリーを制作し、天安門事件を扱った本も出版している。

2015年には、独立中文ペンクラブの「林昭記念賞」を受賞。同賞は、自由を奪われるなど厳しい状況に置かれながら創作を続け、優れた活動をした中国語作家に贈られる。

杜氏は以前にも当局に拘束されている。2020年12月には、今回と同じ「騒ぎを起こして社会秩序を乱した」疑いで北京警察に1カ月余り拘束され、その後釈放された。

今回の拘束中には母親が危篤となった。杜氏は最後に会いたいと求めたが認められず、母親はその後亡くなった。

今回、本当に問われたのは約40件の投稿だけだったのか。それとも、長年にわたり当局が見せたくない現実を撮り、伝えてきたことも背景にあったのか。

杜氏の収監で失われるのは、一人の記者の自由だけではない。中国で声を上げられない人々の姿を伝える「目」が、また一つ閉ざされた。

何を撮り、何を書けば罪になるのか。その境界すら示されない今回の判決は、中国で取材を続ける記者たちへの重い警告となる。

李凌
中国出身で、日本に帰化したエポックタイムズ記者。中国関連報道を担当。大学で経済学を専攻し、中国社会・経済・人権問題を中心に取材・執筆を行う。真実と伝統を大切に、中国の真実の姿を、ありのままに、わかりやすく伝えます!